東京暮色2
この映画、周吉が一人きりになる場面で幕を閉じます。
残された人々が自分に課せられた定めを静かに受け入れようとする姿が際立つ終わり方ですが、別な場面で終わる方法もあったなと思います。
1つは、明子と喜久子が対決する場面。
善良な父親に似ず奔放なのは、自分が母親と別な男との間にもうけられた子だからと憤る明子に対して、喜久子はそれだけは絶対に違う、あなたはお父さんと私の子だと宣言します。
その言葉を聞いた明子はその場を飛び出しますが、ここで終われば、明子が立ち直るきっかけを得たとして希望を感じさせる印象を残したでしょう。
もう1つは明子が逃げ回っていた恋人とラーメン店で遭遇し、男の不実に絶望して店を飛び出す場面。電車が急ブレーキをかける音が響き、そして一瞬の静寂が訪れます。
ここで無音のエンディングロールに移ったら、悲劇性は否が応でも増し、後味は全く違ったものになったと思います。
なぜ、小津さんはわざわざ病院の場面とその後日譚を付け加えたのだろう。
あれこれ考えさせてくれるという意味でも素晴らしい映画でした。