ザ・ロード
ラストシーン後に画面が暗転し、数秒の間を置いてかすかに聞こえてきたあの音は何を意味するのだろう?
波が海岸に打ち寄せ、人々の声に犬が存在をアピールするように吠えている。そしてまばゆい青空を連想させる鳥の鳴き声。
あの音が後日譚の一部であるなら観客はかすかな希望を抱くことができるけれど、登場人物の誰かが美しい日々を回想していたのだとしたら絶望はさらに深まることになります。
核の冬とおぼしきモノトーンの世界で食糧と燃料を求めてさまよう人々。基本的に他者=襲撃者であり、ことに弱者は周囲への警戒を怠ることができません。もし、「悪しき者」に捕らえられたら、主人公父子のように自殺を覚悟する他ないという絶望感は原作に忠実。
生まれたときから終末世界に暮らしながら、他者を思いやる心に溢れた息子。その姿は美しくもあり、哀れでもあり、とても正視に耐えません。
絶望的な状況におかれても、人は胸に火を抱き続け、「善き者」であり続けることが可能だというメッセージを読み取ることも可能ですが、それでもこの映画や原作の文脈を読む限り、人類は終わりに向かってとぼとぼと歩き続けるしかないように思えます。
最後に聞こえてきた音が後日譚だとしても、状況が一変するような希望は生まれようがないのです。
とても印象深く重要な映画だけれど、やっぱり見るんじゃなかった……
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