Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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Helmut by June



ファッション写真で一世を風靡したヘルムート・ニュートンの撮影現場を奧さんのジュンさんがビデオに収めた映像集です。プロの現場を見るって、それだけでも楽しいし、いろいろ参考になります。このビデオは家族ならではの視線が温かくて、恐そうだと(勝手に)思っていたニュートンの印象がずいぶん変わりました。

直前に濱谷浩の作品群を見ていたので、ついつい撮影に対する両者のアプローチを比較してしまうことになりました。写真に対する考え方がまるで違うところがとてもおもしろかった。

「写真は記録だ」と言った濱谷に対してニュートンは「写真はカメラで撮るものではない、自分の頭で撮るものだ」と言います。
シャッターを切る際モデルに事細かな要求を突きつけるのは、彼の頭の中に既に明確なイメージがあるから。記録とは正反対の創作行為です。画家が絵筆を持ってキャンバスに向かうように、ニュートンはカメラを持ってモデルに向かい、創作するのです。

モデルたちのさばさばした、それ故にプロフェッショナルな仕事ぶりも興味深いですね。そして、プラシド・ドミンゴの撮影場面には笑ってしまった。途中でドミンゴにカメラを奪われ、逆にあれこれポーズを取らされる始末。でも楽しそうで、全く嫌な顔をしないんですよ。ニュートンの人柄が表れているように思います。

ジュンさん、最後のサービスカットは要らなかったかなあ。あれはご自身のために取っておいた方が良かったと思うのですが。はい、余計なお世話でしたね。
 
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日本 v. 南アフリカ ラグビーワールドカップ2015



とんでもない瞬間を目撃してしまった!
なんと、なんと、なんと、日本が南アフリカに逆転勝利!
いつか日本がワールドカップで2勝目をあげる日が来ると思っていたけれど、まさかそれが今日という日で、しかも相手がスプリングボックスだなんて。
これまでの長く屈辱に満ちた歴史があったからこそ、いっそう今日の勝利が愛おしい。

世界で最も厳しい練習をこなす男たちは戦前から「歴史を変える」と口にしていました。しかし、ワールドカップ出場チーム中、最も勝率の低いチームが最も勝率の高いチームを倒すなんて。正直なところ、善戦は予想できても勝利はあり得ないと思っていました。

フィジカル面でもひけをとらず、執拗に繰り返す低いタックル。残り20分を迎えても衰えることのないフィットネス。日本ラグビーの歴史を変えるのだという信念。そして生まれたインジュアリータイムの逆転トライ。
いやはや、すごい男たちだ。

個人的には、終始落ち着いた五郎丸の表情が印象的でした。同点のペナルティキックではなく、逆転のトライを狙ったラスト1プレイの選択もしびれたねえ。
「ベスト8」あるかもしれません。
 
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濱谷浩展



これは本当に同じ国の人たちなのだろうか。
少なからぬ衝撃を受けたのは濱谷浩展で展示された戦前から戦後にかけての写真です。

戦中、戦後のほぼ同時期に撮られた東京と高田桑取地区及び「裏日本」各地の生活を比べて見たとき、その差の大きさに愕然とします。東京があっという間に復興を遂げ、人々が豊かな暮らしを手にし始めた同じ頃、裏日本の漁村・山村ではまだ着るものにも事欠くような状況が残っていたとは。
人々が身にまとっているものの他にも、建物、食べものを比較したとき、とても同じ国を写した写真とは思えません。

展示作品をたどっていくうち、富の分配の両極化が進んだ現代の日本は、実はこの写真と同じ状況ではないのかと感じてしまいました。「写真は創造芸術ではなく記録だ」と言い切った濱谷さんの仕事が発する警告でしょうか。
それにしても、よくぞ貴重な記録を残してくれました。比較することで見えてくるものがあるんですね。

戦前の東京の風景には心惹かれました。レンガ造りの建物は威厳を備え、街ゆくモガ、モボたちは揃ってしゃれた着こなし。円タクのフォルムまでもが美しく、ついつい写真の細部に見入ってしまいました。

 
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白河夜船



「添い寝屋」という言葉に惹かれて映画館に足を運びました。なにしろ、私自身は寝るのが好きで、夜も早々に布団に入ってしまいます。寝ることを商売にできないかなあ、なんてしょうもないことを考えていたので、これは参考になるかも、なんて。

しかし、どれほど気軽そうに見えても、やはり商売はきついもの。この仕事の肝は心に寂しさを抱える客が夜中に目を覚ましたときに見ていてあげること。眠っちゃいけないのです。
しかも、添い寝屋のしおりは仕事を続けるうち、添い寝相手の心の闇を吸い込み続け、その結果、自ら命を絶つことに。こりゃ、無理だ。

それはともかく、静かな静かなこの映画がいつまでも余韻を残しています。求めているのに得られない寂しさ。求められているのに与えられないもどかしさ。

岩永と寺子が互いに求め合っていながらが距離を縮められないのは、事故で眠り続ける岩永の妻に対するやましさでしょう。生活感が希薄な2人の様子は、白河夜船と眠り続ける彼らの夢の中で進行しているようにも見えます。
2人が眠りから覚め、喜びや悲しみを本当に分かち合える日は来るのでしょうか。ラストシーンで寺子が浮かべた表情は希望なのかあきらめなのか。



井浦新と安藤サクラはまるで演技していることを感じさせません。彼らの実生活をそのまま映しているのではないかと錯覚するほど。2人ともスクリーンでは初めて見ましたが、素晴らしい俳優ですね。感情を操作するような音楽や効果音を排した(例外はエンディグに流れたピアノソナタのみ)ことで、淡々とした台詞回しの2人が発する寂しさがより深く見る者の胸に迫ります。

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