Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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マネ 日曜美術館

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マネは私にとって理屈抜きに訴えかけてくる作家です。
描かれる人物の視線にどうしても抗うことができないのです。

初めて「鉄道」を目にしたとき、読みさしの本からふと顔を上げた若い母親の表情に心を奪われ、いつまでも立ち去ることができませんでした。
「あら、こんにちは」と挨拶された私は、そうです、一目惚れしてしまったのです。


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「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」も同様。
よく見ると目の焦点が合っていないような表情なのですが、その視線は私の心の底を見通しているようで、蛇(というには美しすぎますが)に睨まれた蛙状態でその場に立ちつくしてしまうことになりました。

マネもまた制約だらけの古典的な世界に疑問を感じ、発展を遂げ始めたパリで新たな題材、新たな手法を模索していたと知り、作品を見る楽しみが広がったように感じます。
写真を意識していたのだろうということですが、なるほど、一瞬の姿の中に真理、あるいは美を見いだそうとする手法は写真的ですね。

ゲスト、イッセー尾形の妄想はなかなか楽しかった。
描かれた人物たちの心の内を勝手に想像して楽しんでいるのですが(うちの妹もここに就職したいって言ってるけど、どうなのかなあ)、姜さん的にはちょっとついて行けないらしく、笑みがこわばっていました。

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ベラスケス 日曜美術館



絵画の前に立つとき、何の予備知識もなしに無心に向き合った方がいいのか、それとも作家の生涯や物の考え方を知った上で向き合った方がいいのか。
少し悩ましい問題なのですが、ベラスケスについて言えば、その出自と嘘をつき通したという事実が絵画の見方をより多面的にしてくれたと思います。

中世ヨーロッパにおいて弱者をモデルに選び、そしてその内面を恐ろしいまでに描ききった動機が自分の出自のせいだったかもしれないなんて、目から鱗。
そう思うと確かに得心がいくし、モデルはもちろんベラスケス本人にも愛おしさが募るのでした。

セバスティアン・デ・モーラの肖像を数年前に見る機会がありました。
気高い精神を映し出すその表情は予備知識がなくても人の心を揺さぶるものでしたが、新しい事実を知ったことでどのように見えるのか、また向かい合ってみたいものです。
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若冲 日曜美術館


西のアイドルがフェルメールで、そして東のアイドルが若冲。
もうなんだか、名前を聞いただけでそわそわ。
今日もテレビの前に釘付けなのでした。

スーパーリアリストかと思いきや、最近発見された象と鯨の屏風のような、おおらかな絵も描いていたのですね。
懐が深いなあ。

絵画や写真の楽しみの1つは、作者の世界観を知ることにあると思うのです。彼らの目に世の中は、どのように映っているのか。

若冲の楽しさは発見の驚きですよね。
「うわあ、すごい」と言いながら生き物たちをつぶさに観察する姿が目に浮かぶようです。
若冲のように驚きを持って世界を眺め続けたいものです。

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大地の芸術祭 日曜美術館



新潟県の十日町市と津南町で開催されている「大地の芸術祭」。今年で4回目だそうですが、意外に地元の催し物には無関心だったりして、反省しています。

今回の番組で驚いてしまったのが、作品作りに地元の人たちが参加していることでした。老いも若きも、みんな実に楽しそうに「労働」しています。そして作品作りに関わったことを誇りに感じているようでした。

これってある種の「工房」制度と言えなくもないですよね。今のところ参加者に本格的な専門技術があるわけではないけれど、もし、地元の人たちがそれを身につけたら、この地域は大規模な「芸術作品製作工房」として成り立つのでは…

この芸術祭では毎日どこかでおにぎりがふるまわれています。
おにぎりは無料、でもお礼は必要。

姜さんの返礼は、なななんと歌でありました。
おせじにもうまいとは言えないのですが、まったく照れた風もなく、とつとつと歌う姿を見て少し見直してしまいました。
ということで本日から、このカテゴリーのサブタイトルは「本日の姜さん」なのであります。

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犬塚 勉  日曜美術館


「水が描けない、もう一度水を見てくる」
犬塚さんはそう言い残して谷川岳に入り、亡くなったそうです。

芸術家を配偶者に選ぶというのは、なかなか辛いものですね。
奥さんは犬塚さんに「命をかけてまで追求しなければならないものなのか」と問いかけました。すべてを犠牲にしてもかまわない。美の追究が最優先するというのがその返答でした。

そんな芸術家としての配偶者を尊敬する一方で、彼の中で最優先にされない自分とはなんだろう、そう己の心に問いかけたこともあったと思うのです。
描きあがった作品に嫉妬したこともあったかもしれません。

そんなエピソードを知ってしまうと、絵を見るたび心がざわついてしまいます。
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