Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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きもの 幸田文

その昔、呉服販売にも携わったことがあり、なんとなく着物のことは知っているつもりになっていました。でも、着心地については考えたこともなく、肌触りを重視する主人公るつ子の着物選びに目から鱗が何枚も落ちることとなりました。
なるほど、肌に触れる感触は重要ですよね。実際に身にまとったことがない故の盲点でした。

大正末期の東京下町で両親、祖母、2人の姉と暮らするつ子の物語。着物への接し方を通して彼女の成長を見届けることになるのですが、実に清々しい読後感です。
美しい心の持ちようを記録したような小説で、読んでいると、自然に背筋が伸び心が澄み渡るのを感じます。

るつ子の世界観を正しい方向に導くのは、小利口でさもしい根性を嫌う祖母。決して高圧的ではなく、時宜にかなった適切な教えは、読み手の私の心にも素直に響くのでした。
なんだか、るつ子と机を並べながら世の中のことを学んでいく気分です。ああ、覚悟して服を着たことなんかなかったなあ。

 

この小説、中身もさることながら、装丁も素晴らしかった。まさに着物をまとっているようで、手に取る楽しさも格別でした。文庫やデジタル本では味わうことのできない贅沢です。これが100円だなんてねえ。

 

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ジャニス 〈リトル・ ガール・ブルー〉

ジャニス・ジョプリンの生涯を当時の映像、関係者の証言、そして両親に宛てた本人の手紙でたどるドキュメント。
破天荒な行動を取り続けたのは何故なのか、頂点を極めようとする情熱はどこから生まれたのか。

既に見た人から聞いた通り、本人の手紙が効いていました。ジャニスは日々の充実ぶり、成功の喜びを得意そうに書き連ねますが、そこには親の関心を惹きつけたい必死さが漂っていました。

「娘の希望を叶え、やりたいことはなんでもやらせた」と両親は語っていたようです。でも、もしかしたら、それはただの放置だったのかもしれない。ジャニスの手紙に対する返信を1通も紹介しないことがそれを暗示しているように感じます。

無鉄砲な行動でさえ両親の注意を惹きつけられなかった。だから今度は誰もが認める頂点に立った。
「ねえ、褒めてちょうだい、私頑張ったでしょう」
そんな声が聞こえるような気がして、スクリーンを正視することができませんでした。

存命だったら、どれほど素晴らしい歌い手になっていただろう。早過ぎる死が今さらながら惜しまれてなりません。

 

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NHK交響楽団 新潟公演(1月7日)

年の初めにふさわしく、明るく活気に満ちたプログラム。「フィガロの結婚」序曲は、これから1年、楽しいことが待っていますよ、と告げているようでしたし、「ピアノ協奏曲第9番」では、ソロ部分で小曽根さんがまさかのジャジーなアレンジ。体が揺れ始めてしまいました。これを聴いたらモーツァルトも喜びそうです。

「新世界より」では弦楽器に圧倒されました。バイオリンの華やかな旋律とそれを支える中低音の厚みが圧倒的。聞き惚れてしまいました。
聴かせどころたっぷりのホルンもかっこええ。一緒に出かけたトランペット吹きは「ホルンに変えようかな」とつぶやいておりました。

アンコールの「ピツィカート・ポルカ」は指揮の広上さん曰く「お年玉」とのこと。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートではおなじみの曲。新年らしく楽しかった。

 

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野生のなまはげ

テレビニュースなどで目にする「なまはげ」は子どもの頃から飼い慣らされたもので、人に慣れているため秋田弁も話すそうです。しかし、秋田県「小田」半島で捕獲された野生のなまはげは「悪い子いねが!」という鳴き声しか発することができず、悪い子を食べてしまう可能性があるとのこと。
いやあ、知らないとは恐ろしいものです。いい子にしなくちゃ。

逃走した野生のなまはげを飼うことになった守君。でも都会暮らしは無理。生まれ故郷に帰してあげようと秋田を目指しますが、高値で珍しいペットを売りさばこうとする「Pet Shop!」の奴等に付け狙われることに。
そんな彼らを武闘派の東北南東大学山田教授が援護。果たして2人(?)は無事故郷に帰れるのか。

「野生のなまはげ」ということばの響きに心を鷲づかみにされてしまった。いろんな小説や映画を見てきたけれど、タイトルの衝撃度は個人的ベストクラス。これ、見ないわけにいかないでしょう。
 

演技がどうの、脚本がこうの言ってはいけません。野生のなまはげがいたら、というアイディアが全て。無心に映画に浸って、夜はなまはげに追いかけられる夢を見ようではありませんか。

同時上映「おっさん☆スケボー」も衝撃的だった。5分程の超短編ながら、緊迫感と脱力感のミックスがお見事。今後の作品が気になる監督です。

 

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