2つの「ミレニアム」
映画「ミレニアム」(スウエーデン版)と、小説「ミレニアム」シリーズを各3作堪能しました。
小説はどれも上下1000ページ前後の大作で、これを全て3時間以内の映像に収めるのは不可能。
というわけで、映画はリスベット・サランデルに焦点を絞り、原作のミステリー部分だけを手際よくまとめた形となっています。
2つを比べてみて、映画が物足りないということはありません。
とくに主人公のリスベットは原作の雰囲気が見事に描かれています。
公安の陰謀を隠蔽するために社会的不適格者として葬られたものの、不公正な扱いに断固として挑み続ける姿が共感を呼ばずにはいられません。
3作目の裁判シーンは不屈精神全開で、思わず声援を送りたくなってしまいます。
そして小説は、娯楽作品の形を取りながら、実は社会問題を提起するという問題作でありました。
スティーグ・ラーソンは自ら訴えたかったことをより多くの人々に知ってもらうため、ミステリーという小説スタイルを採用したのではないでしょうか。
彼は、スウエーデンという国が抱える影の部分、不当な差別を受け続ける人々が数多く存在し続けるという事実と、その不正を是正すべき法律や関係機関が機能不全に陥っているという認識を強く持っているようです。
小説の中で愚直なまでに正義を追求しようとするミレニアムの記者、ミカエル・ブルムクヴィストの姿はそのまま著者ラーソンの姿に重なって見えます。
この才能が既に散ってしまったという事実が残念でなりません。
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