Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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レオナール・フジタとモデルたち

4人の妻(!)と愛人を描いた作品を中心とした展覧会です。年代順に関わりのあった女性たちの姿が並び、藤田の人生を辿ると共に、技法の変遷も確認できる内容でした。

最初の妻を描いた作品は当時の人気作家の影響を様々に受けているようで、模索する様子が興味深かった。
いちばん惹かれたのは2度目の妻ユキと暮らしていた頃の作品群でした。模索の末に進む道を見つけたとでもいうような喜びと若い情熱が眩しいです。

藤田の特徴は乳白色の肌と言われますが、それ以外にも瞳が特徴的だと感じていました。今回展示されていた中では、自画像と後期の色彩豊かな一部作品を除いて基本的に同じ描き方に見えました。それだけを見ているとガラス玉のようで生気を感じないのですが、それを取り囲む瞼、陰翳などが加わると、そこが肖像の核心であるかのように感じるから不思議です。

最後の妻のために自ら手作りしたという飾り箱、皿、ワインカップなども展示されていて、これがなかなか良かった。愛情が感じられる素朴な品々ですが、さすがに画伯ならではの絵付け。こんなの欲しい、と思ったらショップにレプリカの小皿5枚組が並んでいるじゃありませんか。しかも箱入りで。うーん、どうしよう。開期末まで悩みそうだ……

 

新潟県立万代島美術館で9月3日まで

 

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吉田博展 上田市立美術館

ここ半年ほど雑誌やテレビなどで目にする機会が多く、どうにも気になって仕方なかった吉田博の展覧会へ出かけました。

日曜美術館は版画を中心にした紹介でしたが、実際には「日本人にしか描けない洋画」を目指し、幅広い制作活動を行っていたとのこと。
独特な技法と色使いの木版画はもとより、初期の水彩画にも強い印象を覚えました。その場の空気や湿度を感じさせる表現が見事です。

デッサンも素晴らしい。常に持ち歩いていたというスケッチブックにあふれる自然描写は素早い筆の動きにもかかわらず、非常に克明です。画家がその場で感じた感動が伝わってきますねえ。

国内で作品が評価されず、それならばと海を渡ってアメリカの美術館に自らを売り込んだのだとか。叙情的な作品とは対照的な情熱的・行動的な性格だったということがなお、この画家に対する興味をかき立てます。

 

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デトロイト美術館展

この冬の東京はおもしろそうな美術展が多く、特に上野はすごいことになっています。あれも見たいこれも見たいと悩みつつも、混雑は嫌、ということで、今回は比較的落ち着いて鑑賞できそうな「デトロイト美術館展」に足を向けました。

いやいや、予想していたより充実のラインナップ。展示されている作品は巨匠の代表作ばかりで、さまざまな媒体でお馴染みのもの。豪華幕の内弁当を手にしたような喜びが湧き上がってくるのでした。デトロイトが自動車で繁栄していたおかげで、これだけの作品を収集できたのですね。

圧倒されたのはピカソの時代別代表作。中でも「読書する女性」と「座る女性」が発するパワーは凄まじかった。ライブコンサートでは音が実態あるものとして押し寄せてきますが、この2点も同様でした。この絵画を創作した作家の強烈な意志がまだそこに留まっていて、それが鑑賞者に放射されている、そんな感じなのです。目にした瞬間に引き込まれてしまいます。でも、対峙するにはそれなりの力が必要なのでした。

好き嫌い、あるいは実際に手元に置きたいか否かという問題は別。己の想像の範囲を超えた荘厳な力の前に、ただただひれ伏すほかに術はなかった。こんなの初めての体験です。

まあ、それはそれとして、自宅に飾るならドガかルノワールが好いなあ。

 

公式サイトはこちら

 

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フェルメールとレンブラント 17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち



福島県立美術館を訪れ、フェルメールとレンブラントを楽しんできました。信夫山の緑を背景にした美しい美術館は、平日にもかかわらず駐車場待ちの車が並ぶほどの盛況ぶり。館内の熱気もすごかった。

ハイライトは共に日本初公開となったフェルメールの「水差しを持つ女」とレンブラントの「ベローナ」。
前者はフェルメールの代表的な構図と淡い光が印象的でしたが、力強さに欠けるというか、はかなすぎるように感じました。
後者は一連の女神像の中の1点とのこと。こちらは存在感たっぷり。女神というより町屋の肝っ玉母さんといった、ふんわりした笑顔に引き込まれます。

美術館級の秀作ばかりを揃えた展覧会ではなく、むしろ当時の裕福な家庭に飾られていたのであろう小品が多く並べられていました。それはそれで、当時のオランダの繁栄ぶりが偲ばれ、興味深い展示内容でありました。いっちゃってる表情の人物が多く描かれていることもおもしろかった。

個人的にはヘラルト・ダウの「窓辺でランプを持つ少女」が最も印象に残りました。
恋人を待ちわびるメイドが、愛しい人の足音を聞きつけて窓の外に乗り出した姿だろうか、とあらぬ妄想を抱かせる佳作だと思います。
 
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画鬼 暁斎  川鍋暁斎展



名人の描いた雀が衝立から飛び立ち、餌を喰っては舞い戻るという落語の「抜け雀」。いくら落とし話とはいえ、絵が動くわけないよね、と鼻で笑っていた私が間違っていました。噺家のみなさん、お見それいたしました。

というのも、先日訪れた「川鍋暁斎展」で心底驚かされてしまったのです。なんですか、あの躍動感は! 二次元の制作物とはとても思えない。今にも動き出しそうな絵というのはよく聞きますが、あれは動き出さない方が不思議(農夫を描いたスケッチは特に印象的だった)。全てを細密に描いているわけではないのに生命感にあふれ、展示会場を怪しい気配でおおいつくしていたのでした。

いやはや、天才とはこのような人を言うのだと思いました。題材はえり好みせず森羅万象(お化けまで!)を描くし、大胆に一気呵成に仕上げるかと思えば、目をこらさなければ分からないほど細密な描写もこなす。そして、出来上がった絵は対象物が持つ本質を一切損なわず、見る者に自然な心地よさを感じさせてくれるのです。モーツァルトを聞いているような感じに似ていますね。



そして、どれを見ても楽しいということが最大の魅力です。注文主を喜ばせてやろうという心意気が素晴らしい(このへんは浅田次郎さんにも似ている)。ついつい、会場を2周してしまったのでした。

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斎藤清美術館



大胆ですっきりしたデザインが印象的な猫の版画の数々。以前から気になっていた斎藤清の美術館を訪れてきました。
勝手に猫専門の画家だと思い込んでいたのですが、もちろんそんなはずもなく、他にも温かいまなざしを感じる会津の四季や、デザイン性の高い色鮮やかな花々、見たこともない構図の富士山などを堪能してきました。
自分を取り囲む事物を素直に愛していたのだろうと感じます。

只見川の畔に建つこぢんまりとした美術館そのものも、建築に係わった人たちの斎藤清に対する愛情を感じさせてくれます。
木の温もりが優しく、そしてなんと言ってもホールから望む只見川の景色が素晴らしい。蛇行する川の流れに映る新緑の山々と赤い鉄橋。
斎藤さんがこの土地を愛した気持ちが良く分かります(景色に見とれてしまい、うかつにも写真を撮り忘れてしまった…)。

ホールに設えられた椅子やベンチに腰掛け、気の向くままに窓外を眺めたり、本を読んだり、そしてもちろん作品を鑑賞したら一日あっという間に過ぎてしまいそうです。
今度はそのつもりで出かけてみようと思うのでした。
 
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あそぶ浮世絵 ねこづくし


猫好きにはたまりません。
昔から猫は愛されていたんですね。こういったユニークな視点の展覧会がもっと開かれるといいなあ。

展示された約150点の浮世絵に描かれた猫は(化け猫騒動を除けば)、その6割ほどが白黒のぶち、3割が三毛、1割がその他でした。圧倒的にぶちが多いのは意外。実際にぶちがたくさんいたのか、画家が好んだのかは分かりませんけれどね。

歌川国貞と国芳が作品に猫を多く描いていますが、描写はかなり違いますね。国貞の猫はちょっと痩せぎすで手足が長く、表情もなんだか恐い。一方、猫好きで知られたという国芳はしなやかな肢体をそのままに描いていて、愛猫家ならこちらを支持するんじゃないかな。愛情を持って観察していたことがよく伝わってきます。口元の愛らしいことといったら!

「あそび絵」と呼ばれる一連のおもしろ絵も楽しかった。
猫を擬人化した風俗絵で、これを細かく見ていくといろんな発見があって飽きるということがありません(江戸時代にも相合い傘の落書きが!)。これは手元に置いてじっくり眺めたいなあ。時間がいくらあっても切りがない。

猫とは関係ないけれど、7人の変人女性を描いた1枚は新鮮です。美人画ではなく、いわゆるふつうのおばちゃんたち(しかも変人!)が描かれていて、たぶんこれがリアルな江戸女性の姿に近いのだろうなと想像した次第。

新潟市美術館で2月2日まで開催中。
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若冲が来てくれました



「若冲が来てくれました」ので、ひとつ拝見しに出かけました。

米国のコレクター、ジョー・プライスさんが集めた江戸絵画コレクションの傑作揃い。日曜美術館の放映も要所が押さえられて面白かったけれど、実物は予想以上に心に訴えかけるものがありました。

まずは目玉の「鳥獣花木図屏風(花も木も動物もみんな生きている)」だと心をはやらせ、一番奥の展示室へ。そして眼に飛び込んできた六曲一双の屏風はまるで銭湯のタイル画。その楽しげな雰囲気といったら!

明るい色彩で描かれている架空の世界と動植物の姿そのものが笑みを誘うもの(象の眼は「パタリロ」だった)である以上に、若冲本人の意気込みがすごい。
平面に描かれているはずなのに、質感はタイルそのもの。「どうだ、誰もこんなの描けないだろう!」と得意になっている姿を想像すると、それだけでも笑えてしまうのです。

インパクトの大きかったこの屏風とは別に、うまいなあと唸らされたのが水墨画の数々。釈迦の入滅を野菜で表した「果蔬涅槃図」はとてもユーモラスで、多くの人たちの笑いを誘っていました。さまざまな鶴の姿を描いた「鶴図屏風(ツルさまざま)」と「花鳥人物図屏風(花や鳥、人や魚)」はすばらしく自在な筆裁き。「おれに描けないものはないのだ!」とこちらも鼻息が荒そうで、いやあ、すごいすごいと拍手を送りたくなるのでした。

若冲以外の作品も質が高く、とても一日では鑑賞しきれない。作者の名前を見ずに、自分の感性だけで購入作品を決めてきたというプライスさんの審美眼には恐れ入るばかりです。
この内容で800円の入館料(高校生以下は無料)は安すぎでした。
そうそう、子ども向けの作品説明は大人にもわかりやすかった。すべての展覧会でこの方式を採り入れて欲しいものです。

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夏目漱石の美術世界展

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漱石先生ごめんなさい。
先生と美術に関わる展覧会を訪れて、再読したくなったのは曾野綾子だった。

というのはターナーの「金枝」です。
曙光に染まる松と踊るビーナスたち。霞のベールを通したかのようなおぼろな風景を目にしたとたん「たれかターナー描く『金枝』という絵を知らぬ者があろう」という一文が口をつき、ああ、これはフレーザー「金枝篇」の冒頭だったなと思い出したのです。

なぜ金枝篇を手にしたことがあるかといえば、曾野綾子「太郎物語」。とかく影響を受けやすかった私は、文化人類学者をめざす太郎君がすっかり気に入ってしまい、彼を真似て民俗学の名著を読み始めたのでした。当時はあえなく挫折しましたけどね。

そんなことを思い出すうち、太郎は一晩で金枝篇を読んだんだよなとか、ビールに氷を入れるおじさんだの「ノボピン」というあだ名の先生がユニークだったなあ、なんて、やけに細部が鮮明に蘇ってきた。太郎を真似て南山大学で文化人類学を学ぶのだ! と燃えたこともあったけなあ。

太郎物語は若者のひたむきさと世間知らず加減が実に楽しい小説だった。金枝篇リベンジと併せて再読してみよう。
というわけで、漱石先生には申し訳ない気持ちで会場を後にしたのでした。

追記:若冲の水墨、伸びやかな線が好かった。青木繁の自画像は迫力満点。怖いほどです。

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橋本直行展



橋本直行さんの個展にお邪魔してきました。
橋本さんといえば、写実の技術に眼を奪われがちですが(実際、夏の棚田を描いた作品では草いきれが伝わってきそうなほど細密にして濃密)、本当のすばらしさは別にあるように思えます。

例えば、激しい季節風が吹き付ける海辺の小道。枯れ草が地面にねじ伏せられ、空は鈍色。
冬の日本海の厳しい現実をそのまま写し取っているのに、そこにはある種のぬくもりが感じられます。


あるいは、雪に埋もれた農村。手前には白く覆われた田んぼが広がり、空も無彩色。
寒々とした集落の風景なのに、そこに満足して暮らす人々の息づかいが伝わってくるようです。


それは、生まれた土地にしっかりと根を下ろしながらも新鮮な視線を失わず、地元の人なら退屈さを覚えてしまうありふれた光景の中に美を見出そうとする姿勢が生み出すものでしょう。
彼はこの土地を愛している。
対象に対する暖かな気持ちが見る者に伝染する素晴らしい個展です。

新潟市のアートギャラリー万代島で3月17日まで開催しています。
ご近所の方は是非お出かけを。

橋本さんのサイトはこちら
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