Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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卵をめぐる祖父の戦争



第二次世界大戦下、ドイツ軍に包囲されたピーテル(レニングラード)を体験できることもすばらしい。
運命の巡り合わせが引き合わせた二人の少年の奇妙な友情もすばらしい(「熊を放つ」のグラフとジギーをを思い出す)。
残暑の新潟で私は寒さに凍え、飢えに苦しみながら雪のレニングラード郊外をさまよいました。
物語を読む至福の時。

粛正された詩人を父親に持つレフは貧相で短気でふさぎやすいユダヤ人。コーリャは金髪碧眼、がっちりした体格の自慢屋。
ウエディングケーキに必要な卵を1ダース探してこいと命じられた2人の悪戦苦闘がこの物語のメインストーリーですが、それだけではちょっと良くできた小説という域を出なかったでしょう。
でも、終盤に訪れるひとつの悲劇がこの物語を忘れがたい作品に高めました。

それはあっけなくも冷酷な事実の中でみせるコーリャの明るい魂のありようです。
未読の人の楽しみを奪いたくないので詳細は避けますが、間近に迫った死におびえることなく、最後まで誰か他の人のために尽くす姿に鼻の奥がつんとします。
私はコーリャの笑顔をいつまでも覚えているでしょう。

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ドン・ジョヴァンニ WC@シネマ



そうか、オペラの楽しみとはこういうことかと得心のいった舞台でした。
昨年同じWC@シネマで観たドン・ジョヴァンニも斬新で楽しかったのですが、グラインドボーン音楽祭による今回の演出はなんと現代劇。

ドン・ジョバンニはタキシード姿だし、懐中電灯やピストルや自転車だって登場します。
オリジナルの台詞がふんだんに盛り込まれ、実に楽しいコメディに仕上がりました。
アリアは聞き慣れたものなのに、まったく新しい作品を観ているようです (しかも結構エロチック)。

現代劇になって特に活きいきしたのはツェルリーナ。
うぶな婚約者マゼッタも2000人以上の女をものにしたというジョヴァンニも、田舎娘の彼女の手玉に取られてしまいます。
いや、もちろんストーリーの上では同じ役どころですが、演出によってそのように見えてしまうのです。したたかな女性にかかったら男なんて他愛のないものです。はい。

エルヴィーナの使用人の窓に向かって求愛するジョヴァンニのアリアは実に良かった。
男の私でもついうっとり。思わず窓を開けそうになりました。

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日本 v. フランス ラグビー・ワールドカップ

 スポーツ観戦の楽しみは、ひいきチームの勝利を見るだけではないと改めて感じさせてくれるゲームでした。

日本の初戦はフランス。世界ランキング4位。
なにしろ、かなう相手ではありません。
かなわないと分かっている相手にどう挑むか。

もちろん、ひいきチームには勝ってほしいけれど、ファンが酔いしれるのは全力を尽くす姿です。
その点で今日の日本の闘いはファンを陶然とさせるものでした。
特に後半。
攻めてせめて攻め続ける。

最後の10分は力尽きてしまったけれど、フランスのタックル数が日本を上回ったことを見ても、全力を尽くし続けた日本チームの姿が良く表れていたと思います。
予想通りの負けながら、スポーツ観戦の楽しみとしては上々のものでした。

前大会ではアルゼンチンが魂の震えるような試合をいくつも見せてくれました。
今大会はどんなドラマが待っているか、とても楽しみです。

……でも勝ちたかったなあ。

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痴人の愛



10代の少女を引き取って自分好みの女に育てたい譲治。貧しく汚い実家が嫌だからと、あっさりついてきたナオミ。
これがうまくいくと思いますか?

さえない中年男の譲治はひたむきな愛情を注ぐものの、それに物足りなさを感じ始めたナオミは若い男と次々に関係を持ってしまいます。
そして譲治は嫉妬にさいなまれてナオミを追い出すも、どうしても彼女のことが忘れられません。
一方ナオミも軽い女だと見なされ、流転の生活。
最後にナオミは「あんたには私しかいないのよ」と自信たっぷりに譲治の元へ戻ってきます。
そうなんだ、おれにはお前しかいないんだ、と泣き笑いの譲治。

やれやれ、奔放な女に操られる哀しい男の物語だったかと思ったその瞬間、ナオミが叫びました。
「私もあんたしかいないのよ!」
なんと、この一言で、この映画は純愛物語に転じてしまったのです。
やるなあ、増村監督。

光ったのは小沢昭一の演技。
怪演というか、自のままというか… 
嫉妬に狂う様がすばらしい。きっと楽しんで仕事をしたんだろうなあ。
そして若い若い田村正和。自信なさげな坊ちゃん役が妙に新鮮でした。
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