狼少女たちの聖ルーシー寮
父親が消えたワニ園でワニと格闘する少女。魚の幽霊が見えるゴーグルをつけて行方不明の妹を捜す兄弟。ミノタウロスの父親が曳く牛車に乗って西部を目指す一家。狼人間に育てられた子どもたちの社会順化を目指す聖ルーシー寮。
ここに収められた短編に登場するのは実に奇妙な世界。どのページをめくっても、まか不思議なことが起きています。
でも、登場する子どもたちが感じる思いの数々はなじみ深いものばかりです。世界は不可解であり、どうすることもできない制約に満ち、不安ばかりがつのります。
子ども時代が純粋無垢で楽しみにあふれていたなんて、嘘っぱちもいいところ。そして、大人になればなったで別な不自由さに直面し、新たな不安感につきまとわれ続けます。
この短編世界に浸っていると、努力が必ずしも報われるものではないという事実を呆然と見送る一方で、仕方ないよね、と肩を寄せ合う気分になります。
牢獄に閉じ込められていたような気分は二度とご免だと思っていたのに、やっぱり逃れられないんだなあ。
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