Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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黄金の七人 1+6 エロチカ大作戦



70年代の軽いのりが楽しかった同タイトルの前2作(金塊強奪作戦)とはぜんぜん別のお話でした。
とはいうものの、お気楽さはさらにパワーアップ。男女どちらにとっても夢のようなお話でした。

女性問題がこじれて故郷シチリアから追い出されたミケーレ君は知人を頼ってベルガモへ。そこで貴族の執事を務めることになるのですが、3つの睾丸を持ち、精力絶倫との噂が流れ、上流階級のご婦人方に大人気。引く手あまたで、あたるを幸い、片っ端からなでぎりなのです。

ところが、絶倫すぎて事故を起こしてしまい、なんと役立たずな体に。即刻お払い箱となり、精力と引き替えだったミケーレの幸運もついに尽きた。そして最後に待っていた運命は……

奥様方の割り切り方の素晴らしいことといったらありません。この前紹介したゾラの夫婦もこれくらいあっけらかんとしていれば楽しい人生を送れたのにね。

妻とミケーレの浮気を覗く楽しみに目覚めた旦那がおかしかった。わざわざ巨大な望遠鏡まで用意するんですから。眼鏡をかけると落語家の川柳師匠に似ているところも個人的には笑えました。
 
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グランド・ブルテーシュ綺譚



間男したおかみさんが危機一髪の場面を明るくしゃらりと切り抜けちゃう落語の「紙入れ」。男女関係のもつれは当事者にとってみれば大ごとですが、傍から見ればよくある話。世の中そんなもんさとおおらかに構えたいものです。

ところが、おそらく「紙入れ」のねたとそう変わらない時代に書かれたゾラのこの短編。同じ間男話でも「なんでそうなるのだー!」と叫びたくなるほどひどいことになってしまった。

現場に踏み込んだ夫は男を出せと迫るも、奥さんは誰もいませんとシラを切ります。クローゼットに男が潜んでいることを承知の夫は、ドアをレンガで塞げと命令。自分の目の前で職人に仕事をさせ、それから毎日その部屋に居座る……

奥さんも、夫もやがて男が死ぬことは承知で意地の張り合い。そもそも隠れている間男も、助けてくれとか、なんとか叫べばいいじゃないですか!
意地を張り通して、死んだら元も子もないでしょ。
「紙入れ」のおかみさんと旦那を見倣いましょう。おおらかに、おおらかに。
 
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山猫



1860年、変革の時を迎えるシチリア島が舞台。対岸の半島では革命が進み、イタリア統一の機運が高まっています。
シチリアにも革命軍が上陸し、島内で戦いが繰り広げられるのですが、旧支配層であり広大な領地を有するサリーナ公爵は彼らを支持。甥のタンクレディに至っては志願兵として参加しています。

サリーナは終盤で革命軍を支持する理由を訊かれ「変わらず生き残るためには自分が変わらなければならない」と応じ、変化を受け入れるかのような態度を示します。
しかし、その一方で、2500年に渡る支配を受け続けてきたシチリアにとって、支配者が誰であろうと、本質的な部分は何も変わらないのだと、独りごちるのです。
先進的とも思える態度は、実はあきらめの裏返しのように感じられました。

それにしても長時間にわたって繰り広げられる舞踏会は豪華だった。広大な屋敷に数百人が詰めかけ、ワインと踊りを楽しむ様子はくらくらしちゃいます。

そして、一庶民としては飲食と楽団への支払がいったいどれほどになるのか気になって仕方ないです。一夜だけでも莫大なはずなのに、それを頻繁に開催するのですから、当時の貴族はどれほどの財産を持っていたのか、言い換えればどれほど領民から搾取していたのか……

主役はサリーナ公爵の達観振りが際立つバート・ランカスターではありますが、私としてはイタリア語を喋るアラン・ドロンが面白かった(吹き替えらしいのですが)。
どこか影のある演技が持ち味のドロンにもかかわらず、イタリア語になったとたん、あっけらかんとして、まるで脳天気に見えるからおもしろいものです。

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The Boy in the Striped Pyjamas



ブルーノは9歳の明るく前向きな少年です。両親、憎たらしいお姉ちゃん、大勢の使用人達と共に、ベルリンの大きな屋敷で楽しく暮らしていました。
ところがある日、「総督」が夕食に訪れ、それから急に引っ越しが決まります。引っ越し先は寂しい野原。他にあるのは、フェンスの向こうに見えるたくさんの小屋だけ。不思議なことに、小屋を出入りする人たちはみんな縞柄のパジャマを着ているのでした。

やがて、退屈な毎日にうんざりして、フェンス沿いを探検しようと思い立ったブルーノ。1時間ほど歩いた先で、フェンスの内側に1人の少年を発見します。彼の名前はシュムエル。坊主頭のやせて小さいな子でしたが、話してみると誕生日がぴったり同じ。それから2人は仲良くなって、1年近くフェンス越しに友情を深めるのでした。

ところが、夫の仕事内容に耐えられなくなった母親が、自分達だけベルリンへ戻ると決意。親友と別れなければならなくなったブルーノは、最後の日に特別な思い出を作ろうと、フェンスの内側へ入り込むのです。
シュムエルの用意した縞柄パジャマを着て施設内を歩くうち、想像したのとは全く違う世界に恐くなったブルーノ。行方不明になったシュムエルの父親を一緒に捜すという約束を反故にして帰ろうとしたとき、集合を命じる合図が鳴り響き、ブルーノもその一団に巻き込まれてしまう……

日本の終戦の日を直前に偶然手にした小説です。伝え残さなければならないことを、自分の心にもしっかりと留め置こうと決意させる一冊でした。
映画「黄色い星の子どもたち」も併せて見ることをお勧めします。

ああ、ブルーノ君の無邪気さが腹立たしくも切ないです。彼に罪はないと分かっているけれど……
 
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銀の島



イエズス会のフランシスコ・ザビエルを日本に連れてきた安次郎という人物の手記がインドのゴアで発見され、そこには「ザビエルを信用するな、彼はポルトガル国王のスパイだ」と記されていた。
共に来日した軍人が石見銀山を奪おうと画策する一方、日本国内は室町幕府が崩壊状態にあり、ポルトガルの強大な軍事力に立ち向かうことは不可能。石見の運命やいかに!

まず、このストーリー設定に驚かされますが、登場人物の個性も際立っています。

純粋な人柄ながらも、「デウス以外の信仰対象は全て悪魔」だとするザビエル。その排他的な言動に疑問を感じた安次郎が師と精神的な袂を分かつ場面は印象的でした。この世には天と地があるだけ、人はただ生きるだけでいい、という境地は大いに共感しました。

それにしても、大興奮の設定と展開。最初の勢いが最後まで持たなかったけれど、久しぶりにわくわくしながらページをめくり、他の作品にも俄然興味がわいてきました。
本作のような史実をベースにしたフィクションといえば隆慶一郎を思い出しますが(今も松平忠輝は私のヒーロー)、なんと山本さんも今年亡くなったと聞き、短いキャリアが残念で仕方ありません。

隆慶一郎はくぐつを発見したことで独自の日本史観を作りました。山本さんはこの作品に倭寇を持ちこんだことで物語を壮大なものにしています。
植民地化が進む世界史の中で日本を見ることも新鮮で、目から鱗が落ちまくりでした。
 
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