フル・モンティ
手早く稼ぎたい失業中の男たち。おれたちに何ができる? そうだ、ストリップだ、どうせやるならスッポンポン(フル・モンティ)だ!
というわけで、400人の観客を前に踊るラストシーンは拍手、拍手。
でも、ここに至るまでのお話は、コメディとしてはあまりおもしろくありません。
それより、人が日々の生活を送るってこうだよなあ、という現実感が切なくて、切なくて。
イギリスの鉄鋼の町という舞台がそもそも寒そうで寂しそうだし(「ブラス」もそうだった)、いわゆる美男美女や、セクシーな体つきの俳優も登場しません。
ジャージやよれよれのシャツやトレーナーが妙に似合いすぎて、とても映画を観ているような気分になれないのです。まるで、知り合いが登場するビデオを見せられているような…
舞台や状況があまりにリアルすぎるのも良くないな、と思う一方、失業中の男たちとその家族の間で交わされる感情のやりとりのリアルさは、なにか心に触れるところがあります。
それは非常にありきたりで、本当なら映画にも小説にも取り上げにくいささやかなものです。
でも、生きていくのはこういうささやかな感情の交換の連続だよなあ、としみじみとさせてくれます。
そんなわけで、祝祭的ラストシーンでは、よく投げ出さなかったなとリアルに感心し(少しうるっとしながら)思わず拍手を送ってしまったのでした。