ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ
優れた小説には優れた才能が必要なことはもちろんですが、優秀な編集者の存在も不可欠。
実際にどのような作業を行っているのか興味を引かれて映画館へ。
ところが、トマス・ウルフは人の痛みが分からない半人前として描かれていました。才能を信じて全てをなげうった妻のささやかな願いを退け、不遇を託ったフィッツジェラルドに容赦のない批判(いやがらせ)を浴びせる。そして、自分を世に送り出してくれたマックス・パーキンズにさえ手柄を横取りしようとしていると不信感を抱くのです。
他人の気持ちを忖度できない人が優れた小説を書けるということに驚いてしまいました。共感する能力に欠けながら登場人物の心理を描写できるものなのか? 普通は無理ですよね。天才(原題)故の技なのでしょう。優れた作品を世に送り出してくれれば作家の素顔など気に留めない質ですが、こればかりは頭の中に「?」マークが点滅を続けるのでした。
取り上げるエピソードをもう少し絞り込んで深掘りしてくれたら、もっと印象に残ったのかなとも思います。ウルフがマックスに不信感を覚える理由が映像からはよく分からないし、決定的な対立もない。ウルフの創作の苦しみすら全く描かれず、やんちゃな悪ガキに手を焼いていたみなさん大変でしたね、という感じで終わってしまいました。主役クラスの3人の俳優が良い仕事をしていただけに少々残念。
「グレート・ギャツビイ」のフィッツジェラルドはナイーブな、そして几帳面な人物に描かれていました。金銭感覚に乏しい浮き世離れした人だと思っていたけど、映画の中では常識人。なるほどねえ。
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