カート・ヴォネガット 「国のない男」
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学生というのは愚かなもので、自分に無限の時間と可能性があると、どこかで信じてる節がありますよね。貴重な機会に遭遇しても「今度でいいや」なんて思って、後々後悔するはめになるのです。私もその口で、チャンスをみすみす見逃していたものです。
でも、ヴォネガットだけは出かけずにいられなかった。20数年前、彼が日本にやってきたとき、どうしてもその姿を自分の目で見たくて、どうしてもその声を自分の耳で聴きたくて(どんな手を使ったのか忘れてしまったけれど)、講演会の席に潜り込んだのでした。至福の時間だったなあ。
遺作となった「国のない男」を読むと、あの時のヴォネガットの姿がよみがえります。
彼はこの世の中に幻滅し、人間というものに徹底的に愛想を尽かしています。でもあのユーモア! 風貌が伝えるとおりの知的で暖かみにあふれたユーモアに接すると、「少しは楽しいこともあるし、ま、いいか」という気持ちになります。
So it goes.
そういうものものだ。