Un gato lo vio −猫は見た

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On The Road エミルー・ハリス


NPRでエミルー・ハリスのライブ(なんと100分も)を聴いていたら、「次の曲はグラム・パーソンズに捧げます」とこの曲を紹介。
パーソンズが亡くなってから約40年。
最新アルバム「Hard Bargain」の冒頭に納められている曲が今さら彼を慕うものだとは、どうしてなんだろう…

気になって歌詞カードを引っ張り出してみると、彼女の想いの深さに感じ入り、一言では感想を書けないなと思いました。
そこには二人の出会いから始まり、募っていった想い、別れのあとの喪失感、そして音楽の深さを教えてもらったこと、自分のキャリアを拓いてくれたことに対する感謝の気持ちが淡々と述べられています。
そしてそれはセピア色ではなく、非常に瑞々しい。

才能ある音楽家の例に漏れず、平穏な道のりは歩めなかったエミルーも60代半ば。
自分の人生を振り返ったときに改めて感謝したというより、出会ってから今現在まで、彼女の心には常にパーソンズが住み続けていたように思えます。
情感あふれる歌声ながら、私には歌いかけてくれないという違和感の理由はこれだったのかも。

On The Road

あふれる情熱を抱えて
夜通し演奏を続けたあのころ
あなたの歌は今も耳に鮮やか
でも、まさかあなたが歳を取るのをやめてしまうなんて
想像もできなかった


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世界のすべての七月



タイトルの力というものはあるようで、6月も中頃を過ぎるとつい「世界のすべての七月」を手に取って眺めてしまいます。
53歳を迎える団塊(ベビーブーマー)世代が1泊2日の同窓会に集ってじたばたする群像小説。
自分の人生も半分を折り返したことだしと、ひさしぶりに読み返してみました。

で、この小説に登場する「仲間」たちに励まされて1つの決意を。
もう「成長」なんて目指しません。

うすうす気づいてはいたけれど、人は成長なんてしないのです(たぶん)。
確かに肉体的には大きくなるし、世の中を渡っていくための技術はどんどん積み重なっていくけれど、心(あるいは魂)の部分は変わらない。

この小説で同窓会に集まった仲間たちの青春時代は、まさに変革の時代。
彼らは世界そのものが成長し、人類が大人になるのだと夢見ていました。

ところが「ヴェトナムやら、いまいましい乳癌やら、誰がそんなものを想像することができたかしら。
「なにしろえらいどたばた騒ぎなのよ。誰もがそれぞれに痛みを感じ、それぞれにちょっとした傷やらへこみやらを抱え込んでいるわけ。愛に爪先をぶつけたり、魂をずたずたにされたり、そんなこんな、エトセトラ、エトセトラ」というわけで、歳は取ったけれど、やっていることは昔と同じ。
本質は学生時代と何も変わっていないことをみんながそれぞれに確認してしまうのです。

「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものです。
自分のことを振り返ってみても、やはり彼らと同じこと。
もう「成長」なんていう空しい概念は気持ちよくほっぽり出そう。
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記憶の棘



死んだ元夫のショーンだと名乗る少年に翻弄されたアナ一家と婚約者。
謎が解明されて騒動がおさまり、ラストシーンでは予定通り5月の海辺で結婚式が行われます。
でもアナは波打ち際で涙を流し、心配する夫を拒もうとするかのような仕草。
和解したはずのアナがなぜ泣くのか…

彼女は亡くなった元夫を忘れられないのでしょう。
夫の生まれ変わりかもしれないけれど、わずか10才の少年に心を動かされてしまったのは彼と過ごした大切な記憶を呼び覚まされたからです。
自分は生涯その記憶から逃れられない、新しい夫を愛することはできないと悟ったことが最後の涙だったのでは…

死んでもなお美しい妻に想いを寄せられるショーンですが、これが実はろくでもない男だったというおちがこの映画に妙なリアル感を与えていました。
アナの涙が空しいものだなんて、可哀想すぎるなあ。

2人だけしか知らなかった事実を語り出す少年に心を乱されるアナ役のキッドマン。
あの子がショーン? そんなわけはない、でも、でも… 
気持ちが揺れる様を映し出した2分近いアップはため息ものでした。


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ルームメイト



15年ほど前近所に建てられたフラットは、ルームシェアを前提とした物件。
家賃は半分ですむし、楽しいよ、と謳っていたのは学生相手だったのでしょう。
米国の映画や小説にはよくそんな状況が登場するけど、赤の他人と密閉された空間で暮らすなんて私には無理、と思っていました。

それぞれの個室はいいとして、例えば共用の台所やトイレや風呂場を汚くされていたら嫌でしょう? あるいは逆にぴかぴかに磨き上げられていても気を遣うし。
眠いのに宴会でも開かれたり、彼女(彼氏)を連れてきていちゃいちゃされたら、温厚な私でもさすがに切れる。
そもそも、その同居人が危ない人間じゃないという保証はないでしょう。
夜中にドアの隙間からこっそりのぞかれていたらどうしよう?

という危険をテーマにしたのが「ルームメイト」。
裏切った男をアパートから放りだしたアリーは、初対面のヘディをよく考えもせずにルームメイトに迎えますが、これがとんでもなく怖ろしい女だった。

アリーの私物を漁ったり元彼氏の手紙を隠すなんて序の口。
やがて飼い犬をアパートの窓から突き落としたり、アニーになりすまして怪しい酒場に出入りしたりとやることがエスカレート。じわじわと立場が逆転し始め、そしてとうとう…

気がつけば、件のフラットもルームシェア制度はなくなっていたのでした。
やっぱり恐いもんね。


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