Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
<< July 2011 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

オラクル・ナイト ポール・オースター

 
たぶんオースターは具体的に知っているのです。
言葉は力を持つ。
言葉は現実を引き起こす力を持っていると。

何気なく口にしてしまったことが、その通りになってしまったという経験はだれにも一つや二つあるのではないでしょうか。
それが苦い思いとなって残っている私にとって、この一冊はただの小説の域を超えて迫ってきました。

友人の息子に殴られて危篤に陥った妻の状態を父に伝えるシド。
容態はどうなのだと問われ、間違った言葉を口にして呪いをかけてしまってはいけないと慎重に口を開きます。
「言葉に殺す力があるのなら、私は自分が使う言葉に気をつけなければならない。ひとつでも疑念を表明したり、否定的な思いを発したりしてはならない」
端から見れば電話を手にした男が眉間にしわを寄せてぽつりぽつりと喋っているに過ぎません。
でも、ここでシドは全霊をかたむけて妻を守る闘いに挑んでいるのです。

ときに私たちは物事が起こる前からわかっています。
そしてそこにつきまとう不安を感じています。
それを具体的な物語に仕上げ、読む者の心を波立たせるたオースターの腕前はやっぱりすごい。
小説(あるいは読書) | permalink | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |

台風接近



台風が接近すると夕焼けがあやしく染まりますよね。
向こうに見えるのは佐渡島。
でもなんだか鬼ヶ島のような雰囲気です。


JUGEMテーマ:地域/ローカル
新潟暮らし | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

八朔の雪 みをつくし料理帖



またまた楽しいシリーズに遭遇です。

上方で料理屋に奉公していた澪は、訳あって主家のご寮さんと江戸に下ってきました。
日々の暮らしもままならぬ澪ですが、近所の荒れ果てた稲荷神社を放っておけず、手入れにいそしむ毎日。

そんな澪を蕎屋の主人、訳ありの浪人、若い医者がそれぞれに見初めます。
縁あって「つる家」で料理を作ることになった澪ですが、上方の料理はどれも江戸っ子の口には合いません。
さて、澪は江戸庶民がうなるような料理を作ることができるのでしょうか。

澪を取り巻く人々が良い人たちばかりで、そのへんが少しもの足りない気もしますが、不運にまっすぐ立ち向かおうとする健気さに背中を押してあげたくなります。

作中に登場する料理をは実においしそうで、自分でも作ってみたくなります。そんな読者の気持ちをそらさないように、巻末にレシピを載せるという周到振りに拍手。

というわけで今夜は澪風のとろとろ茶碗蒸しに挑戦なのだ。
小説(あるいは読書) | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

シモン・ボッカネグラ ワールドクラシック@シネマ 2011


ソプラノが登場しないという地味な舞台。
ビール片手だったこともあり、途中で寝てしまうかもと心配したのですが、主役級がそれぞれがたっぷりと聴かせてくれました。

ハイライトは癌から回復したばかりのドミンゴ。
本当に病気してたの? と思うくらいの迫力です。
ただ、毒を盛られて娘の腕の中で息を引き取るシーンは真に迫りすぎていて、状況が状況だけに、本当に死んでしまうのではないかとはらはら。

もっとも迫力があったのはファビオ・サルトーリ。
いやあ、聴き手を惹きつける朗々とした歌いっぷり。幕の途中で何度も拍手があがっていました。
琴風を思い出させる風貌と巨体から繰り出すテノールは、桁違いのボリュームでありまして、はっきり言って主役のドミンゴを喰っていました。

JUGEMテーマ:音楽
音楽 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

卍(まんじ)

 

同性愛を描いた映画といえばヘップバーンとマクレーンの「噂の二人」を思い出します。
制作年は共に1961年ながら、その取り扱い方がまったく違いますね。

性的に奔放なイメージのあるアメリカの映画が禁断の愛として描いているのに対して、こちらは「当たり前のことでしょう」という堂々とした態度。
宗教的な縛りがない日本人の方が性に対しておおらかなのでしょう。

あたりまえですが、岸田今日子にも若い頃があったのですね。
どうもムーミンのイメージが強烈だったもので、園子役を演じる30代の妖しい美しさにくらくらしてしまいました。
主役は3人の男女を自分に惹きつけたい光子(若尾文子)です。でも、嫉妬に狂い、逃れられない泥沼にはまり込んでいく岸田さんの存在感が光っていました。

小道具も凝っていまして、特に光子と園子が手紙のやりとりで使う便箋と封筒は、工芸作品の域に達していました。
最初に登場する便箋はトカゲをあしらったもので、アボリジニの作品を連想させます。
あんな便箋で手紙をもらったら表装して飾っておきたいな。
映画 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |