北東の大地、逃亡の西
JUGEMテーマ:読書
ううう、怖ろしい短編集を読んでしまった。
冷えびえとした気持ちが暖まることはなく、やりきれなさだけが残ります。
犯罪に手を染めたり、酒や薬に溺れた男たちがアメリカの片田舎で希望を見いだすこともなく、ただただ人生に追いつめられていくのです。ささやかな楽しみもなく、友もいない。彼らが進む道は、ひたすら暗闇に向かって枝分かれしているだけで、日の当たる道に合流することは二度とないのです。
まじめに人生をやり直そうとする男にすら、容赦ない運命が待っています。
それで、なにが怖いのかというと、その可能性なのです。これが自分の身に起こらないという保証はありません。死ぬまで怯えつづけ、孤独だけを友としている自分の姿は想像したくありませんが、暗闇への曲がり角がすぐそこにあるかもしれないと思うと気持ちが萎えてきます…
これと同じ読後感の小説がもうひとつあります。志水辰夫「男坂」。追いつめられた男たちの、どこへも行けない閉塞感は同じように気持ちを冷えさせました。
そんなに怖いのなら読まなければいいようなものですが、どちらもうまいのですよ。読み手の魂をわしづかみにして離さないものだからやめることができないのです。 ああ、こわいなあ、もう。