ジャニス・ジョプリン WOODSTOCK DIARY
ジャニスの声を聞くと、私はいつも心の中で彼女の肩を抱くことになります。
ウッドストック2日目の夜、雨の中ジャニスは登場しました。
「みんな、大丈夫? 寝るところはある?
「無理しないでね。楽しむために来ているんだから。聴きたい音楽だけ聴いていればいいのよ」
そして彼女は1人だけ別の世界にいました。
魂を削りながら歌っていることはだれの目にも明らか。
1曲歌うごとに彼女の生命が1日分消えていく様がはっきりと見えます。
それはもはや歌を超えてしまったのです。
曲の途中でバンドが演奏を止めます。ジャニスの声だけが響く。
打ち合わせ通りなのかもしれないし、彼女の歌が単なる歌を超えてしまったことを感じて自然に手が止まったのかもしれません。
シャウトするのは自信のなさの裏返しなのか。
彼女のキャリアを知っている現在の私はそんなことを思います。
私を見て、私はここにいる。
でも誰も救えない。
手をさしのべたらそのまま引きずり込まれてしまうでしょう。
がんばれなんて口が裂けても言えないし、そこまでやらなくてもいいんだよとも言えません。どんな言葉も彼女を救うことはできないでしょう。
でも放っておくなんてひどすぎる。
だからウッドストックの古いビデオを観ながら、心の中で彼女の肩にそっと腕を回しているのです。
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