Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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女と男のいる舗道

女優になることを夢見たナナは夫と別れパリへ。しかし現実は甘くなく、レコード店の給与だけでは暮らし向きが厳しくなるばかり。必然のように街で男を拾うようになり、やがて売春組織に売られることに。

夢に焦がれ、夫と子供を捨てることがそれほどの罪なのでしょうか? 徐々に表情を失っていくナナを見ていると、ちょっと厳しすぎるんじゃないのと泣きたくなってきますが、この世の真実は無慈悲に決まっている、ゴダール監督はそう断じているようです。

ゾラの小説に登場する同名の高級娼婦ナナも転落の人生が待っていましたが、一度は上流社会の男たちを手玉に取り、パリの有名人にのし上がっています。しかし、こちらのナナには楽しいことがひとつもなかった。突き放すようなエンディングに呆気にとられ、胸がふさがりました。

 

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東響 第105回新潟定期演奏会

今回のお目当てはプロコフィエフ2曲。交響曲とピアノ協奏曲のそれぞれ第1番です。
前者は活気に満ちた雰囲気と第3楽章の可愛らしさが、後者は軽やかさとピアノの技巧を楽しめる点で共にお気に入り。楽しみにしていました。

ガヴリリュクさん(発音難しいなあ)のピアノは初めて聞きました。ダイナミックに鍵盤に向かっていましたが、目から入る印象とは異なる透明感の高い音。聴かせどころをしっかり押さえていて、特にアンコールの「キエフの大門」では感情を揺さぶられ、ラストで目頭が熱くなるのを抑えられませんでした。
後半に演奏されたラヴェルのオーケストラ版より曲の広がりを感じさせる演奏だったように思います。

最後に飯森さんから大雪のお見舞いと、次回も来場お願いしますねというリクエストをいただきました。
いやあ、気持ちの良い年の初めとなりました。インフルエンザもらってしまったけど。

 

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セザンヌと過ごした時間

幼い身に受けた親切は長じてからも心の拠り所となり、生涯を通じて感謝の念を感じ続けるものです。たとえ、その相手に怒りを覚えることになろうとも。
 

移民の子としていじめられていたゾラは、銀行家の息子セザンヌに助けられ、以後、彼らは親友として少年・青年時代を過ごすことになります。
やがてゾラはパリで作家として成功、セザンヌを呼び寄せ、ともに偉大な芸術を目指すことに。しかしゾラの評価が高まる一方、セザンヌはいつまでも芽が出なかった。

 

極めて自己中心的で粗暴な人格へと変貌したセザンヌ。評価されないことへの苛立ち、成功した友への嫉妬心と折り合いを付けるためには、人が敬遠するほどの破滅的な生活に逃げるしかなかったのかもしれません。
 

そんな友人の心の内を理解し、惜しみない援助の手をさしのべていたゾラも、自著「制作」に対するセザンヌの批判、妻に対する侮蔑に愛想を尽かし、とうとう袂を分かつことに。

その後、2人の間に和解はありませんでしたが、地元に戻ったゾラ一家を離れた場所から見つめるセザンヌの目を見れば、かつての友情を取り戻したいという切ない思いが感じられ、一方、セザンヌに無関心を装うゾラのポーカーフェイスの裏にも、かつて助けてもらった恩義や無邪気な思い出が潜んでいるのは明らか。
 

自分の思いを素直に表現できないほどの地位を獲得したり、歳を取るのは難儀なことです。ただの一声でわだかまりなど消えてしまうと分かっているはずなのに…
 

喜びと苦しみに満ちた友情をそれぞれの作品に昇華させた2人はやはりたいした芸術家です。

 

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