11/22/63
アルコールをちびりちびりとなめながら、日がな一日物語の世界に没頭。充実のお盆休みでした。読み始めたとたん、展開に気を奪われ、あらゆる雑事は放棄。ひたすら虚構の世界をさまよったのでした。
人の鼻面を掴んだまま放さない力業の持ち主は、もちろんこの人、スティーヴン・キング。2011年に生きる主人公がケネディ大統領の暗殺阻止に乗り出す。もう、この設定を聞いただけで大興奮。そしていつものことですが、まったく期待を裏切らない、どころか期待以上の仕上がりに(これまた、いつものことですが)3回くらい帽子を脱いじゃいました。
さて、個人の幸福と世界の幸福を天秤に掛けなくてはならないとしたらどうしますか? ジェイク(=アンバースン)が過去の世界で出会ったセイディは、このままそこで暮らそうと決意するほどかけがえのない存在。一方、ケネディ大統領はベトナム戦争に距離を置き、数千人の兵士を救う可能性を持った人物。存命のまま大統領の座に留まれば、米国や世界に計り知れない恩恵を与えるかもしれません。哀れ、ジェイクは、波乱の数々をなんとか乗り切った挙げ句、最後にこの二者択一を迫られることになるのです。ああ、ジェイクの決断やいかに。
そうそう、第2部では往年のキングファンを楽しませる町と人物が登場します。実はジェイクが訪れることができるのはいつも「1958年」。彼は大仕事の前にあの「デリー」でもう一つの殺人を阻止しようと試みるのですが、なんと、そこで出会うのがベバリーとリッチィ。
そうです、あの「IT」の災厄を退けた直後の2人に出会うのです。「デリーはもう大丈夫だと思う」と言う2人はダンスの練習に夢中。陰鬱な町にあって唯一明るい存在でした。これは嬉しいサプライズでした。
それにしても、壮大な仕掛けと個人のささやかな幸福を絡み合わせるなんて、大胆でしかも芸が細かい。また、次作も期待してます(「シャイニング」の続編がもう出てた!)。
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