ライブの幸せ2 ロンドン交響楽団
バイオリンがピアニシシモを奏でたその瞬間、私は粉雪の舞うフィンランドにいました。
針葉樹の開けた林を灰色の空が覆い、やがて風が募ってきそうな気配です。
これはシベリウスのバイオリン協奏曲第1楽章の冒頭。
演奏したのはゲルギエフ率いるロンドン交響楽団でした。
なんという美しいピアニシモだったことでしょう。
かすかな音量にもかかわらず確かな存在感を持ち、耳をそばだてるまでもなく聴くものの胸にまっすぐ届いてきます。
そしてオーケストラ全体の暖かさ。
CDで聴くロンドンとは全く印象が異なりました。
やわらかで威圧的なところは微塵も感じさせないのに、圧倒的な厚みを持ってこちらに迫り来るのです。
気づけばぬくもりのある音の海にたゆたっているのでした。
バスが実に豊かにオーケストラを支えていましたが、きっとそのせいなのかもしれません
(私のオーディオ装置ではこれほど存在感に満ちたバスを再生できないのです)。
マーラーの1番もすばらしかった。
ゆったり目の第1楽章が怒濤のフィナーレを際だたせてくれました。
大好きな曲、大好きな指揮者、尊敬するオーケストラ。
なんという幸せ。