シェリ
元高級娼婦にして富豪のレアとプリー、そしてプリーの息子でレアの愛人となるシェリ。彼らが尊ぶ価値観は粋。野暮ほど忌み嫌うものはありません。
己の姿を客観的に見つめるレアは衰える肉体を粋ではないと見なし、また、そんな自分からいつまでも離れようとしないシェリを野暮だと断じます。
年若く美しい妻を置き去りにしてシェリが戻って来たとき、レアは喜びに打ち震えますが、そんなお互いの姿は無粋そのもの。だからレアはシェリの心が離れるように仕向けたのでしょう。
年若く美貌のシェリはまだまだ輝くのだろうけれど、老いを自覚したレアが保ち続けるのは誇りだけ。これまで懸命に美しさを保ち続けてきた自分が、今さら年齢にふさわしい年寄りを愛人に持つなど言語道断なのです。
そう、主役は老いていく自分と向き合い、誇りを持って孤独に生きる決心をしたレア。
哀しい結末でしたが、透明感溢れる美しい絵画を見ているような心持ちになりました。
年上の女性にあこがれる男達を描いた物語が好きな方には、伊藤整「変容」、ジョン・アーヴィング「未亡人の一年」、グレン・サヴァン「僕の美しい人だから」などもお勧めです。
ところで、実際に25歳年上の女性と恋愛関係を持てるでしょうか?
50歳をとうに過ぎた我が身に置き換えて想像するのは結構難しいものがありますが、もし自分が18歳で相手が43歳だったらどうだろう? 美しく着飾り、教養に溢れ、気っぷのいい女性だったらあり得る気がします。
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