Un gato lo vio −猫は見た

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月と六ペンス   サマセット・モーム

ゴーギャンをモデルにした物語ということで、発表当時大ベストセラーになったそうです。

 

美を創造するために全てをなげうったストリックランドの人生を知人である作家が回想するという構成のため、画家の美に対する価値観、創造の苦悩を読者が直接窺うことは叶いません。あくまでも、他人の目に映る破天荒な行動からその胸の内を察するほかないのです。没後に評価されなければ彼の情熱は簡単に忘れ去られたことでしょう。

 

むしろ最も丁寧に描かれていたのは、ストリックランドの才能を最初に発見した画家のストルーヴでした。彼は優れた審美眼を持ちながら絵の才能は凡庸に過ぎないというなかなか悲しい役柄。

 

どれほど邪険にされようと、利用されようと、ストリックランどを見捨てることはありません。果てに妻を奪われて激しく落ち込んでいるにもかかわらず、いつか二人が自分の下にもどれば喜んで迎え入れるつもりなのです。お人好しでは美を創造できないということなのでしょう。ストリックランドが月でストルーヴが六ペンスか。

 

今回最も印象に残ったのは中野好夫さんの訳文でした。奥付の初版日付は昭和34年。ということは、おそらく昭和30年代初めの仕事だと思われますが、実にこなれた訳文でいきいきとしていた。最近は改訳が流行りだけれど、これはこのまま現代でも違和感が無い。いや、すばらしい仕事です。

 

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