Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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パリ、ジュテーム



パリの街角を舞台にした5分間の短編18本をまとめたオムニバス。
そこではさまざまな出会いと別れが演じられていました。

臨終の間際に救急隊員をコーヒーに誘う移民、地元のちんぴらにこけにされる観光客、死期を宣告された妻と夫、盲目の学生とダンサー志望の少女、吸血鬼に恋する青年…

自分とは縁もゆかりもないストーリーばかりなのですが、なぜかしら自からの人生を振り返っているような気分にさせられます。
この映画のような絵にはならないけれど、私も確かにさまざまな出会いと別れを繰り返してきました。「そういえば、けっこう楽しかったよな」と思わせてくれる心憎い映画でありました。

死期の迫った妻の頼みで夫が朗読する場面があります。作品は村上春樹「スプートニクの恋人」
村上ファンは世界中に多いとは聞いていますが、映画の中で名前を出して観客がわかるほど一般的なんですかね? 
村上さん、新刊を楽しみにしています。
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なまいきシャルロット

JUGEMテーマ:映画


わたしはルル。
小学校にあがったばかりなんだけど、すぐに頭がいたくなって、いつもおくすり飲んでいるから友だちがいないの。
でも近所のシャルロットお姉ちゃんがあそんでくれるから平気。
お母さんが病院でやきんのときはお姉ちゃんの家に泊まるし、かけっこもしてくれるんだ。

お姉ちゃんは中学校に入ってからようすが変。
お父さんやお兄さんとわけのわかんないけんかをするし、おとなの男の人についていったり、お手伝いのおばさんにいじわる言ったり。
さいあくなのは、ピアノがじょうずなクララと友だちになったこと。

クララのきまぐれを真に受けちゃって、いっしょにコンサートツアーについていく気になっちゃった。
わたし、お姉ちゃんがいなくなるのはいや。ぜったい、ぜったい、いや。
だからクララのコンサートで大声をあげたの。
お姉ちゃん行かないで!

というわけで、病室のバルコニーで手を握る二人の姿を見ると「よかったね、ルル」と声をかけずにはいられないのでした。

シャルロット・ゲンズブール。
13歳にしてすでに憂いの表情。
なんか、その後もそんな表情の役回りが多いような気がするので、なんとなく心配になるというか気になるのです。

もちろん演技なんだから私生活は違うのだろうけれど。
「ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール」のような、くったくのない私生活でありますように。
ま、よけいなお世話か。


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土曜日 イアン・マキューアン

JUGEMテーマ:読書


40代後半の精神科医ペロウン。明け方、炎上しながら空港へ向かう貨物機を目撃することから彼の週末は始まります。

読者は日常のささいな出来事に遭遇するたび頭の中に浮かぶペロウンの思いを忠実になぞっていくことになります。
「これは今時の『ダロウエイ夫人』だな」と思いつつも、あまりに日常的すぎて「こりゃ、だめだ」と本を閉じかけました。

と、ところが、終盤思いがけない事件が持ち上がります。
そのとき、ペロウンが巡らす思考がまるで自分のものであるかのように、とてもリアルに、そして強烈におそってきました。
これはまさしく「ヴァーチャル・リアル」。なんだか自分が登場人物になったような感じがします。前半耐えた甲斐があったというものです。

そして、最終的には「思考する物体」としての人間の不思議さと喜びを噛みしめることができる、実に希有な、そして挑戦的な小説でありました。

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