The Traveling Kind エミルー・ハリス&ロドニー・クロウェル
前作「Old Yellow Moon」でグラミー賞を獲得したエミルー・ハリスとロドニー・クロウェルがまたもコンビを組んでくれました。11曲中6曲が2人の共作。二匹目の鰌を狙ったお手軽な連作ではないことがうかがえます。私たちを取りまく事物を明るくシンプルに歌っていて、そして、人生の荒波を乗り越え、なにごともそのまま受け入れられるようになった人たちの持つ余裕が心地よいアルバムです。
そうは言いながら、出だしのフレーズを聴いたとたん、ひどく心をかき乱される曲がありました。
−−星になったあなたと私の間には越えられない山がそびえている。今も心の中にはあなたがいるけれど、温もりを感じることはできない。私が天国の門をくぐるときは、どうか花嫁として迎えて欲しい。
ああ、エミーがまたパーソンズを偲んでいる。
アルバム「Hard Bargain」の冒頭に収められた「The Road」がグラム・パーソンズに捧げる叙事詩だとしたら、このアルバムの「Higher Mountains」は寂しい夜にしたためたラブレターと言えるでしょう。
パーソンズを慕うエミルーの想いは揺るぐことがないようです。他人の恋愛ごとなのに、彼女の歌声を聴くと目頭が熱くなり、まるで自分の心がパーソンズを求めて泣いているように感じられるのでした。
インタビューによれば、2人の出逢いは36年前、エミルーのソロアルバムに遡るとか。レコーディング曲が決まらない中、クロウェルのデモテープに心を奪われ(Bluebird Wine)、そのまま会いに出かけたとのこと。音楽の好みも似ていて、すぐに友達になり、そのときから一緒に歌うことが楽しかったそうです。
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