Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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それでも恋するバルセロナ



ウディ・アレンの映画って面白いんだか面白くないんだか良く分からなくて、敬して遠ざけていたようなところがありましたが、予告編で見たペネロペの切れっぷりが素晴らしくて、ついつい見てしまった。

バルセロナがとても魅力的に描かれていて、特にガウディの建築物が街そのものを美術作品にしていました。黄昏のカフェでワインを傾けながらギター演奏に聴き入るシーンなんて良くできた観光ビデオのようで、行ってみたくなります。

さて、スペインで一夏の休暇を過ごすことになったアメリカの都会娘、ジュディとクリスティーナ。バルセロナのパーティーで知り合った女たらしの画家、アントニオに揃ってくらくら。そこに元妻、エレーナが加わってアントニオを中心とした奇妙な四角関係ができあがるのですが……

彼らの関係がどうなるのか期待させておきながら、結局アメリカ娘2人は休暇の終わりと共に元の鞘に。
アメリカ都市部の価値観をいかにも物質主義的で底の浅いものとして揶揄しているところがおもしろいといえばおもしろいのかなあ。

一方で、エレーナ役ペネロペの切れ方は迫力がありすぎて本当にこわい! 特にスペイン語でまくしたてるときは地に足が付いているというか、演技には見えないというか、とにかく絶対にお近づきになりたくない、と思わせる雰囲気を強烈に発散させています。「ボルベール」の時にも感じたけど、スペイン語でスペイン映画に登場するペネロペは存在感に溢れ、とても魅力的です(でも、重ねて言うけど、本当にこわい!)。
 
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カジュアル・ベイカンシー



いやはや、恐ろしい小説を書くものです。
舞台は議員定数が10人にも満たないイギリスの地方自治体。町のお荷物的団地と医療施設の扱いを巡って2つの勢力が対立中。そんな折りに、議員の1人が急死、その空席を巡ってさまざまな思惑が交錯しはじめるという筋立てなのですが……

これのどこが恐ろしいかって? ハリー・ポッターの作者は読者に「読心術」の能力を与え、登場人物達の心にわきあがる思いを隅から隅まで読み取れ、と命じているのです。

人はだれでも他人に知らせたくない思いや闇を抱えているもの。それを全て知り得たなら、きっと社会は成り立たなくなるでしょう。ただ、抑えられない好奇心というのは存在するもので、普通はそれを満足させるために映画や小説を楽しむものなのですが……

ローリングは全登場人物(主だったところでも20数名はいる)の心に生じる思いを徹底的にリアルに書き尽くしました。彼らは遭遇した人物をまず値踏み。小さなことから大きなことまで、相手をけなし続けるところが超リアルです。
もしかして、これは生物学的フィールドワークなのか? 「人が社会の中で自分の存在を肯定するためには、このような心の動きが生じます」と報告されているような気がしてきます。

そして、「読者であるあなたも同じでしょ」と突きつけられるところが、実に恐ろしい。
誰だって、ここに描写されるような心の動きがあるはず。
完全な善人など存在しないと宣言されることが、本当に本当に恐ろしい……
ホラーを超えています。
 
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Wrote a Song for Everyone ジョン・フォガティ



おお、ロックしてます。
フォガティが他のミュージシャンを招いて自らの代表作をセルフカバーしたアルバムです。

ひねった編曲はなく、今の自分があの頃の曲を演奏したらこうなるんだぜ、と素直に繊細にしかもパワフルに歌っていて、なんだかとても嬉しそうです。
暖かく、聞く者の心にしっくり馴染むような音はまるでフランネルのシャツのよう。

リーフレットによれば、このアルバムは奥さんの発案によるものだとか。
2人の息子も演奏に参加していて(Lodi)、明るく楽しい家族の見本みたいですね。ジャケット写真の表情も渋さと可愛らしさが同居していて好いですねえ。
あこがれます。
 
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ミリオンダラー・ベイビー



ウエイトレスを続けながらボクシングのチャンピオンを夢見る31歳の女性。名選手を育てながらも不遇をかこう老トレーナー。この2人が主人公でタイトルが「ミリオンダラー・ベイビー」とくれば、そりゃあ、ハッピーエンドなお話しを想像しますよ。イーストウッドだから「ロッキー」よりひねりがあるとは思っていたけど、でもまさか尊厳死が扱われていようとは。

頂点まであと一歩という場所までたどり着きながら、悪意ある「事故」で寝たきり状態になってしまうマギー。もはや悔いはない、栄光の記憶が自分の中から失われる前に人工呼吸器を外してくれとトレーナーのダンに懇願しますが……

彼女に対して娘のような情愛を抱き始めたダンがイエスと言えるはずもないのですが、もしも願いを聞き入れたら、そのときダンがどのような感情に見舞われ、どのような行動に出るか、彼女は想像しなかったのでしょうか?

彼女の尊厳死に手を貸したなら、おそらくダンが残された短い日々を虚ろな心で過ごすことは必至。彼女の後を追う可能性だって小さくありません。マギーはそれを察知しなかったのでしょうか。

たぶん、彼女は承知していたのだと思います。自分が横たわったまま生き続けようと、あるいは死んでしまおうと、残されたダンが自分を責めながら残りの人生を過ごすことも見えていたでしょう。

私にはマギーが尊厳を保ったまま死なせてほしいと訴えながら、ダンに心中を持ちかけたように思えてなりません。あなただって、このさき生きていても辛いだけ。だったら、二人揃って逝ってしまおうよ、と。

実は、死ぬまで後悔し続ける、考えてみれば最も気の毒な人物がいます。
ジムの世話方でダンと長いつきあいのエディです。彼は苦悩するダンにマギーを死なせてやれ、と説得するのですが、その後の失踪まではおそらく予想できなかった。
ああ、気の毒に……

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