Un gato lo vio −猫は見た

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ベロニカとの記憶

何事にも煩わされることなく老後を過ごしたいと思っているトニー。ある日、大学時代に付き合っていたベロニカの母から遺言状が届き、そこにはトニーの親友だったエイドリアンの日記と現金500ポンドを遺すと記されていました。ところが、その日記は娘が焼却処分。かつての恋人にその理由を追及するうち、トニーは封印していた過去の記憶と向き合うことになってしまう。

人は自分の都合に合わせて記憶をねつ造する。どこかで聞いた話だなと思っていたら、原作はジュリアン・バーンズの「終わりの感覚」でした。精緻な工芸品のような構成に舌を巻き、私自身の苦い記憶を呼び覚まされたことが強く印象に残っています。

映画では若干設定が変えられ、過去のおぞましい記憶を掘り返したトニーが他人の気持ちを斟酌できるようになるという結末を迎えています。その重要な役割を果たしているのはシングルマザーになることを決意している娘のスージー。

父の告白を聞きながら出産の時を迎えてしまう彼女は、不安を鎮めるために「握って」と言ってトニーに手を差し出します。しかし、差し出された手は心が千々に乱れて混乱する父をつなぎ止めるものだった。私の目にはそう映りました。娘の手を握らなかったら、おそらくトニーは現実世界に留まれなかったはず。彼女はこの映画の影のMVPでした。

エイドリアンが自ら命を絶つ理由、その原因となったはずの母娘の葛藤を深掘りするという展開もありだったと思いますが、そちらは小説でどうぞ。

 

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早春の角田山

3月18日、お天気に誘われて今年初の角田山へ。

五箇峠から樋曾山へ向かおうと林道を進んだところ、ごらんのような倒木で駐車場へたどり着けず。予定を変更して桜尾根へ。

こちらは雪割草が顔を出し始めていましたが、日が当たらずうつむいたまま。来週あたりが見頃かもしれません。

登り切ったところでそのまま灯台コースへ向かい下山。こちらは灯台が見える地点まで登山道にも所々雪が残り、少々滑りやすかった。

日当たりの良い斜面ではすでにカタクリとイチゲが気持ちよさそうに風に揺れています。

10時を回った辺りで途切れなく登山者が現れ始め、あの様子では昼時の山頂は大賑わいだったことでしょう。

帰りがけに宮前コースの神社で手を合わせ、湿地の植物に目をこらすも、種類が判別できず。昨年夏、巨大に成長した葉を見て水芭蕉じゃなかろうかと密かに楽しみにしていたんだけれど、どうも違うみたい。また来週確認に行かなくちゃ。

 

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ピクニック

パリの裕福な商人一家が涼を求めて郊外の川岸でピクニックを楽しんでいたところ、地元の女たらしが母娘に目を付け、まんまと誘惑に成功。互いにつかの間のアバンチュールを楽しむという、1時間弱の小品。

降り注ぐ陽光、吹き渡る風、きらめく川面、そして人生を楽しむ人々。ありふれた景色がとても魅力あるものに感じられるこの感覚は、ある種の仮想現実体験と呼びたくなります。以前から、優れた画家の目に世界はどのように映っているのだろうと想像してきましたが、この映画を通して、彼らの心に映る世界を自分の目で確認しているような心持ちになりました。

観客が体験するのは、もちろん印象派の絵描きたちの感覚です。監督ジャン・ルノワールはピエール=オーギュスト・ルノワールの息子。父を尊敬し、大きな影響を受けたのは間違いないでしょう。随所に印象派の作品を思わせる構図が見受けられ、モノクロ映画にもかかわらず(いやモノクロだからこそかな)、あふれる陽光が眩しく感じられました。


そうか、彼らの眼にはこんな世界が広がっていたんだなあ。

終盤に用意される天候の急変場面がもっとも印象に残りました。日射しいっぱいの青空が一天にわかにかき曇り、沸き立つ黒雲が風に流される。やがて豪雨が川に降り注ぐシーンは、まさに動く印象派絵画といった趣でした。

この映画のおかげで、新たな視点で絵画鑑賞を楽しめそう。

 

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