Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
<< October 2016 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

悪徳の栄え

ドイツ軍占領下のパリで対照的な生き方を選んだ2人の姉妹。姉、ジュリエットはナチス高官らの愛人としてしたたかに戦時を生き抜こうとし、妹、ジュスティーヌはレジスタンスの道を選びながらも連行され、ドイツ高官の「館」で娼婦として仕えることに。連合軍による解放を迎えたそのとき、姉妹の運命は。

権力を手にしようとする人間の浅はかさ、手にした力を行使せずにはいられな愚かさが見る者の神経を刺激します。欧州戦線の実写フィルムを挿入したモノクロ画面は、コントラストの美しさと共に、一種異様な迫力を備えていました。

撮影時19才だったドヌーブの瑞々しい美しさには思わず息をのんでしまいますが、汚れ役を演じたアニー・ジラルドの演技にも引き込まれました。

彼女の顔には、目をつぶりたくなるような環境下で、誇りを捨ててしぶとく生き抜く覚悟が見て取れます。同時に、意地悪い運命の前に屈してしまう予感におびえる気持ちもにじんでいます。
アラン・ドロンと共演した「若者のすべて」でも同じような役どころを演じていましたが、この映画では絶望感がいっそう深く表れていました。

そして、ラストシーン。悲惨ながら、美しく印象的だった。

 

JUGEMテーマ:映画

映画 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

長屋紳士録

戦後間もない東京のとある長屋。そこで暮らす人々の日常を取り上げた小津監督お得意のホームドラマです。

笠智衆演じる田代が迷子の幸平を連れ帰ったものの、自分で面倒を見る気などこれっぽちもなし。たらい回しにしたあげく、後家のタネに貧乏くじを引かせることになりますが、彼女もその日暮らしで精一杯。

厄介払いしたいタネでしたが、引取先を探したりしながら面倒を見ているうちに情が移り、養子にもらう決心。なけなしのお金で服を揃え、写真館で記念撮影。さあ、これから一緒に暮らそうと決心したところで、まさかの父親登場。さて、幸平君は父とタネのどちらを選ぶのか。

つかの間の喜びと落胆。タネさんは可哀想ですが、映画そのものは楽しい仕上がりになっています。
中でも、田代のお気楽ぶりがすごかった。宴会芸を請われ、箸で茶碗を叩きながら「のぞきからくりの唄」をうなる場面は、歌詞が聞き取れなくても笑いが込み上げてくるのでした。
(そういえば、子どもの頃、お祭りの出し物として「のぞきからくり」を見たことがあったなあ)。

 

JUGEMテーマ:映画

映画 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

ドラゴンタトゥーの女

ハリウッド版はオリジナル版の忠実なリメイクでした。ストーリー展開も人物造形も変わらず。
ただ、オリジナル版に登場する風景、家屋、インテリアなどが暖かみを感じさせるものなのに、ハリウッド版は、いかにも他国人が北欧を想像したときのような、薄暗い照明と超ミニマルなデザインを多用していました。役者も、いかにもクールそうです。

ドラゴンタトゥーの女ことリスベットについては、ハリウッド版の方が雰囲気出ていましたね。世間に受け入れられない彼女の痛々しさが良く伝わってきます。オリジナルは健康的すぎた。ただ、オリジナル版にはない最後のエピソードは甘ったるすぎましたね。オリジナルの方が毅然としていて良かった。

原作はハリエット失踪の謎解きとヴェンネストロム追求を通してスウェーデン社会が抱える闇を描き出そうとしていましたが、映画の主題はどちらのバージョンも共に謎解き。娯楽作品であればそれで正解だと思いますが、原作を知るものにはちと物足りないのであります。

 

JUGEMテーマ:映画

映画 | permalink | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |