Un gato lo vio −猫は見た

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不機嫌なママにメルシィ!



本人も家族もゲイじゃないかと思っていた少年が、結局そうではなかったことを発見するお話。
見どころは、少年と母親を1人2役でこなすギヨーム・ガリエンヌの演技ぶりでした。

ダスティン・ホフマンの「トッツィー」もそうだったけれど、ガリエンヌも基本的には女性顔ではないため(男前とも違うし)、いかに化粧をしてふくよかな体型に見せても、顔を見てしまうととても女性には見えません。
ところが、何らかの動きを見せると、あら不思議、ちゃんと女性に見えてしまうんですね。

ついつい、女性らしさとは何だろう、人は何を見て対象人物の性別を判断するのだろうと考えてみたくなりました。で、映画を見ているうちに、ああ、そうか、仕草かと納得した次第。

肘や膝をちょっと内側にひねったり、小首を傾げてみせると、欧米文化に馴染んだ人の目には女性に見えてしまうんですね。背筋を伸ばして歩いたり、指をきれいに伸ばす仕草にも、いわゆる女性らしさを感じます。

人は見かけじゃないよ、中身だよ、という言葉もその通りだと思いますが、外見もやっぱり大切。自分が普段どんな仕草をしているのか、にわかに気になってしまったのでした。

そうそう、映画では、上流社会のおばあちゃんやおばさんたちの捌けた処世訓がナイスでした。

公式サイトはこちら。
 
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先生のお庭番



シーボルトという人が尊敬できなくなってしまうなあ。長崎出島のオランダ商館医でありながら、鳴滝塾で高野長英らに蘭学を教えた日本の恩人だと思っていたけれど、彼は人の心を持っていたのだろうか。

小説の題名を見れば、主人公は駆け出しの植木職人、熊吉なのかと思います。彼はシーボルトに目をかけられたことで才能を伸ばし、職人としても人としても大きく成長することになります。

しかし、最も印象に残るのは、女郎から妻の座に納まったお瀧でしょう。傾いた実家を救うために自ら苦界に身を沈めた彼女は、シーボルトに身請けされて、神も仏もあったと感謝したはずです。伝法な口を利きながらも夫を慕う気持ちは微笑ましいものがありました。

でも、結局シーボルトは自国の利益と自分の出世にしか興味がなかった。人情の厚い振りをしておきながら、最後はずいぶんドライに帰国してしまいました。「いつまでも好きだよ、手紙書くからね」でおしまいなんですよ。自分の人生を変えてくれた恩人として信仰の対象のように仰いでいた2人は、あっさり置いてきぼりを食ってしまうのです。

自立できた熊吉はあきらめもつくだろうし、一生感謝し続けるかもしれません。けれど、娘を出産した直後に「連れて帰ることはできない」と言い渡されたお瀧の心中を察すると、彼女が哀れでなりません。
シーボルトが帰国してしまえば後ろ盾を失い、つらい日々が再開するのは明らか。それなのに、けなげに明るく振る舞って、おじさんは涙がちょちょ切れます……

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天使の分け前



ウイスキーやワインを木製樽で熟成させると、中の水分やアルコールが少しずつ蒸発するそうです。業界ではこれを「天使の分け前」「天使の取り分」と呼ぶのだとか。

さて、この映画、犯罪を重ねて社会奉仕を命じられた4人の若者がウイスキー蒸留所で働きながら更生する物語だと思っていたら、とんでもない!
なんと、かけられた恩を利用して、またまた盗みをやらかしてしまうというお話でした。

彼らが目をつけたのは、とある蒸留所の倉庫に眠っていた年代物の高級ウイスキー。最初は全部盗み出すつもりでしたが、さすがにこれは無理。結果的には「天使の分け前」分だけを頂戴して、才覚を生かしてお金に換えるわけです。

「大金持ちからほんの少しおこぼれを頂戴しただけ。だから許して」って、それでいいのか?
仲間を仕切るロビーの奥さんは「あなたは初めて会ったときからやんちゃだった」と笑ってるけど、おいおい、こいつはまた何かやらかして、あんたに迷惑をかけるぞ。
嗅覚に優れたロビーは職を得たけど、ほかの3人は儲けた金をすぐに使い切って、またぞろ犯罪者に逆戻りなのは明白。

だいたい、彼らの面倒を見る更生係のおっさんもおかしい。
「二度と犯罪を犯すなよ」なんて説教しておきながら、高級ウイスキーを譲ってもらうと「あいつめー」とにやつく始末。

チャーミングなだけで許されるなんて許せない、と憤るおじさんでした。

ははは、でも楽しい映画でした。
 
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Trans Atlantic コラム・マッキャン



大西洋を行き来することになった家族4世代の物語であり、同時にアメリカとアイルランドの関わりを俯瞰する物語でした。

アイルランドの貧しい出自ながら、篤志家の家で住み込みのメイドとして働いていたリリー・ダッガン。彼女はそこに滞在した米元奴隷の人権運動家に啓発され、自由を求めて渡米。女性4世代150年に渡る波乱に満ちた、しかし一方でありふれた家族の歴史が繰り広げられることになります。

リリーは多くの子どもを失い、その娘エミリーはニューファンドランド島でジャーナリストとして大西洋無給油飛行を目指すオルコックとブラウンに出会います。
3世代目のロッティーはアイルランドへ戻り、ハンナを出産。しかし2人は最愛の孫(息子)であるトマスをテロによって失ってしまう……

印象的な場面があります。
エミリーは母親に親切にしてくれた篤志家宛に手紙を書き、大西洋を横断するブラウンに託します。しかし、世界初の航空便となるはずだったその手紙は届けられることなく、十数年後にエミリーの元へ。
手紙は封を開けられないまま娘たちに引き継がれるのですが、家族の歴史に幕を引くことになった4世代目のハンナはその処置に迷うのです。

ハンナは夫に先立たれ、ローンの返済もままならず、困窮生活。人権運動家にかかわる資料を集める収集家が手紙に興味を示したため、とある人物に売却を依頼します。しかし、交渉が不成立せに終わったとき、ハンナは電話越しにその手紙を読んでもらうことに決めました。
150年に及ぶ歴史を振り返りながらも達観した彼女の静かな幕引きにいつまでも余韻が残りました。
 
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Diana Gameros



NPRでたまたま耳にしたDiana Gameros(ディアナ・ガメロスと発音するのかな?)の歌声にすっかり心を奪われてしまいました。
心の内を素直に表現しているような素朴さが懐かしくも新鮮。一方で、いろいろな音楽を聞いてきたのだろうなと想像させられるバラエティの豊かさも感じさせてくれます。飾らないラテンなアレンジがいいなんだなあ。

音源を購入しようとしたところ、AmazonやiTunesでは扱っておらず、どうやらCDを自主制作したようです。
YouTubeにはライブ演奏がアップされていて、親密感あふれる会場の様子を見ているうちに、なんだか誰かに教えたくなってしまいました。

古いものでは5年前の演奏があり、そんなにキャリアがあるのかと驚きました。才能に恵まれたとしても、日の目を浴びなければこうして地道に活動を続けるしかないんだ、きっと世界には大勢こういうミュージシャンが埋もれているのだろうなと、改めて感じ入った次第。

ともあれ、しばらくは彼女の歌声が就寝前の楽しみになりそうです。

公式サイトはこちら。


 

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