Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
<< November 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

Haende  ウォルター・シェルズ写真集

そうか、こんな見せ方もあったか、と思わず手を叩いてしまった写真集。ポートレートといえば、顔、バストアップ、あるいは全身を捉えた写真が一般的だと思いますが、シェルズさんはモデルに両掌を顔の両側に掲げてもらった。

リンカーンが「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言ったのは、その人の人生が自ずと顔に表れるということ(?)。そして、同じことが手にもあてはまるとこの写真集は示しています。

モデルの大半はドイツ人(メルケルさん、若い!)で、解説もドイツ語のみ。日本人の私には馴染みのない人もいるけれど、さまざまな表情の顔と手を見ながら、その人の来し方を想像するのは楽しいものです。

翻って自分の手を見つめると、苦労していないことがよく分かってしまい、これにはなんだかがっかりするのでした。自分の手にも責任を持たなくちゃ。

この写真集はドイツ在住の友人が送ってくれたものです。彼女はこの写真集を出版したシェルズさんの元で働いているのだとか。写真好きの私にはうらやましすぎる職場です。いつもありがとう、Aika。

 

 

写真 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

Helmut by June



ファッション写真で一世を風靡したヘルムート・ニュートンの撮影現場を奧さんのジュンさんがビデオに収めた映像集です。プロの現場を見るって、それだけでも楽しいし、いろいろ参考になります。このビデオは家族ならではの視線が温かくて、恐そうだと(勝手に)思っていたニュートンの印象がずいぶん変わりました。

直前に濱谷浩の作品群を見ていたので、ついつい撮影に対する両者のアプローチを比較してしまうことになりました。写真に対する考え方がまるで違うところがとてもおもしろかった。

「写真は記録だ」と言った濱谷に対してニュートンは「写真はカメラで撮るものではない、自分の頭で撮るものだ」と言います。
シャッターを切る際モデルに事細かな要求を突きつけるのは、彼の頭の中に既に明確なイメージがあるから。記録とは正反対の創作行為です。画家が絵筆を持ってキャンバスに向かうように、ニュートンはカメラを持ってモデルに向かい、創作するのです。

モデルたちのさばさばした、それ故にプロフェッショナルな仕事ぶりも興味深いですね。そして、プラシド・ドミンゴの撮影場面には笑ってしまった。途中でドミンゴにカメラを奪われ、逆にあれこれポーズを取らされる始末。でも楽しそうで、全く嫌な顔をしないんですよ。ニュートンの人柄が表れているように思います。

ジュンさん、最後のサービスカットは要らなかったかなあ。あれはご自身のために取っておいた方が良かったと思うのですが。はい、余計なお世話でしたね。
 
JUGEMテーマ:美術鑑賞
写真 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

濱谷浩展



これは本当に同じ国の人たちなのだろうか。
少なからぬ衝撃を受けたのは濱谷浩展で展示された戦前から戦後にかけての写真です。

戦中、戦後のほぼ同時期に撮られた東京と高田桑取地区及び「裏日本」各地の生活を比べて見たとき、その差の大きさに愕然とします。東京があっという間に復興を遂げ、人々が豊かな暮らしを手にし始めた同じ頃、裏日本の漁村・山村ではまだ着るものにも事欠くような状況が残っていたとは。
人々が身にまとっているものの他にも、建物、食べものを比較したとき、とても同じ国を写した写真とは思えません。

展示作品をたどっていくうち、富の分配の両極化が進んだ現代の日本は、実はこの写真と同じ状況ではないのかと感じてしまいました。「写真は創造芸術ではなく記録だ」と言い切った濱谷さんの仕事が発する警告でしょうか。
それにしても、よくぞ貴重な記録を残してくれました。比較することで見えてくるものがあるんですね。

戦前の東京の風景には心惹かれました。レンガ造りの建物は威厳を備え、街ゆくモガ、モボたちは揃ってしゃれた着こなし。円タクのフォルムまでもが美しく、ついつい写真の細部に見入ってしまいました。

 
JUGEMテーマ:美術鑑賞
写真 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

愛ノ旅 荒木経惟展



「たしか、このあたりにあったと思うんだよなー」大音声で誰かがずかずかと近づく音が聞こえたかと思うと、壁の向こうから現れたのはアラーキーその人だった!
突然のことに声をかけることもできず、呆然と見送ってしまった場所は新潟市美術館の「荒木経惟 往生写集−愛ノ旅」展会場内でした。
心臓がばくばくしてしまった。

さて、気を取り直して展示写真を見て改めて思ったのは「この人の写真、好きだ」ということです。若い頃は荒木さんの撮る他人の私生活が非常に生々しく感じられ、生理的嫌悪感を覚えていたものですが、歳を重ねるごとにだんだん良くなってきた。

実は、自身の新婚旅行を記録した「センチメンタルな旅」と奥さんの臨終を看取った「冬の旅」は特に苦手な写真でした(陽子さんに表情がない、おどろおどろしい)。でも、今回、並べられた順番に移動しながら見ていくと、行間から登場人物の声が聞こえる巧みな小説を読んでいるようであり、いつの間にか胸が熱くなってしまうのでした。人物写真の合間に挟まれた空、病院の階段、雪に戸惑う愛猫チロの姿が荒木さんの思いを一層強く語っているようでした。

この人の写真は1点だけ独立して見ては良さが分からない。こうやって物理的に移動しながら数を見ていくと見る者の心にさまざまな思いが湧き上がってくるようです。

この後に行われた辻惟雄さんとの対談にも足を運びましたが(入場者は250人!)、こちらは主催者側の思惑通りにことが運ばず、ちょいと残念でした。
それでも、「女性にはわざとつまらなそうな顔をしてもらって撮るんだ」とか、「写真は被写体との共同作業。創作なんかじゃない」といった話の数々は興味深かった。

今後も驚かせてくださいね、荒木さん。早く血尿が止まりますように!

展覧会の詳細はこちら。10月5日まで。
 
JUGEMテーマ:美術鑑賞

 
写真 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

梅佳代展



会場に足を踏み入れた瞬間に吹き出してしまった!
白目をむいた巨大な小学生男子のお出迎えです。変な顔で変なポーズを決めまくるがきんちょのコーナーを腹を抱えながら通り抜けると、次に待っていたのは無防備すぎる中学生女子たち。スカートをめくってみたり、足の間に大根をはさんだりと無邪気なことこのうえなしです。

有名になったじいちゃんの写真も楽しいものでした。16年間にわたって実家の家族を撮りまくったもので、これだけで数百枚。全判からL版くらいの小さいものまで、壁面の上から下までびっしり。
何をされようがにこにこと達観した境地のじいちゃん、いつまでもカメラを向けられることに慣れないばあちゃん、屈託のない笑顔の妹(?)たちの膨大な写真を見ていると、全く面識のないよその家族なのに、なんだか他人のような気がしなくなります。

すっかり楽しい気分になったのは私だけではなく、会場のあちらこちらから笑い声が響いていました。中でも、じいちゃんの写真を1枚ずつ丹念に眺めながらあれこれ感想を述べ合う中学生女子2人組みの姿が印象的だったなあ(いったい何時間見ているんだ?)。

実家の家族はもちろん身内だけれど、他の写真も身内意識、仲間意識がなければ撮らせてもらえないものばかり。梅佳代の写真の極意はそこにつきますね。
いつもカメラを携えていて、面白いと思ったらさっと撮っちゃうんだろうな。
すばらしいオリジナリティだ。彼女の写真がこの先もこの勢いで突っ走るのか、それとも変化を見せるのか、どちらにしろ、とても楽しみです。

JUGEMテーマ:美術鑑賞
写真 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

篠山紀信 写真力



いやあ、懐かしい写真のオンパレード。ポスターに使われたジョンとヨーコ、山口百恵の姿には郷愁を感じます。

思い出すのは高校時代。新しく創刊された雑誌「GORO」のグラビア第1号が山口百恵でした。当時、清楚なイメージで売っていた彼女のあの姿、あの表情が公衆の目にさらされるなんて誰も予想できなかった。


実に強烈なインパクトでした。
百恵ちゃん本人だって、あんな写真を撮るつもりなんてなかったかもしれません。あれよあれよという間に色っぽい姿になっちゃって。
「激写」を謳った「写真小僧」の実力はさすがなのでした(ファンだった先輩は、1週間、あの写真について語り続けていたものです)。

意外だったのは、先の震災に見舞われた一般の人たちのポートレート。
被害を受けた自宅とおぼしき建物(の残骸)を背景にレンズを見つめる人たち。その静かな表情は見る者の心を捉えて放さないものがありました。
あの状況で、レンズを向けて撮らせてもらえるなんて、やはり、篠山紀信というカメラマンの力は並外れているようです。

このような篠山さんのドキュメンタリー写真はもっと見たいと思うのでした。

個人的ベストは三島由紀夫のポートレート2点。
「完全にいってる」感の迫力たるや。

JUGEMテーマ:美術鑑賞
写真 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

ねこ 岩合光昭写真展


少し前のことですが、岩合さんの写真展「ねこ」に出かけてきました。
予想通りの盛況で、カップルと親子連れの姿が目だちます。

老いも若きも写真を目にするとみんな笑顔なのであります。
ねこたちと岩合さんの力、おそるべしです。

ほとんどが屋外の写真です。
飼い猫以外は初対面のはずなのに、あれほど近寄ってどうしてねこたちはじっとしているのだろう?

うちのねこたちなんて、たまに外で見かけてカメラを構えると、あっっというまにすりよってくるか、逃げていくか。
その場でポーズを決めてくれることなんてありません。

ねこたちをおとなしくさせる岩合さんの秘密を知りたい、と切に願った展覧会でした。



写真 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |