Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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ライブの幸せ1 N響



若手ガードナーとN響初めての組み合わせ。
聴かせるところはたっぷりと聴かせ、そして情熱的な演奏でした。
第4楽章は力にあふれ、怒濤のフィナーレ。大満足。

そもそも、プロのフルオーケストラは今日が初体験。
最初の音が聞こえたとき、思わずにんまりしてしまいました。
これはなんだ、と。

うまく表現できないのですが、音そのものが形あるものとして確かにそこに存在しているように感じられました。
例えば、観客席からステージの上に身を投げ出しても(2階だった)音に受け止められてそのまま浮いてしまうんじゃなかろうか、なんて。

そして、PAを通さない生の音って本当にうっとりしてしまいますね。
音の出所が特定できてとても立体的。
それぞれがくっきりと分かるのに、でも全体と調和していて。
あたりまえだけどCDとは全然違う。

これは癖になるなあ。

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仕立て屋の恋

うーん、実に衝撃的な結末。
その結末はこの映画を優れた作品に昇華させているし、そして観ていた私に問いを突きつけたという点で二重に衝撃的でした。
それはこういうことです。
一瞬の幸福と残りの人生を引き替えにできるか。

ああ、イール氏は切ない。
彼はアリスが自分に近づいてきた動機を知っているのですから。
彼女の好意が偽りであることに気づき、自分が感じる一瞬の幸福さえ偽りだと自覚しています。
結末そのものも哀しいものですが、偽りの幸福と残りの人生を引き替えにしてしまう道を選ばなければならなかったイール氏の心中、そして来し方を想像するといっそう哀しみが募るのでした……

主役二人と刑事の演技は実にすばらしかった。
ラストでイール氏とアリスが向き合う場面は、実際には語られない言葉が聞こえてくるほど緊迫した演技で、オールタイム・ベスト級でありました。
そしてエンドロールは無音。衝撃のラストシーンが胸にしみる心憎い仕掛けです。
マイケル・ナイマンも相変わらず良い仕事をしていました。
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若冲 日曜美術館


西のアイドルがフェルメールで、そして東のアイドルが若冲。
もうなんだか、名前を聞いただけでそわそわ。
今日もテレビの前に釘付けなのでした。

スーパーリアリストかと思いきや、最近発見された象と鯨の屏風のような、おおらかな絵も描いていたのですね。
懐が深いなあ。

絵画や写真の楽しみの1つは、作者の世界観を知ることにあると思うのです。彼らの目に世の中は、どのように映っているのか。

若冲の楽しさは発見の驚きですよね。
「うわあ、すごい」と言いながら生き物たちをつぶさに観察する姿が目に浮かぶようです。
若冲のように驚きを持って世界を眺め続けたいものです。

日曜美術館(今日の姜さん) | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

ライ麦畑でつかまえて



「都会のアリス」を観て「ライ麦畑」を思い出したと書きましたが、それに関しておもしろい記事を発見。

本の雑誌」2009年8月号の青山南さんのコラムです。
「ニューヨーカー」にサリンジャーが訴訟を起こした記事が載っていたそうで、最近若い人たちは「ライ麦畑」をどう感じているのかについても。

「ライ麦畑」は相変わらず学生たちの必読書として指定されているそうなのですが、学生たちのホールデン評がすごい。
「うざい」
「きもい」
「お金持ちの男の子が週末ぶらぶらしてるだけの話でしょ」

今のアメリカの若い人たちは「社会を拒絶した美しい負け犬」なんかにはまったく興味がないとか。
プレップ・スクールを退学することより、カレッジに進学することに熱中していて、青山さんは「社会は確実にホールデンが嫌っていた方向に向かっている」とため息をついています。

「野崎孝」訳で夢中になった世代の人たちも、きっとそんな状況にため息をついていると思うのですが(私も)、「村上春樹」訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」ではじめてこの小説に出会った日本の若い人たちはホールデン君にどんな感想を持ったのでしょうか?

やっぱり「うざい」と思うのかなあ……

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都会のアリス

 

ヴェンダース監督のロード・ムービー1作目。

空港で知り合った女性から、子どもを連れていってほしいと頼まれたジャーナリストのヴィンター。あとから来るはずだった母親が姿を現さず、2人は祖母の住居を訪ねてドイツの街をさまようことに。

この映画が制作された頃は、「失われた自分」という概念が一つのジャンルとして成立していたのだと思います。
アリスとともに彼女の祖母を捜す旅は、米国取材で自分を見失ったヴィンターにとって自己回復の旅でもあった、という感じなのですが、これって「ライ麦畑でつかまえて」のラストシーンを思い出させます。

そんなわけで、テーマそのものは古くさく感じてしまいますが、モノクロで切り取られる2人のショットはしみじみ美しい。


並んでテレビ画面を見る空港の2人。
川で泳ぐ、バスを待つ、街を歩く、写真ブースでカメラに向かう2人。
そしてラストシーン、列車の窓から笑みを浮かべる2人。

アムステルダムのシーンは特に光がきらめき、見るものの心に焼きついてしまうようでした。

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