Un gato lo vio −猫は見た

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ばらの騎士   リヒャルト・シュトラウス

1994年ウィーン国立歌劇場、カルロス・クライバー指揮

 

好色なおっさんをこらしめ、時の移ろいの残酷さを実感し始めた女性の引き際を称賛するストーリーは「フィガロの結婚」とコレット「シェリ」を融合したよう。中年女性のしたたかさと若者の無邪気さの対比が楽しく、あっという間の3時間でした。

 

存在感の大きさは元帥夫人がいちばんでしょう。夫の不在中に17歳の伯爵オクタヴィアンを引き入れて恋愛遊戯に耽ります。うっかり漏らした言葉によれば、これまでにも若い男を取っ替え引っ替えしていた様子。どうやら自らの衰えを自覚したが故のあせりのようです。

 

彼女が見事だったのは、若い男が若い娘に走るのは必然であると理解しており、情事に執着しなかったこと。好色な従兄オックス男爵の結婚話と彼のオクタヴィアンへの執着を利用して捨てられる前に自ら退いてしまう姿は、以前から引き際のタイミングを窺っていたとしか思えません。オックスの婚約相手と恋に落ちたオクタヴィアンに対して、若い人同士でお幸せにね、なんて格好良すぎでしょう。

 

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Big Yellow Taxi   ジョニ・ミッチェル

「ローレル・キャニオン」つながりでもうひとつ。映画の中で主役の一人ジョニ・ミッチェルの「Big Yellow Taxi」が流れていました。なるほど、あそこで暮らしていた時に作った曲だったのか。で、Big Yellow Taxiとはなんぞや? と調べてみたら1996年のインタビュー記事にたどり着き、ふむふむと得心した次第。

 

この曲は初めてハワイを訪れたときの印象がきっかけ。ホテルで目覚めて外を眺めると木々の生い茂ったい山が遠くに美しくそびえていたけれど、反対側を見下ろすと端から端まで駐車場。こうしてパラダイスが破壊されていくのかと悲しくなったのだとか。「パラダイスは舗装されて駐車場ができた」という歌詞は、実際には著名人の集まるハリウッドのホテルによる駐車場整備を指しているそうです。

 

「(開発に伴って)伐採された木々は樹木博物館に移され、人々は緑を楽しむために入場料を払わなければならない」。この歌詞はワイキキにある植物園「フォスター・ガーデン」に触発されたそうです。また、当時のハリウッドは大型ショッピングセンター開発のためにレッドウッドの森が伐採の危機にあり、保存を求める人たちと業者が争っていたとか。

 

当たり前だと思っていることがいつまでも続くとは限らない。美しい自然(old man)もある日突然黄色い巨大な重機(Big Yellow Taxi)に押しつぶされてしまう。失って初めてその尊さを知るのは人の世の常ですが、異議を声高に発する若者の情熱は失われずにいてほしいものです。

 

それにしても、ジョニ・ミッチェル公式サイトの充実ぶりはすごすぎる! 数フレーズだけとはいえ全アルバムを無料で聞くこともできるし(歌詞も完備)、彼女に関する文献を充実させたアーカイブも圧倒的。ファンの要望に最大限応えようとするサービス精神に脱帽です。

 

 

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後宮からの誘拐   シュツットガルト州立歌劇場収録(1998年)

モーツァルトのオペラの中では最も好きな作品。ですが、舞台の様子を見たのはこれが初めて。ハンス・ノイエンフェルスの演出がユニークで(台詞部分は同じ出で立ちの俳優が担当。二人一役)、年の初めにふさわしく楽しい気分に浸りました。

 

オペラの楽しみは落語と同じで、演出次第でどのような物語にもなり得ること。この舞台はトルコの太守で誘拐された女性たちの愛を強要するセリムが、実はいちばん度量が大きい人物でした。彼を悪人扱いした4人さん、人を見る目と正直さが大切でしたね。

 

タイトル訳は昔ながらの「後宮からの逃走」の方がしっくりすると思うけど。

 

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テオドール・クルレンツィス   「悲壮」と「ドン・ジョバンニ」

うわっ、こんな「悲壮」今まで聞いたことがない! 音楽について適切に語る素養がないことが残念です。いや、とにかく衝撃的だった。

 

余韻あるいは情感を徹底的に排除しているように感じます。そして、独特な間やイントネーション。心地良い音楽を目指しているのではないことは明らか。気持がざわざわとしてきますが、それは決して嫌なものではありません。

 

まだクラシック音楽にこれほど独特な解釈が可能なのだという純粋な驚き。ここまでやっていいのか、いやもっとやってくれと叫びたくなりますね。他の曲ももっと聴きたい。

 

ということで、次に聴いたのが「ドン・ジョバンニ」。なんなのだこのアリアは。予期せぬ状況に遭遇した人物の感情が歌の域を超えて伝わってくるじゃないですか。彼らの苦悩、喜びが舞台上の架空の出来事ではなくリアルなものとして感じられますよ。こりゃ凄い。中毒になりそうだ……

 

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クラシック音楽館 いまよみがえる伝説の名演奏・名舞台

保管されていた35mmフィルムを8K・22chでデジタルリマスター化した演奏を観ました(2か月前の話ですが)。うちのテレビは通常のHDで外部スピーカーもモノラルなので本当の美しさは体験できないわけなのですが、それでもデジタル化された当時の映像を十分堪能できました。


特に1974年に収録されたカラヤン/ベルリンフィルのチャイコフスキーは素晴らしかった。カメラの位置ごとに絞りやレンズの長さを変え、時にソフトフォーカスを用いる凝りよう。カラヤン本人やフォーカスする演奏者/楽器が逆光で捉えられ、まるで後光が射すかのような神々しさです。

 

そして、フィルムの滑らかさとデジタルの鮮明さが両立していることに新鮮な驚きを感じました。聞き慣れたカラヤンの4番が全く新しい映像作品として楽しめるなんて。この番組、8kテレビ購入のキラーコンテンツだなあ。

 

そうそう、放送された第1楽章の中でカラヤンは終始瞼を伏せたままで、改めてよく見ると天才・柳沢教授そのものだった。

 

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Bad Moon Rising   妄想訳その2

さらにもう一つ妄想訳を。この楽曲が発表されたのは核戦争が今よりリアルに感じられた時代。字面通りに読めば反核の歌とも読み取れるような。
 

ということで妄想訳その2。

イントロの前にラジオから次のようなアナウンスが流れたと想像してください。

 

「緊急事態宣言の発令です。
敵国が核ミサイルを発射しました。
我が国もすぐさま応戦し……」


見ろよ、月が怪しいぞ
とんでもないことになっちまった
大地が揺れ稲妻が走っている
最悪の事態が起きてしまった

 

今夜は家にこもっていな
外に出たら命とりだ
月が怪しく輝いている

 

強風が吹いてきたな
もうこの世の終わりさ
川もあふれ出すだろう
怒りと破滅の音が満ちている

 

身辺整理をしようぜ
いつ死んだっておかしくない
破滅に向かう戦争が始まったんだからな
やられたらやり返せってよ

 

今夜は家にこもっていな
外に出たら命とりだ
月が怪しく輝いている

 

ジョン・フォガティお元気で何よりです。
家族による演奏楽しく見ています。

 

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Bad Moon Rising   妄想訳その1

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)の軽快なこの曲大好きです。気分がいい時にはついつい口ずさんでしまします。


ただ、ポップな曲調と「Bad Moon Rising」という不穏な言葉の組み合わせに長い間違和感を感じていて、いったいどういう歌詞なんだろうと改めて調べた次第。いろんな人の訳詞を参考にさせてもらったのだけれど、どれも暗い未来を予言する内容で、今一つ腑に落ちない。そこで、そういえばと思い出したのが「Baby, It's Cold Outside」という曲。帰りたがる相手を外は寒いからと引き留める内容です。


そうだ、もしかすると、Bad Moon Risingは浮気がばれて愛想尽かしを喰らった男が出て行こうとする彼女を引き止めようとしているのでは? ということで以下に妄想訳です(英語歌詞はこちらを)

 

Bad Moon Rising


ほら月も怪しい雰囲気だし
良くないことが起きそうだよ
地震が起きるかもしれないし雷が落ちるかも
今日は次から次へと変なことばかりさ

 

だから今夜は出て行かない方がいいよ
危ないったらありゃしない
ほら月が怪しいだろう

 

嵐が近づいてきた
もうこの世の終わりさ
川も溢れるんじゃないか
すさまじい音が聞こえるよ

 

もう荷物もまとめたのかい
僕なしで生きていくって決めたのかい
確かに僕らの雰囲気は最悪だけどさ
まいったなあ、目には目をってことなの?

 

今夜は出て行かない方がいいよ
危ないったらありゃしない
ほら月が怪しいだろう

 

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東響 第105回新潟定期演奏会

今回のお目当てはプロコフィエフ2曲。交響曲とピアノ協奏曲のそれぞれ第1番です。
前者は活気に満ちた雰囲気と第3楽章の可愛らしさが、後者は軽やかさとピアノの技巧を楽しめる点で共にお気に入り。楽しみにしていました。

ガヴリリュクさん(発音難しいなあ)のピアノは初めて聞きました。ダイナミックに鍵盤に向かっていましたが、目から入る印象とは異なる透明感の高い音。聴かせどころをしっかり押さえていて、特にアンコールの「キエフの大門」では感情を揺さぶられ、ラストで目頭が熱くなるのを抑えられませんでした。
後半に演奏されたラヴェルのオーケストラ版より曲の広がりを感じさせる演奏だったように思います。

最後に飯森さんから大雪のお見舞いと、次回も来場お願いしますねというリクエストをいただきました。
いやあ、気持ちの良い年の初めとなりました。インフルエンザもらってしまったけど。

 

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NHK交響楽団 新潟公演(1月7日)

年の初めにふさわしく、明るく活気に満ちたプログラム。「フィガロの結婚」序曲は、これから1年、楽しいことが待っていますよ、と告げているようでしたし、「ピアノ協奏曲第9番」では、ソロ部分で小曽根さんがまさかのジャジーなアレンジ。体が揺れ始めてしまいました。これを聴いたらモーツァルトも喜びそうです。

「新世界より」では弦楽器に圧倒されました。バイオリンの華やかな旋律とそれを支える中低音の厚みが圧倒的。聞き惚れてしまいました。
聴かせどころたっぷりのホルンもかっこええ。一緒に出かけたトランペット吹きは「ホルンに変えようかな」とつぶやいておりました。

アンコールの「ピツィカート・ポルカ」は指揮の広上さん曰く「お年玉」とのこと。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートではおなじみの曲。新年らしく楽しかった。

 

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チケット運に泣いた東響第96回新潟定演

リスト、ショパン、ラフマニノフのピアノ協奏曲を一度に楽しめるプログラムと聞いては出かけないわけにいきません。なにしろ、この型式を偏愛しているもので。
ところが、チケット予約で後れを取ってしまい、確保できたのは3階のステージ脇。音響大丈夫かな、と若干の不安を覚えたまま演奏会に臨んだのですが…

果たして、不安的中。
指揮者とピアニストの表情が見えるのは良しとしても、肝心の音が届いてこないじゃないかあ。隣の会場の演奏を聞いているような、ガラス1枚隔てた向こうの演奏を聞いているような、なんともやるせない状況で、(手摺りも邪魔で)全く集中できませんでした。特にピアノが聞こえなくて、これはひどすぎる。

演奏後の大喝采から察するに、なかなか出来の良い演奏だったようで、悔しさ倍増です。やはり座席は重要だと思い知らされた夏の夜でした。

 

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