Un gato lo vio −猫は見た

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「ハマスホイとデンマーク絵画」展   東京都美術館

日本初公開時に美術番組で取り上げられ、その静かなたたずまいにすっかり魅了されたのが8年前(あの時は「ハンマースホイ」だった)。この度の再登場では40点近い作品が並ぶということでいそいそと出かけてまいりました。


正直なところ、以前テレビ画面で目にした時のような魅力は感じませんでした。印象派の活躍期と重なる時期に絵筆を握っていますが、新しい世界の見方、あるいは新しい表現方法ではなく、デザインの美しさ・面白さを追求する画家だったようです。モデルとして頻繁に登場する妻もデザイン要素に過ぎず、伝統的な絵画ファンよりグラフィックデザイナーに受けそうな印象を受けました。


私個人としては「スケーイン派」と呼ばれるハマスホイと同時代の画家たちの作品が好み。彼らは北海に面した最果ての地とそこに暮らす人々に魅了され、素朴に力強く暮らす人間の魅力をドラマチックに伝えようとしています。若干やりすぎの感はあるけれど、画家たちの感動が鑑賞者の私にも確かに伝わってきました。


うっすらとクリーム色がかったロイヤルコペンハーゲンのパンチボウルは一見の価値ありです。ハマスホイが描いた時点で100年前のアンティークだったとか。

 

公式サイトはこちら

 

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上村松園と美人画の世界

画集から受ける印象とこれほど違うものなのか。鼻先がつくほど近づいて見ることができた今回の松園作品は実に衝撃的。決定的な差は力強さでした。

 

これは印刷物やテレビ画面からは決して伝わらないものでしょう。そこには自ら抱く理想像を完璧に表現したいという画家の意思が今もありありと残っているように感じました。以前観たピカソにも劣らない熱量です。

 

鮮やかに広がる色の面の強烈さと、それを取り囲む力強くも柔らかな線の組み合わせが絶妙でした。立体的な絞り模様、髪が透けて見える櫛の透明感、襦袢の白い襟に浮かび上がる地紋、そして髪の生え際の美しさ。見ていて飽きるということがありません。画布に向かっている松園の姿すら浮かび上がってきて、いつまでも立ち去ることができませんでした。

 

「蛍」「砧」「夕べ」などは、こんなに大きな作品だったのかとびっくり。ほぼ等身大かそれ以上に描かれていて、静かな迫力に満ちています。穏やかな表情は菩薩のようにも感じられ、美人画というより仏画のようでもありました。「芸術を以て人を済度したい」と願った松園の面目躍如ではないでしょうか。

 

1階のカフェでは松園作品にちなんだ和菓子を楽しむことができます。もうちょっと落ち着いた場所だと良かったなあ。

 

山種美術館で3月1日まで

 

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野口哲哉展 鎧の中で−富山編−

哀愁を帯びた表情の武者たち。おお、なんだこれは! 樹脂を用いたフィギュアと古びた味わいの絵画に一瞬で心を奪われてしまいました。

 

どちらも鎧兜姿の人物に現代のモノを組み合わせているところが共通で、これが何ともユニーク。最も分かりやすい特徴です。これを見て顔がほころばないわけがない。

 

そして驚くのは小さな人物たちの表情です。うわあ、この人達生きてる。体温すら感じるじゃないか。

 

彼らは姿形こそ武者ですが、浮かべる表情、漂わせる雰囲気は今を生きる私達と何も変わらない。仕事に疲れて放心したり、音楽に恍惚としたり、失敗に落ち込んだり、叶わぬ夢を夢見たり。だからこそ一層リアルさが際立つように感じます。

 

何はともあれ、作品の前に立って驚いてください。写真撮影もOKです。

 

 

 

 

 

8月25日まで富山市森記念秋水美術館で開催中。

 

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クリムト展   東京都美術館

金を使った一連の作品が今ひとつ自分の好みと合わなくて敬して遠ざけていたクリムト作品でしたが、機会があったので展覧会に足を運んでみました。

 

ジャポニズムの影響が大きいという金彩は印刷物と実物ではまるで印象が異なりました。照明を受けてきらびやかに輝く作品はむしろ清々しく、なんの嫌味も感じることなく私の目に映りました。

 

じっくり鑑賞して初めて気づいたのは、本画もデッサンも線がずいぶんゆっくりと引かれていること。特に「ユディト機廚稜愀覆防舛れた黒い線は太くいびつで、へたうま的な印象です。線は勢いがあるべきという日本画的常識とはずいぶん違いますね。

 

数多のモデル達と関係を持っていたと聞き、好色絶倫男だったのかと想像していました。でも、多くの作品の中で小さくて可愛らしい細部が丹念に描かれていて、もしかしたらクリムトっていわゆる「女子力」の高い人だったのではないかと感じた次第。

 

そう思えば、作品の女性像も男性が好む女性像というよりも、どちらかと言えば女性が理想として描くような姿に思えます。多くの女性達に取り囲まれたのも、女子同士のような気楽さが理由だったのかも知れないと妄想するのでした。

家に飾りたいなと思ったのは6歳の姪を描いた「へレーネ・クリムトの肖像」。清楚な横顔、少女らしい健康的な肌色に惹かれます。

 

東京都美術館は7月10日まで。

 

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ピカソ 版画をめぐる冒険 フランス国立図書館版画コレクション

フランス国立図書館が所蔵する約100点の版画作品。新しい表現形態を模索し続けたその足跡を確認できるボリュームたっぷりの展覧会でした。

 

いやあ、版画でもピカソの熱量は高いなあ。芸術面でも生活面でも現状に飽くことを知らず、常に前進しなければ気が済まない人だったんでしょうね。表現様式の多様さはもちろんのこと、関係した女性の数の多さからもそのことがうかがえます。妻・恋人たちの肖像だけでも何人分あった事か。途中で数えるのをやめちゃいました。70代で子供をもうけるなんて、並の熱量では無理、無理。

 

展覧会に行くと、自宅に持って帰るならどれだろう、といつも品定めしてしまいます。今展では「フランソワーズ・ジロー」の肖像が気に入りました。単純な黒い線だけで描写された画面いっぱいの顔。ぱっちりしたお目々の彼女が放つ明るく温かなエネルギーがあれば、寒い新潟の冬を乗り切れそうな気がしたもので。

 

そして、おまけも。ピカソが影響を受けた画家の作品も数点展示されています。なんと、大好きなゴヤのオリジナル版画を2点(共に闘牛)を楽しむことができました。思いがけないプレゼントみたいで嬉しかった。陰鬱な内面を現す表情とリアルな生命感を感じる手の表現に惹かれるんだなあ。

 

ピカソ展は新潟市美術館で12月16日まで。

 

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リサ・ラーソン展

赤い太縞ねこのマイキー君でおなじみ、リサ・ラーソンの展覧会にお邪魔しました。入り口をくぐるや、愛らしいキャラクターたちに迎えられ、思わず笑みが浮かんでしまいます。

 

初期から最近に至る陶芸作品をテーマごとに展示していて、あちらこちらから「可愛い」「あったかい雰囲気だね」といった声が聞こえてきます。動物も人物も丸みを帯びたフォルムは実際になんとも可愛らしく、思わず手に取ってしまいそうになりました。

 

ラーソンさんは50年代から日本の陶芸に興味をもっていたそうで、なるほど、日本人の感覚にすんなりと溶け込む色合いの作品も多かった。

一つのフォルムの中に複数の人物(家族やカップル)を融合した作品はユニークでした。家族と一緒ならそれだけで何もしなくていい、という彼女の考えがそのまま形になったように感じます。

 

陶芸作品の展示ブース外に彼女が手編みしたセーター、ミトン、ベビー服などが飾られていて、これがまた思いがけず楽しかった。網目の一つひとつからラーソンさんの想いが伝わってくるようで、その存在をリアルに感じ取ることが出来ます。渋めの色使いのセーター、着て帰りたかったなあ。

 

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足立美術館所蔵 横山大観と近代日本画名品展

大観の画歴を俯瞰する22点は質量ともに見応えがあり、特に、ポスターに用いられた六曲一双の大作「神州第一峰」は雄大さと張り詰めた緊張感に圧倒され、荘厳な雰囲気に畏怖の念さえ覚えてしまいます。「霊峰夏不二」で青い富士山を取りまく雲の描写にも目が釘付け。

個人的に楽しみにしていたのは東西の美人画対決です。鏑木清方の描く凛とした女性、上村松園のやわらかな女性、この2人の作品が並んでいるところを見たかったのです。
清方は男の求める理想像、松園は女性の願望像を描いているように感じました。
私は松園の方が好みだな。

もう1人の美人画家、伊東深水のハイカラな女性に朝丘雪路を想像するのはうがち過ぎですかねえ。

色彩の鮮やかさとデザイン性にはっとしたのが小林古径の「木蓮」。早春の野に燃え立つ生命そのものを見たようで、しばらく立ち去ることができなかった。

展示される作品点数も適量で、全てをゆっくり鑑賞してもぐったりすることはありませんでした。優雅な午後のひとときでした。

新潟市新津美術館で5月20日迄

 

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小倉遊亀展

美術展に出かけて感銘を受ける作品は数多くあるものの、実際にその絵を自室に飾ってみたいかと問われると、是非にもと思うことは意外に少ないものです。サイズの問題もさることながら、題材によっては部屋が陰気になりそうだし(ゴヤの黒いシリーズに囲まれたら人間不信になるな)、作家のパワーが溢れすぎる作品も疲れそうです。

私にとって小倉遊亀はその点で希有な画家でして、美術館で気に入った作品をそのまま自室に持ち帰れたらなあ、といつもため息をついてしまいます。

今回の展覧会で持ち帰りたいと思ったのは、素早い線と人物の柔和な目元に心が和む「夏の客」、105歳の絶筆ながら力強く色彩にあふれる「盛花」、1950年代の小津映画に出てきそうな闊達な女性を描いた「娘」でした。

小倉さんは、生きとし生けるもの全てが仏と考えていたようで、なるほど、人を見る目が優しいと感じます。一方、静物画は対象物の美しさをそのまま描くのではなく、強調して、あるいはより効果的に見えるように再構築、デフォルメするという、自由で軽やかな精神に溢れています。

売店で画集や絵はがきを手に取ってみたものの、やはり実物を見た直後では受ける印象の落差にがっかりして購入に至らず。
せいぜい、会期中に何度も足を運ぼうと思うのでした。

新潟市美術館で6月10日迄楽しめます。

 

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レオナール・フジタとモデルたち

4人の妻(!)と愛人を描いた作品を中心とした展覧会です。年代順に関わりのあった女性たちの姿が並び、藤田の人生を辿ると共に、技法の変遷も確認できる内容でした。

最初の妻を描いた作品は当時の人気作家の影響を様々に受けているようで、模索する様子が興味深かった。
いちばん惹かれたのは2度目の妻ユキと暮らしていた頃の作品群でした。模索の末に進む道を見つけたとでもいうような喜びと若い情熱が眩しいです。

藤田の特徴は乳白色の肌と言われますが、それ以外にも瞳が特徴的だと感じていました。今回展示されていた中では、自画像と後期の色彩豊かな一部作品を除いて基本的に同じ描き方に見えました。それだけを見ているとガラス玉のようで生気を感じないのですが、それを取り囲む瞼、陰翳などが加わると、そこが肖像の核心であるかのように感じるから不思議です。

最後の妻のために自ら手作りしたという飾り箱、皿、ワインカップなども展示されていて、これがなかなか良かった。愛情が感じられる素朴な品々ですが、さすがに画伯ならではの絵付け。こんなの欲しい、と思ったらショップにレプリカの小皿5枚組が並んでいるじゃありませんか。しかも箱入りで。うーん、どうしよう。開期末まで悩みそうだ……

 

新潟県立万代島美術館で9月3日まで

 

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吉田博展 上田市立美術館

ここ半年ほど雑誌やテレビなどで目にする機会が多く、どうにも気になって仕方なかった吉田博の展覧会へ出かけました。

日曜美術館は版画を中心にした紹介でしたが、実際には「日本人にしか描けない洋画」を目指し、幅広い制作活動を行っていたとのこと。
独特な技法と色使いの木版画はもとより、初期の水彩画にも強い印象を覚えました。その場の空気や湿度を感じさせる表現が見事です。

デッサンも素晴らしい。常に持ち歩いていたというスケッチブックにあふれる自然描写は素早い筆の動きにもかかわらず、非常に克明です。画家がその場で感じた感動が伝わってきますねえ。

国内で作品が評価されず、それならばと海を渡ってアメリカの美術館に自らを売り込んだのだとか。叙情的な作品とは対照的な情熱的・行動的な性格だったということがなお、この画家に対する興味をかき立てます。

 

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