永遠のゼロ
吉村貫一郎はきっといつの世にも存在するのですね。
浅田次郎が生み出した新選組隊士の真摯に生き抜く姿は今も記憶に鮮やかですが、百田尚樹の描いた零戦搭乗員もその信念を貫く姿が読者の胸に強烈に刻み込まれることになりました。
「たとえ手足がなくなろうと必ず帰ってくる、死んでも生まれ変わって帰ってくる」と妻に誓った宮部久蔵。帰還するチャンスがあったにもかかわらず、なぜ特攻機に乗り込んで自ら命を絶ったのか。
戦争を生き残った人々が宮部の孫に語る姿は、一方で臆病者、一方で優秀な操縦士。いったいどちらが真実なのか。
やがて明らかにされる予想外の真実にはすっかり打ちのめされてしまいました。宮部に生かされた人々の後日譚も胸を熱くします。
そして一人の人間の生き方という普遍性を持ったテーマに心を動かされながら、もうひとつ、私たちは特定の出来事に対して知るべき義務と忘れてはならない責任があるということを改めて感じるのでした。
人は愚かな過去から学べるものであってほしい。
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