Un gato lo vio −猫は見た

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ベロニカとの記憶

何事にも煩わされることなく老後を過ごしたいと思っているトニー。ある日、大学時代に付き合っていたベロニカの母から遺言状が届き、そこにはトニーの親友だったエイドリアンの日記と現金500ポンドを遺すと記されていました。ところが、その日記は娘が焼却処分。かつての恋人にその理由を追及するうち、トニーは封印していた過去の記憶と向き合うことになってしまう。

人は自分の都合に合わせて記憶をねつ造する。どこかで聞いた話だなと思っていたら、原作はジュリアン・バーンズの「終わりの感覚」でした。精緻な工芸品のような構成に舌を巻き、私自身の苦い記憶を呼び覚まされたことが強く印象に残っています。

映画では若干設定が変えられ、過去のおぞましい記憶を掘り返したトニーが他人の気持ちを斟酌できるようになるという結末を迎えています。その重要な役割を果たしているのはシングルマザーになることを決意している娘のスージー。

父の告白を聞きながら出産の時を迎えてしまう彼女は、不安を鎮めるために「握って」と言ってトニーに手を差し出します。しかし、差し出された手は心が千々に乱れて混乱する父をつなぎ止めるものだった。私の目にはそう映りました。娘の手を握らなかったら、おそらくトニーは現実世界に留まれなかったはず。彼女はこの映画の影のMVPでした。

エイドリアンが自ら命を絶つ理由、その原因となったはずの母娘の葛藤を深掘りするという展開もありだったと思いますが、そちらは小説でどうぞ。

 

映画サイトはこちら。

 

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