刺青
男を次々と喰い物にしていくお艶(染吉)の姿は、最近読んだ「ダブル・ファンタジー」の奈津を思い出させますが、奈津が自由の獲得を目指していたのに対して、お艶はただただ、自己破滅的。敢えて問われれば、「自分をこんな女にした男達に復讐するため」というのですから凄みが違う。
なにしろ、映画に込められた熱気がすごい。同じ増村監督が後年に撮った「盲獣」は火傷必至の灼熱でしたけれど、この「刺青」もかなりのもの。見ている者を否応なく妖しい世界に引きずり込んでしまいます。自分までお艶に溺れてしまい、もう二度と浮かび上がれなくなるような空恐ろしさがなんとも……
若尾文子という名前は私たち世代にとって既に過去のものでしたが、これを見て感じたのは圧倒的な存在感。当時、30歳そこそこでありながら、人生の辛酸をなめ尽くした女の執念をあれほど体現できるのですから、他の作品にも興味が湧いてきました。
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この記事に対するコメント
おかげでダブルファンタジーも読んでみました。作品そのものの善し悪しの感覚は人によるのでしょうが、自分の中にある漠然としたものを進めくれたような気がして、ありがたかったです。
子供の頃「ザ・ガードマン」が始まると何かこわいような気がしていましたが、増村監督が脚本を書いていらしたんだ!
別件、今回の展覧会でプライスさんが来日されたのだそうですね。いいなー、西の方にも来て欲しかったなぁ。たのしい記事をつぎつぎご馳走になりありがとうございます。長々失礼しました。
「ザ・ガードマン」って増村監督が関わっていたんですか。
確かにあの番組は独特な雰囲気がありましたよね(後に宇津井健が山口百恵の赤いシリーズに登場したときは違和感あったなあ)。
新藤兼人といい、増村保造といい脚本も監督も職人技ですよね。あの頃の映画人はパワーがみなぎっていますね。
若冲を含む一連の江戸絵画は本当に見応えがありました。福島まで少々遠いのですが、出かけて良かった。
「果蔬涅槃図」は京都国立博物館からのレンタルでしたよ。