ルビー&カンタン
いい人だ、と言われると褒められているようでありながらも、実は馬鹿にされているようで、非常に微妙な気持ちになります。
「いい人なんだけどね……」と言われたら最悪。誰か陰で言ってないだろうな。
カンタンはそう言われてしまう典型的な善人。
いい人すぎて、あらゆる価値観を超越した世界に住んでいるようです。彼にはもはや善も悪もありません。
相手を喜ばせようと思って喋りまくるものだから、うるさがられて友だちができるはずもない。
そんなカンタンが銀行強盗に及び、刑務所で同室になったのがルビー。
こちらは愛人をボスに殺され、復讐に燃える超ハードボイルドモード。一切口を開かないんです。
普通ならこんな二人がうまく行くはずもないんだけれど、なにしろ善意に基づくカンタンのおせっかいぶりが普通じゃない。一方的に親友宣言をしてルビーにつきまとい、あげくに脱獄の手助けを。そして怪力の持ち主ということもあって、なんだかんだと窮地を救ってしまうのです。
危険も顧みず(たぶん察知できていないだけだろうけど)、体を張って「親友」を守ろうとする態度にさすがのルビーも根負け。
しかも最後は一芝居打って完全にルビーの心をつかんでしまうのだからたいしたものです。
「いい人」もここまで徹底できれば別な価値を獲得するということですね。
ジャン・レノはコミカルな役の方が味があっていいなあ。
ともあれ、後味の良いコメディでありました。