父ありき
とある事故をきっかけに、離れて暮らすことになった父と子。その情愛を静かな明るさで描いた戦時中の作品です。
笠智衆演じる堀川は、臨終のラストシーンで辞世の句のようにこう言います。(この映画を見ていない人、ごめんなさい)。「できるだけのことはやった。わしは幸せだ。ああ、いい気持ちだ」
そして往生。
この世に思い残すことはない、晴れ晴れとした死に様はうらやましいばかり。縁談がまとまったばかりの息子とその嫁、長年の友人、そして教え子らに看取られて逝くなんて。しかも、患い付いてすぐですからね。
教え子が修学旅行中に事故で亡くなり、責任を取って辞めた後は、離れて暮らす息子に会うことが唯一の楽しみ。若い人は穏やかに続く淡々とした日々に物足りなさを感じるかもしれません。でも歳を重ねてくるとそのありがたさをしみじみ感じるようになるし、堀川のような最期が本当にうらやましく感じるものなのです。
いい気持ちだ、と言って最期を迎えたいものです。
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