Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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陰翳礼讃

江戸期までに作られた美術品・工芸品をろうそくの灯りだけで鑑賞する、という企画を、以前、日曜美術館で見たことがありました。
ほのかな光に浮かび上がる金銀の装飾は、隅々まで照らす明るい照明の下とは全く異なる姿を見せ、幽玄な印象を抱いたことを覚えています。

その効果を谷崎潤一郎は昭和初期に示していました。さすがですねえ。
手に取った文庫には、他に「恋愛及び色情」「懶惰の説」「旅のいろいろ」などの随筆も収録され、うん、うんと頷きながら楽しむことができました。

というのも、これ、基本的には「今の文明は味気なさすぎる!」と嘆く老人(とはいえ、この時40代後半)の繰り言だからなんですね。もちろん、目の付け所と文章の操り方はさすが文豪ですから、さまざまに唸らされることになりますが、基本的な心情は年配者に共通のもの。そうだよねえ、と共感するんだなあ。

きっと、落語の「小言幸兵衛」のように、目につくものを片っ端から文句をつけて歩いたんだろうなあ。歴代奥様やその姉妹たちは作家に心酔していただろうけれど、女中さんたちは「また始まった! 本当にうるさいんだから」と陰口をたたいていたに違いない。そんな妄想に耽りながら読んでいると、なおのこと楽しいです。

 

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ブルックリン

アイルランドの田舎町に暮らすエイリッシュは、姉と神父の勧めで職を求めてアメリカへ移住。ホームシックの苦しみもやがて恋人の出現で和らぎ、新天地での暮らしに自信を深めていきます。

そんな矢先に飛び込んできたのが、姉の訃報。帰国前に恋人の希望を入れて入籍したエイリッシュでしたが、故郷で一夏を過ごすうち、昔なじみの男友達に惹かれてしまい、心は乱れるばかり。彼女は故郷を選ぶのか、それとも新天地を選ぶのか。

エイリッシュは、特別な才能や美貌に恵まれたわけでもない(もちろん、現実の世界にいたら充分に魅力的な人ですが)普通の人として描かれています。だから、そんな彼女を待ち受ける試練や喜びに対して、観客も素直に共感できるように思います。

映画を見ていて改めて感じたのは、人生が選択の連続であるということ。その結果が積み重なって今この場所にいるんだなあ。振り返ってみれば、悩み抜いて慎重に選んだことが裏目に出てみたり、何気なく決めたことがその後の道を大きく広げてくれたりと、自分の意志通りにはいかないところが面白くも悩ましいです。

そうだ、今、私は大きな岐路に立っているのだ、とエイリッシュに自覚させたのは、生まれ故郷の町で商店を営む意地悪なご婦人でした。
この俳優さんのことは知らないけれど、詮索好きで、独り善がりで、そのくせ見栄っ張りな役どころがナイスでした。この映画の助演女優賞を差し上げたいと思います。

公式Webサイトはこちら。

 

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21世紀の名作映画100選 BBC

先日、BBCが「21世紀の名作映画100選」を発表しました(実際には2000年の作品から)。自分で観た映画は10作ほど。さまざまな思いを胸に残した「別離」がトップ10入りしていたのは嬉しかった。

宮崎駿の「千と千尋の神隠し」が4位にランクされるなど、かなり幅広いラインナップで、あれも観たい、これも観たいとリストをさかのぼっていったのですが、1位には意表を突かれた。なんと、なんと、デビッド・リンチの「マルホランド・ドライブ」が最上位に輝いているのでした(そもそも20世紀の映画だと思ってた)。

うーん、あのわけのわかんない妖しすぎる映画が(2016年までの)21世紀の名作第1位。リンチファンとしては嬉しいけれど、世の映画ファンは納得するのだろうか?
その理由を記した記事も紹介されていますが、わかんない映画を解説されたところで一層混乱するだけ。

以前、訳わかんなくてOKと書いた私ですが、BBCが示した視点からもう一度見てみようかな… いや、やっぱり?マークが頭の中に点滅し続けるだけだろうな。

 

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麗しのサブリナ

仕事命の男が、弟に恋していた使用人の娘に心惹かれ、一悶着の後でハッピーエンドに。

オープニングで主要キャストを見たとたんにストーリー展開が分かってしまいますが、そこは問題なし。ヘプバーンとボガード2人のスターの競演を楽しむことが目的ですからね。

このときボガード55歳、ヘプバーン25歳
さすがに年の差に開きがあって、展開に無理を感じてしまいました。どう見ても親子だもんなあ。

でも、邦題通り、オードリーは本当に麗しい。どんな髪型や衣装でもチャーミング。この映画の中では、排ガス自殺を図ろうと10台近いクルマのエンジンをかけ、ガレージの中で横になる姿が可愛らしかった。

 

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