百年の孤独
そもそも本棚に積まれたままだったこの小説のページをめくりはじめたのは、黒木本店の麦焼酎「百年の孤独」を譲ってもらったからなのです。
夏休みの数日、香り高い名酒のオンザロックを傍らに、遙かな物語を楽しもうかな、と。
ところがところが、これがとんでもない物語でして、とても酒を飲みながら追っていけるような展開ではない。
現代の物語の旗手と言えば(私としては)アーヴィングにキングにシモンズ。確信犯的な分厚い本にたじたじとなることしばしばなのですが、マルケスの物語は、彼らでさえ小僧っ子に思わせるほどの濃密感にあふれていました。
なんでもありの(幽霊、未確認飛行物体、空飛ぶ絨毯、空に消える娘、etc…)スーパーリアリズムぶりは頭をくらくらさせ、同じ名前を持つ複数の登場人物に混乱は極まり、ついに焼酎は放棄。
とにかくエピソードが多すぎて、登場人物の内面を想像する余裕はありません。
人の琴線に触れるような物語ではなく、ただひたすら物語るための物語。
マルケスにおそらく文学的な意図なんてなくて、ただ単に語らずにはいられないかった、というのがこの長大な小説の真相なのではないかと妄想します。
子どもの頃からひたすら物語を消費し続ける私にとってはまさに格好の小説でしたが、それでもブエンディア一族の最後のひとりが消える場面に用意されたとんでもないオチには、リアルにソファから滑り落ちてしまった。
物語好きを自認する人にはぜひとも体験していただきたい一冊ですが、くれぐれもアルコールは控えられますよう。