刺青
男を次々と喰い物にしていくお艶(染吉)の姿は、最近読んだ「ダブル・ファンタジー」の奈津を思い出させますが、奈津が自由の獲得を目指していたのに対して、お艶はただただ、自己破滅的。敢えて問われれば、「自分をこんな女にした男達に復讐するため」というのですから凄みが違う。
なにしろ、映画に込められた熱気がすごい。同じ増村監督が後年に撮った「盲獣」は火傷必至の灼熱でしたけれど、この「刺青」もかなりのもの。見ている者を否応なく妖しい世界に引きずり込んでしまいます。自分までお艶に溺れてしまい、もう二度と浮かび上がれなくなるような空恐ろしさがなんとも……
若尾文子という名前は私たち世代にとって既に過去のものでしたが、これを見て感じたのは圧倒的な存在感。当時、30歳そこそこでありながら、人生の辛酸をなめ尽くした女の執念をあれほど体現できるのですから、他の作品にも興味が湧いてきました。
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