Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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ルビー&カンタン



いい人だ、と言われると褒められているようでありながらも、実は馬鹿にされているようで、非常に微妙な気持ちになります。
「いい人なんだけどね……」と言われたら最悪。誰か陰で言ってないだろうな。

カンタンはそう言われてしまう典型的な善人。
いい人すぎて、あらゆる価値観を超越した世界に住んでいるようです。彼にはもはや善も悪もありません。
相手を喜ばせようと思って喋りまくるものだから、うるさがられて友だちができるはずもない。
そんなカンタンが銀行強盗に及び、刑務所で同室になったのがルビー。
こちらは愛人をボスに殺され、復讐に燃える超ハードボイルドモード。一切口を開かないんです。

普通ならこんな二人がうまく行くはずもないんだけれど、なにしろ善意に基づくカンタンのおせっかいぶりが普通じゃない。一方的に親友宣言をしてルビーにつきまとい、あげくに脱獄の手助けを。そして怪力の持ち主ということもあって、なんだかんだと窮地を救ってしまうのです。

危険も顧みず(たぶん察知できていないだけだろうけど)、体を張って「親友」を守ろうとする態度にさすがのルビーも根負け。
しかも最後は一芝居打って完全にルビーの心をつかんでしまうのだからたいしたものです。
「いい人」もここまで徹底できれば別な価値を獲得するということですね。

ジャン・レノはコミカルな役の方が味があっていいなあ。
ともあれ、後味の良いコメディでありました。
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新潟シティライド



むなしく埃が積もってしまったロードバイクが哀れで、久しぶりにイベントに参加しました。
新潟市を一周する「新潟シティライド」120キロです。

一人で黙々とペダルを廻していると「なんでわざわざ辛いことしてるんだろ?」と疑問が頭をかすめることもありますが、大勢で走るといろんな人がいて、そんな人たちを見ているだけでも楽しい。


ギターを抱えた謎の軍人さん(?)にはみんなが注目。どこで弾くつもりなのか訊いてみたところ「実は弾けないんです、ははは」という意表を突いた返事でした。


最年少参加は8歳の小学生。チェックポイントごとに顔を合わせることになりましたが、ということは私と同じ速度で走っている!
最後の30キロは「膝が痛い」と訴えたものの、テーピングを施して無事完走。いやあ、すごいすごい。

集団内に混ぜてもらうと、一人では絶対に出せないスピードで走れてしまうことも嬉しいですね。風よけになっていただいたみなさん、目障りだったでしょうが、おかげでレース気分を味わえました。ありがたいことです。

コースは120キロありますが、オールフラットなので初心者や私のようなへたれライダーでも大丈夫。わざわざ遠出をせずに、自宅からスタート地点まで自走できるところも気楽でよかった。
運営も手作り感あふれる暖かさに好感が持てました。
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ウェンディ&ルーシー



うちの猫たちはもうだいぶ年齢を重ね、それなりに落ち着いてきました。でも、元気が有り余っていた若い頃は、よく喧嘩をしては怪我を負ってみたり、何日も帰ってこないこともありました。
姿の見えない日が続くと、怪我をして動けなくなったのではないか、事故にあったのではないか、どこかに閉じ込められてしまったのではないかと、あらぬ妄想が膨らみ、彼らの名前を呼びながら近所を探し回ったものです。

ウェンディは世話になっていた姉夫婦の元を離れ、愛犬ルーシーと共に職を求めてアラスカへ向かう途上。ところがオレゴン州の町で車が故障、犬の餌も底をついた。資金に乏しい彼女はスーパーマーケットで万引きに及ぶも、見とがめられて警察へ。半日後、犬をつないでいた店に戻ると彼女は消えていた… 

おそらく、ウェンディは両親を失い、身を寄せていた姉夫婦も暮らしが楽ではなく、そこで厄介者扱いされていたのでしょう。きっとこれまで世間は彼女に辛く当たってきたに違いなく、信頼できる連れ合いは、ルーシーだけ。何がなんでもルーシーを取り戻したい彼女の気持ち、よく分かります。

彼女たちはめでたく再開を果たすことができるのですが、そこでウェンディは新たな決心を下すことになります。彼女が踏み出す一歩はほんのわずかなものですが、背中を押してくれたのは小さな町の普通の人たちが見せてくれたささやかな善意だったように思います。

電話を貸してくれた警備員、問い合わせに嫌な顔ひとつしない動物収容所の職員、レッカー代を負けてくれた修理工場経営者、ルーシーを保護してくれた紳士。
彼らもまた、どこかに切なさを抱える人たちで、途方に暮れるウェンディに感じるものがあったのでしょう。

車を失った彼女がアラスカへたどり着くまでには、まだいくつものトラブルが待ち受けるはず。それでも、世の中悪いことばかりではないと、心に小さな灯をともしたウェンディに「しっかりね」と声を掛けずにはいられないのでした。

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夏目漱石の美術世界展

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漱石先生ごめんなさい。
先生と美術に関わる展覧会を訪れて、再読したくなったのは曾野綾子だった。

というのはターナーの「金枝」です。
曙光に染まる松と踊るビーナスたち。霞のベールを通したかのようなおぼろな風景を目にしたとたん「たれかターナー描く『金枝』という絵を知らぬ者があろう」という一文が口をつき、ああ、これはフレーザー「金枝篇」の冒頭だったなと思い出したのです。

なぜ金枝篇を手にしたことがあるかといえば、曾野綾子「太郎物語」。とかく影響を受けやすかった私は、文化人類学者をめざす太郎君がすっかり気に入ってしまい、彼を真似て民俗学の名著を読み始めたのでした。当時はあえなく挫折しましたけどね。

そんなことを思い出すうち、太郎は一晩で金枝篇を読んだんだよなとか、ビールに氷を入れるおじさんだの「ノボピン」というあだ名の先生がユニークだったなあ、なんて、やけに細部が鮮明に蘇ってきた。太郎を真似て南山大学で文化人類学を学ぶのだ! と燃えたこともあったけなあ。

太郎物語は若者のひたむきさと世間知らず加減が実に楽しい小説だった。金枝篇リベンジと併せて再読してみよう。
というわけで、漱石先生には申し訳ない気持ちで会場を後にしたのでした。

追記:若冲の水墨、伸びやかな線が好かった。青木繁の自画像は迫力満点。怖いほどです。

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歩けども歩けども、そこは白根「GO! GO!ナイトウォーク」


口は災いの元。
わかっちゃいるけど、飲むと調子にのってしまうんだなあ。
で、どんな災難に巻き込まれたかというと、なんと、長岡市から新潟市までの55kmを歩くことに。

友人と昼酒で好い気持ちになっていたある日の午後。
彼が「うちの会社で毎年55kmのウォーキングをやっているんだ」というではありませんか。
黒木本店の焼酎ロックですっかりできあがっていた私は「出る、出る、参加させて!」と手をあげてしまった。
思えば、にやりとした友人の顔が災難を予感させていたのだ…


足が痛い、肩が凝る、腰が固まる、という身体の痛みは予想の範囲内だったけれど、なんといっても辛かったのが旧白根市。
この町の南北に長い地勢にやられた。

55kmを14時間で歩き抜いたうち、白根通過になんと5時間! 1/3以上じゃないか。
しかも歩いた国道8号線はひたすらな直線。
夜の闇の中、はるか遠くにぽつんと信号の明かりが目に映り、それが歩けども歩けども近づいてこない。いや、むしろ遠ざかっているのでは、と錯覚するほど。
このまま一生白根に囚われてしまうのではないかと真剣に怯えてしまった。

終わりが見えないという状況はかなり気持ちを萎えさせるものです。
もう調子に乗って軽はずみなことは言いません。
だがら早く白根を終わらせて下さい、と祈るほど、田んぼ、果樹園、仏壇店が同じように次から次へと現れる。歩けども歩けども、そこは白根。
田んぼで鳴くカエルが「ばーか、ばーか」と揶揄するようです。

「GO! GO!ナイトウォーク」の真の恐ろしさは旧白根市です。
来年、初参加を予定されている皆さん、くれぐれもご注意を。


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