Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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プルーフ・オブ・マイ・ライフ

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物語の大筋はこちらへ。
メインストーリーは、父親の死に混乱するキャサリンがハルを信頼して恢復できるか、というところですが、姉クレアの抱える(であろう)恐怖は払拭できるのか、というサブストーリーが気になります。

クレアは繊細な妹キャサリンとの対比を際だたせるためか、事務的で必要以上にてきぱきとした役どころです。彼女は父親が病んだ精神病を妹が受け継いでしまうのではないかと心配しますが、実は自分こそが精神を病む可能性におびえているように思えます。
常にメモを取らずにはいられない癖、装っているかのような常識人ぶり。時に抑えきれない口元の緊張や、焦点の定まらない視線が彼女の恐怖を感じさせるのです。
妹の心配をできる自分は正常なのだと言い聞かせずにはいられないほど、実は闇に向きあうクレア。キャサリンは内面の嵐を思うさま表に出せるだけ、まだ救いがあります。ナイトも現れました。でも恐怖を抑えつけているクレアはだいじょうぶなのでしょうか…
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宮廷のみやび-新日曜美術館


たまたま最近、澤田ふじ子「天の鎖」シリーズを読んだところでした。平安時代の京都庶民の暮らしぶりがテーマの一つなのですが、その感想を「みやび」にからませるのは野暮なので、ここでは書かないことにします。
ただ、ほんのわずかな朝廷や公家の「みやび」な世界と、膨大な庶民の「非みやび」な世界が相容れることなく存在していたことを、忘れないでいたいと思ったのであります。

ということで、今日の檀ふみ(blogタイトルを「今日の檀ふみ」に変えた方がいいかな?)。
今日もやってくれましたよ。ゲストは書をたしなむという奥田瑛二。
「奥田さんの書はバランスがすばらしい」と、国立博物館文化財部部長。すかさず、壇ふみ、「奥田さんは筆をとってさらさらと恋文など書かれたわけですね」。一瞬絶句してから否定する奥田瑛二の弱った顔がおかしかった。
毎週いたずら好きな檀さんであります。

2月24日まで国立博物館で公開中だそうです。
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タンゴ

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すっかりおやじになった私は、やっぱりさえないおやじたちのどたばたが楽しく、少し切ないです。
女性が好きで仕方ないのに、一つ屋根の下では暮らせない男三人のさえない殺人旅。女はこりごり、と言いながら、行く先々で女性たちにちょっかいをだしては、結局翻弄されてしまうだらしなさ。
それぞれのエピソードを「ははは」と無条件に笑い飛ばしたいのですが、いろいろ身に覚えがある私としては、かれらと一緒になって落ち込んだり同情したりするのでした。

妻の浮気現場を押さえた夫が浮気相手を追いかける冒頭のシーンは、むちゃくちゃです。ここは無条件に拍手。
黄色いオープン仕様のビートルでBMWを追い回し(プライド傷つくだろうなあ)、あげくは青息吐息の相手をセスナで空から威嚇するんですよ。やることが派手というか、むちゃくちゃというか。おやじを侮ってはいけないのです。


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静かの海

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こどもが主人公で、悲しみがつきまとう映画にどういうわけか引き寄せられてしまいます。この映画は風景の美しさが悲しみをあおります。

アポロの月面着陸は世界中を熱狂に巻き込みました。でもオランダの片田舎で暮らす小学生のカロはおもしろくありません。ひとが月になんか行ってしまったら、今度は天国に行くと言い出しかねない。神様に失礼だというのが彼女の言い分です。

カロがそれほど神様に親しみを感じているのは、神様に話しかけるより他につらさを紛らわす方法がないからみたいです。小さな養豚場を営む父親は酒に溺れ(いったいなにが不満なのだろう)、いつも警察にやっかいをかけてお母さんを悲しませます。仲良しの男の子は宗教が違うということで一緒に遊ぶこともままならないし、水泳の授業も大嫌い。

ときには独身のおばさんと羽目を外したり、お祝いがあったりしますが、基本的には毎日暗い影がつきまとうカロ。その心中を思うと胸が塞がります。

小学生の頃は、一日一日が長く、一ヶ月は遙か先で、一年は永遠にも感じられました。彼女の心が静かの海を見つけて軟着陸してくれることを願ってやみません。

オランダ語サイトありました。
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橋口五葉-新日曜美術館



橋口五葉には以前に一度驚かされていました。「吾輩は猫である」の装丁がすばらしくオリジナルでモダンだと感心していたのですが、なにかの展示会で泉鏡花の装丁を眼にして、同じ装丁という仕事ながらその装画デザイン、色彩、紙の材質選びなどが別次元に飛躍していて、そしてあまりの美しさに絶句してしまったのです。私にとっては、いまだにこれを超える装丁は存在しません。

その五葉が実は美人画版画にもっとも力を注いでいたと知り、改めて驚かされました。
その繊細な美しさを論じるのは専門家に任せるとして、私が印象深く感じたのは、美しいものに対する執拗さ。
美術家全般に共通することだとは思うのですが、今眼にした美を永遠に留めたい、すぐに損なわれてしまう美しい姿をすくい取りたいという気持ちがありありと感じられます。
数千枚に及ぶデッサンと、数枚しか制作されなかった版画。摺り師を呼び、膝を交えて技術的な検討を行ったという妥協のなさ。そこに、五葉の美しさに対する執念の質をうかがい知ることができると思いませんか。

そして、今日の檀ふみ。
「気品とエロティシズムは私の永遠のテーマでありますの」。その発言に反応せず進行する黒沢アナウンサー。笑いで和ませようとするかに見えて、実はそのとおりなんだろうな、とわかってしまうところが可愛いと言えば可愛いですね。

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灰とダイヤモンド

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マチェックがどのような組織に属し、戦勝記念の夜になぜ県の党書記を殺害することになったのか、その経緯を(恥ずかしながら知識が無くて)うまく追えないことがもどかしいです。
ただ、彼が戦争中に辛酸をなめ、若いが故に世の中を皮相的に眺めることになったのだろうと想像がつきます。残りの人生なんておまけみたいなもんさ、と。
ところが、ドイツが降伏したその夜、かれはホテルのバーで働く娘に恋をして、自分も人生をやり直すことができるかもしれないと希望を抱きました。だから、死ななくて良い場所で死ななければならなくなった彼の無念がいっそう伝わってきます。ゴミの山の中で頭を抱え、だだっ子のように足をじたばたさせる姿。
おい待ってくれ、おれはやり直すことにしたんだ、だめだ、だめだ…

最初から最後まで、ひとつひとつのシーンがどれも凝りに凝っています。
特に印象に残ったのは、マチェックが撃たれて、何百枚とはためく干されたシーツの中を逃げる場面。ずっと夜の場面が続いていただけに、その明るさが彼の死の理不尽さをいっそう強調しているようでした。

「太陽にほえろ」のジーパンが刺される有名な場面。この映画から触発されましたかね。雰囲気がそっくりでありました。一瞬、マチェックが松田優作に見えました。

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晩鐘-銀次とアンディの涙

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銀次が帰ってきました。10年ぶりです。
あいかわらず涙腺が弱く、こどもにまで「泣き虫」と言われてしまうのです。切ない話を耳にしただけでも涙が止まらなくなってしまいました。
挫折を味わい、子の親となった銀次は10年前より、いっそう感じやすくなったようです。

お上の御用を務めるくせに、涙もろいのは銀次だけではりません。
現在、個人的な第3次ブームに突入中の「ツイン・ピークス」。ここに銀次に劣らない人情豊かな保安官代理がいます。そう、アンディ君です。
ルーシーをめぐるどたばたに代表されるように不器用だし、じれったくなるくらいのお人好しです。死体を目にすれば大泣きするのはあたりまえ。まったく銀次そっくりです。
でも軽く見てはいけません。アンディは、アールやボブと対極の、「善」なる価値観の象徴なのだと思います。

いやなことが多い世の中です。なにが良くて、なにが悪いのか。混沌としていて自分の判断が揺らいでしまうこともありますが、そんなとき、銀次やアンディの涙がそれを教えてくれるような気がします。

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グレート・ギャツビー

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正月に仲の良い先輩後輩たちと集まって飲んだときの話題というのが「もう、すっかり枯れちゃたよねえ」ということでした。
それを寂しがる人もいたし、楽でいいという人もいたし、枯れるということが実感できないという元気な人もいたし、まあ、ある種の節目に立つ仲間の感想はさまざでした。

ギャツビーの物語は、枯れることなど想像もつかない若者たちの、あこがれと喪失の物語でした。人生に成功すること、愛を手に入れること。

若さはつらいものです。今、私たちの年齢から振り返ってみればなんでもないことに怒り、不必要な攻撃を仕掛け、みんなが傷ついてしまう。
悲しい結末が容易に予想され、ああ、もうそのへんでいいかげんにしておけよ、と何度つぶやいたか…

登場人物たちはそれぞれ深い傷を負って物語から退場します。彼らの若さがうらやましいというより、切ないです。
それから、訳者の春樹さんほどこの小説を堪能できない鑑賞能力のなさが少し悔しい。
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ホワイト・ライズ

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一目ぼれの相手が自分の友人を好きになってしまったら… 切ないです。
「恋に落ちてしまったら、ひとは信じられないようなことでもしてしまうの。正気を失ってしまうこともあるの」
アレックスにそう告げられても、マシューは彼女を許せないことでしょう。おかげで、彼とリサは「君の名は」を演じる羽目になったのですから。
でも、いいですか、マシュー君。君もまた、正気ではないことを犯した、という事実を忘れないでください。君はリサと再会して喜びの絶頂にあるだろうけれど、婚約者の気持ちを踏みにじった。彼女に非はひとつもないというのに…
被害者であるあなたたちには幸せに暮らしてほしいけれど、その結果、しかたないとはいえ、別な誰かを傷つけたということを忘れないでほしいのです。

いやあ、それにしても、すれ違いの連続で気をもませること! 「君の名は」が大人気を博したというのもうなずけますよ。

リメイクということですが、オリジナルの「アパートメント」も観てみたいものです。

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アダプテーション

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マルコヴィッチの穴は奇想天外で実におもしろかった。
同じ監督と脚本家のコンビで、しかも脚本家自身が主人公と聞いたら観ないわけにはいきません。

脚本が書けないと悩む脚本、というメタ・スクリプト(そんなことばあるのかな?)で、やっぱり普通には攻めてこないのですが、それよりなによりニコラス・ケイジの一人二役ぼやき男ぶりに拍手。
みんなに天才だといわれているのに、本人は、はげででぶな外見にげんなり、脚本作りにも支障を来してしまうのです。自信満々な男も嫌ですが、そこまでいじけなくて良いだろう、と突っ込みたくなる怪演技。

そうそう、クリス・クーパーの怪しさ加減は演技ではないのでは?
そしてメリル・ストリープ。女性ジャーナリストが取材対象に心奪われ、だんだん理性を失っていくさまはさすがです。
彼女が壊れていくに従って、脚本家カウフマン自らが嫌っていた「ハリウッド的」な展開に変わり、自ら否定していた「主人公が成長する物語」で終わらせてしまうところが一筋縄ではいかないところですね。

くわしくはこちら

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