Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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空中スキップ

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少しずれたバドニッツの世界。そこに引き込まれながら、妙になじみがあるな、と記憶をたぐると、そうだ、村上ワールドに雰囲気が似ているのでした。現実がどこかでねじれている世界。それをなにごともなく受け入れる登場人物たち。

村上ワールドから生還すると、解決できない疑問や、納得のいかないしこりが残ってしまうのですが、バドニッツのこの短編集はあっけらかんとした語り口で(翻訳の技ですね)、異常な出来事を異常と感じさせず、そんなこともあるよな、と納得させてしまうところが違います。

「カンガルー日和」や「夜のくもざる」が好きな人にはおすすめです。
世界は見た目どおりではないのです。

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幸せになるためのイタリア語講座

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評判通り、心に灯をともされる、おとなのためのおとぎ話なのでした。
イタリア語の市民講座に集まる男女は、それぞれ家庭や仕事に悩みを抱え、思うにまかせない人生に肩を落とし気味です。
取るに足りない日常のエピソードを重ねがら、かれらはすてきなハッピーエンドを迎えます。それは日々鬱々としながらも「イタリア語を習おう」と別な一歩を踏み出したごほうびだったのでしょう。
決して若くない彼らの恋する姿に勇気づけられます。

カーレンとフィンは大胆ですよ。
あなたは授業後の教室やベニスの小路で抱き合えますか? これは真似できないなあ、と思いつつも、あまりに嬉しそうなふたりの表情につい「そうそう、人目なんか気にするな」と応援したりして。
そして不器用でインポでさえないヨーゲンが、ついに愛しい人に手を握られたときの表情。今の気持ちを忘れずに、いつまでも幸せにと願わずにはいられませんでした。

詳しくはこちらで。
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中原の虹

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浅田次郎さん、あなたが大好きであります。
近代中国の歴史がこんなに興味深いものだったとは。
高校時代の世界史の授業は、この辺りを仕方ないとはいえ、2、3時間ですっとばしました。無味乾燥な事実の列挙の裏側にこれほど心震わせる「正義と良識」の物語が存在していたのですね。

悪評紛々たる西太后と袁世凱。不勉強にしてその実際がどうであったのかわからないのですが、この物語の中では国の礎となるため、「正義と良識」を実現させるために自ら国民の敵役を演じます。それだけでも鼻の奥がつんとするのに、このふたりに人間くささを与えてくれるものだから、独白部分にさしかかると涙を抑えることが出来ません(ああ、そして、張作霖の格好良さは別格)。

民に「没法子」と言わせないために、民の平安のみを勲とし、そのためにはどんな悪役でも演じ、どんな不遇にも屈しない志の高い人々を作ってくれたことに感謝します。
そして、この物語が「己の内なる長城を越えて中原を目指せ」というメッセージを含み、自分の身に置き換えられるように終わってくれたところが憎いです。

浅田さん、当然これで終わりではありませんよね。
張学良と溥儀の物語も決着しないことには、欲張りな読者は満足できないのです。少爺にも活躍してほしいし、今回影の薄かった孫文もこのままではないはずですよね? あまり待たせないでくださいね。

最後に勝手な想像です。袁世凱のことを、すごく楽しんでいじめていますよね。きっと浅田さんは袁世凱がいちばん好きなのではないでしょうか。あの極端な性格はご自身の投影のように感じられるのですが、どうなのでしょう。
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クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル



いまさらCCRを聴いたわけはツイン・ピークスなのでした。といっても物語とは無関係。「ツインピークス・ガイド」という洒落本の中に「RRダイナーのジュークボックス曲リスト」が載っていまして(誰の好みなんだろう?)、CCRが数曲リストアップ。そういえば「プラウド・メアリー」と「雨を見たかい」しか知らないなあ、と思い、急に興味がわいた次第。

中学生の頃に一度トライしたものの、当時ABBAやらウイングスやらオリビアが好みだったわたしには、泥臭くて取っつけなかったものです。
しかし、月日は流れ、Lucinda WilliamsやらGrace PotterやらPeter Wolfが好きになった身にはCCRがとても格好いい!
なんというか、彼らの熱が伝わってきます。ジョン・フォガティのシャウトするような歌い方は歌詞とあいまって、説得力に満ちています。
当時かれらはとても若かったはずなのに、すでに人生の真実をいくつも聴き手に届けていたとは驚く以外ありません。

心にしみるというのとは少し違うのかなあ。でも、とても共感できます。年齢を重ねてきたからこそ感じられる共感。
それは実際に手にとって眺められる実体があるようで実に不思議です。
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金比羅さんの若冲−新日曜美術館




金比羅さん。新潟からはあまりに遠く、唄と(こんぴら、ふね、ふね、おいてに帆かけて…)長い石段があるということが、わたしの知りうる全てでした。
美術の創造の場であったなんて、ただただ驚かされました。しかも応挙に若冲。

応挙の虎が実はねこをモデルにしていたとか。たしかに動きが愛らしいです。
そして若冲。「花丸図」に四面を囲まれた部屋は圧倒的でした。なんとも豪華であると同時に、溢れすぎる生命感に息苦しささえ覚えてしまいます。あの空間を一時でも好いから独り占めしてみたい(元の自分のままでは出てこられないような怖ろしい予感もします)。

技量が優れている作家は大勢いますが、若冲はなにが人を引きつけるのだろうと、いつも思っていました。最初はその精密さに驚かされるのですが、うまいだけではひとの足を留めさせることはできません。
花丸図には植物の朽ちてゆく姿も描れ、池内紀さんが無常観を示しているのでは、と感想を述べたところにその答えのひとつがあるのかもしれません。

うどんと金比羅さんの旅に出てみたくなりました。


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恋するフェルメール



本当に好きな人と向かい合ったとき、ひとは黙りこんでしまう。「あなたを愛しています」とは言わないものだ。フェルメールの前で沈黙してしまうのは作品を愛しているからなのだ、と有吉さんは記しています。
そうか、やっぱりそうなんだ。
わたしもフェルメールの絵には静けさを感じ、その絵のなにが心を引きつけるのだろうと考えていました。でも、ことばはなにも浮かばず、自分の鑑賞力のなさに暗澹としていたのですが、そうか、これは愛だったのか。
そうですよね、むだにことばを並べたからどうだというのでしょう。好きな絵の前でひたすら沈黙してしまえばいいのですね。
有吉さん、ありがとう。

12月17日まで東京に来ていますよね。
今回はどうしても都合がつかず、「愛する」人に会いにいけないのが残念です。

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ヴィノクロフ 現役を引退

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予想はしていましたが、またひとり偉大な選手を失ってしまいました。
不正に手を染めていたのかどうか、本当のところは分かりません。たとえ裁判で争ってどちらの結果が出ようとも、本人を含む全員が納得することはないでしょうし、ヴィノクロフはもう帰ってこないのです。
ファンを含め、関係者全てが納得できる合理的で明快な不正防止策を望みますし、また、スキャンダルに対するマスコミのおもしろ半分とも思える過剰な報道の自粛も望みます。ファンが純粋にレースを楽しめるようにしてほしいものです。

わたしはサイクル・ロードレースに興味を持ち始めてまだ6シーズン目で、それほど多くの選手を知っているわけではありません(とても覚えきれない)。けれどヴィノクロフは、その中で、もっとも熱い走りをした選手でした。人は本気になれば不可能に思えることも成し遂げることができるのだ、と勇気づけてくれました(セオリー無視の走りは楽しかったなあ)。
昨年のブエルタ17ステージと今年のツール13ステージ個人TTは一生忘れることのできないレースです。
ウルリッヒのようになんらかの形でレース界に係わってくれることを願ってやみません。


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堀文子−新日曜美術館




驚きつづけるためにはどうしたらいいか、病に倒れ、旅をあきらめた堀さんは病床でそのことを考えたといいます。
驚きつづける堀さんは実に若々しい。
常に死というものを視野に入れているから(それはまったく恐れるものではない)、生のさまざまな姿に魅せられ、興奮する。日々驚き、驚きを描くために忙しくてしかたないと。

花の作家として著名ですが、ミジンコはすごいなあ。これが気に入りました。微生物を描いた日本画家なんて他にいるかな? 蜘蛛の巣を美しいという感性も共感を持てます(わたしもしばしば写真に撮ったりするもので)。

坂田明、やっぱり来たな(坂田さんの顔を見るだけで嬉しくなってしまう。山下洋輔一味はなにをやらせても一流ですね)。ミジンコつながりとはいえ、年齢とジャンルを超えたつきあいができるのも驚きつづけたい堀さんならではなのでしょうね。

このあとは余談です。
えー、人生の大先輩の前で開けっぴろげに笑える檀ふみはすごいなと思いました。アトリエに招かれて、堀さんの先に立って中に入ってしまうんだけれど、こどもが好奇心を抑えられずにフライングしてしまったようで、ほほえましかった。
この人は基本的にだれと向き合っても対等でいたいんだろうな。善い意味でね。

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アバウト・ア・ボーイ

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終わった後で「あー、おもしろかった!」とにっこりできる映画っていいですね。可愛いプレゼントをもらったようなうれしい気持ちになります。

亡くなった父親の印税で仕事もせずにぶらぶら暮らすウィル。いじめられっこの小学生マーカス。ひょんなことから知り合ったふたりは、「人は支えが必要」「人は孤島ではない(ボン・ジョビ)」ということばを、どたばたなつきあいを通して実感していきます。そして予想どおりのハッピーエンドへなだれれこむわけですが、なんといってもヒュー・グラントの頭からっぽぶりがすばらしかった! 小学生と同レベルの世界観というか、小学生のまま図体だけでかくなってしまったウィルは終始マーカスのペースにのせられてしまい、そんな自分にげんなり。そのやるせない雰囲気が実に笑えました。皮肉に満ちた台詞がからっぽさをさらに強調して、最初から最後までにやにや。
あー、おもしろかった!
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ツイン・ピークス

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90年代初めの熱狂、思い出します。
リンチが監督ということで、一筋縄ではいかないドラマのはず、とそれはそれはみんなが夢中になって観たものです。私もすっかりはまった口で、映画はもちろん、関連本などにもことごとく手を出しました。チェリーパイも食べたし、ドーナツ屋にも通いましたよ。

登場人物たちのキャラクターがあまりにも個性的すぎ、端役が存在しません。全員なんらかの秘密をかかえ、心の闇に怯えています。
そのうち、ストーリー展開などはどうでもよくなり、登場人物たちの行動、発言そのものを楽しむ、という鑑賞方法に変わっていったのは私だけではないでしょう。

そして先月、ついに完全版DVDが発売。思いきって手に入れてしまいました(すばやく知らせるAmazonが憎い!)。
しばらくパッケージを眺め暮らして、昨日ようやくパイロット版を観ました。
おお、クーパー捜査官のおちゃめなこと。彼の物言いにすっかりあこがれ、真似したあほが大勢いたことを思い出す(Damn, fine cup of coffee.)。もちろんわたしもそのひとり。
登場人物の顔見せが終わったところで、これからが本番。今日から一話ずつじっくり楽しむことにします。
ドーナツを忘れないようにしなくては!

こんなサイトがありました。



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