Un gato lo vio −猫は見た

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In the Month of the Midnight Sun セシリア・エクバック(Cecilia Ekbäck)

スウェーデン内陸部ブラッカセン山を仰ぐ小さな村。教会で3人が殺害される事件が起こり、犯人とおぼしきラップ族の老人が逮捕された。先住民の蜂起を恐れた法務相は養子である地質学者マグヌスに現地調査を命じ、同時に、頭痛の種である娘ロヴィサを同行させて厄介払いを目論む。

到着した村は謎めいた雰囲気に包まれていた。子どもの姿が見あたらず、住民はマグヌスの質問に固く口を閉ざす。そして教会脇ではラップ族の老婆が一人きりでキャンプ生活を送り、村はずれには彼らが作った迷路。いったいこの村はどんな秘密を抱えているのか…

基本は事件の真相を探るミステリー。調査の進展と共に、村で起きた過去の忌まわしい事件とラップ族の集団で起きた事件が交錯し合い、悲劇の連鎖が続くことになります。

謎解きの楽しみとは別に、まず、白夜の北極圏という日本人の私には完全に異世界な舞台そのものに強く惹きつけられました。そしてあの世から語りかけるラップ族シャーマンがもたらす呪術的な雰囲気。「ツイン・ピークス」ほどあざとくはないけれど、読み手の興味を逸らさない設定にまんまとはまってしまったのでした。

彼の地で図らずも出自の秘密を知ってしまったマグヌスと、生き延びるために文明社会から身を隠すことになるロヴィサのその後が気になります。
謎解きはなくても構わないので、2人のその後を、そして村のその後を書いてほしいと思うのでした。

 

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レオナール・フジタとモデルたち

4人の妻(!)と愛人を描いた作品を中心とした展覧会です。年代順に関わりのあった女性たちの姿が並び、藤田の人生を辿ると共に、技法の変遷も確認できる内容でした。

最初の妻を描いた作品は当時の人気作家の影響を様々に受けているようで、模索する様子が興味深かった。
いちばん惹かれたのは2度目の妻ユキと暮らしていた頃の作品群でした。模索の末に進む道を見つけたとでもいうような喜びと若い情熱が眩しいです。

藤田の特徴は乳白色の肌と言われますが、それ以外にも瞳が特徴的だと感じていました。今回展示されていた中では、自画像と後期の色彩豊かな一部作品を除いて基本的に同じ描き方に見えました。それだけを見ているとガラス玉のようで生気を感じないのですが、それを取り囲む瞼、陰翳などが加わると、そこが肖像の核心であるかのように感じるから不思議です。

最後の妻のために自ら手作りしたという飾り箱、皿、ワインカップなども展示されていて、これがなかなか良かった。愛情が感じられる素朴な品々ですが、さすがに画伯ならではの絵付け。こんなの欲しい、と思ったらショップにレプリカの小皿5枚組が並んでいるじゃありませんか。しかも箱入りで。うーん、どうしよう。開期末まで悩みそうだ……

 

新潟県立万代島美術館で9月3日まで

 

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Haende  ウォルター・シェルズ写真集

そうか、こんな見せ方もあったか、と思わず手を叩いてしまった写真集。ポートレートといえば、顔、バストアップ、あるいは全身を捉えた写真が一般的だと思いますが、シェルズさんはモデルに両掌を顔の両側に掲げてもらった。

リンカーンが「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言ったのは、その人の人生が自ずと顔に表れるということ(?)。そして、同じことが手にもあてはまるとこの写真集は示しています。

モデルの大半はドイツ人(メルケルさん、若い!)で、解説もドイツ語のみ。日本人の私には馴染みのない人もいるけれど、さまざまな表情の顔と手を見ながら、その人の来し方を想像するのは楽しいものです。

翻って自分の手を見つめると、苦労していないことがよく分かってしまい、これにはなんだかがっかりするのでした。自分の手にも責任を持たなくちゃ。

この写真集はドイツ在住の友人が送ってくれたものです。彼女はこの写真集を出版したシェルズさんの元で働いているのだとか。写真好きの私にはうらやましすぎる職場です。いつもありがとう、Aika。

 

 

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「隅田川馬石」落語会  古八寄席

お気に入りの噺家の一人である馬石師匠の独演会に寄せてもらいました。しばらく生で落語を聞く機会がなく、飢餓状態に陥っていた私には恵みの雨。蕎麦屋の二階という場所も良かった。

演目は「名人長二」と「厩火事」。前者は長いストーリーの1幕目をじっくりと、後者はそそっかしいおかみさんの勘違いぶりを楽しませてもらいました。菊之丞のあだっぽいおかみさんが最高だと思っていましたが、馬石の可愛らしいおかみさんも好いですなあ。

圓朝作「名人長二」は非常に長い話で、寄席で聞くことはまずありません。最近では馬石の師匠の雲助が連続でかけたことがあるだけとか。私も志ん朝のCDで一部を聞いただけで、実際には初めて耳にする話でした。

馬石師匠はこれを年1回の6回連続で演る予定だとか。つまり、来年以降、5年はこの落語会にお邪魔しないと全貌が分からないということ。うまい演目を選びましたねえ。先が気になって、今回切りというわけにはいかないじゃないですか。

あっ、それより、自分が1年間話の筋を覚えていられるかどうかが問題だなあ。

 

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