Un gato lo vio −猫は見た

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男と女 人生最良の日々   クロード・ルルーシュ

子どもの寄宿学校で知り合い、ほんの束の間、激しく心を通い合わせたアンヌとジャン・ルイ。53年後に再会した二人は手探りするように関係を築き直し、互いに残された時間を最高のものにしようと歩き出すのでした。

 

いやあ、期待していなくてごめんなさい。前作「男と女」より、今回の方が数段味わい深い映画に仕上がっていました。時の流れは人にこれほどの変化をもたらすものなのですね。主役二人が同じキャスティングということもあり、重ねた経験の深さに説得力がありました。

 

二人のアップを見ていると時間の流れは残酷なものだと切なくなる一方で、まだ「最良の日々を生きていない」、楽しみはこれからだと感じている人達は実にチャーミングなものだと羨ましくもなりました。肉体に無残な爪痕を残す時の流れはそれと同時に、人の心に芽生えた憎しみや恨みなどの気持を少しずつ流し去ってくれるのでしょう。

 

回想シーンでジャン・ルイが明け方のパリ市内を疾走します。運転席から前方を映し出すだけの5分間。聞こえるのは高回転で唸るエンジン音、石畳をこするタイヤの鳴き声、そして男の息づかいだけ。これが実に実に良かった。

 

なんとしてもアンヌを駅で迎えるんだ、何がなんでもあの女をもう一度この腕に抱くんだ。記憶さえおぼろなジャン・ルイの胸の内には、今もその熱い思いが息づいているはずです。

 

おそらく前作撮影時のフィルムだと思いますが、50年前の「男と女」にこのシーンはなかったように思います。あの映画にこれが加わっていたら。

 

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ブロンド少女は過激に美しく   マノエル・デ・オリヴェイラ

叔父の店で会計士として働くマカリオ君は事務室向かいの窓に姿を見せたルイザに一目惚れ。苦労の甲斐あってなんとか婚約にまでこぎ着けるのでしたが、彼女の手癖の悪さに呆れ果てることになるのでした。

 

邦題が扇情的すぎますよ。ルイザは特に過激ではありませんでした。幼いが故に少々常識に欠けるだけ。普通のちょっとかわいい女の子に過ぎません。

 

常識に欠けると言えばマカリオ君も同類で、いくら世間に疎い若者とはいえ、猪突猛進過ぎるのでは。あまりにあっけない結末の責任はルイザよりむしろ彼の方にあると感じました。もっと余裕が必要だよ、マカリオ君。

 

100歳の監督が撮ったこの映画、あらすじだけで終わっていて、特に人物造形に深みがあるわけでもないし、メッセージも感じません。手を抜きすぎなのではとも思いますが、それでも、何かこの世のものではないような不思議な美しさが漂っていて画面から目を離せない。それは次作の「アンジェリカの微笑み」も同様で、やはり一世紀以上も生きた人は、常人とは違う感覚で世界を感じているのかもしれません。

 

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ある船頭の話   オダギリ ジョー

川の流れとトイチの佇む姿がすばらしい。「一幅の絵のよう」という表現はまさにこの映画の冒頭シーンにこそ相応しいと感じました。岩の上から釣り糸を垂れる姿は南画の世界そのものだし、深山とそこに暮らす人々の姿は玉堂の筆が具現化したかのようです。

 

本来なら明るく澄んだ夏の川が暗く表現されていることも印象的でした。振り返ってみれば、仕事を奪われることが決定的なトイチの行く末を暗示していたようにも感じます。

 

たゆたう水の流れに目を奪われると同時に、「惑星ソラリス」の冒頭シーンも思い出されます。水草が揺れる小川の長回しは水の表現としてとは随一だと思っていたのですが、阿賀の流れと柄本明の佇まいが肩を並べました。


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白いリボン   ミヒャエル・ハネケ

第一次世界大戦の足音が近づくドイツの小さな村。住民の多くは男爵家に小作農として雇われ、厳格な牧師の教えに従って暮らしています。ある日、医師が何者かの悪意によって落馬させられたことに端を発し、小さな社会に気味の悪い事件が続くことに。ただでさえ行き場のない閉塞感に覆われた村は疑心暗鬼に満ちてしまい……

 

タイトルの白いリボンとは、牧師が子供たちに純潔を促すものとして巻き付けるものです。正直だと認めてもらえるまで外してもらえません。この点を踏まえて映画を見ると、一連の事件の実行犯は子供達なのだろうと察せられます。

 

大人達は従順さ・純真さを押しつけておきながら自らは様々な欲望に負け、あるいは不正に目をつぶっている。支配構造の最下層にいる子供達が、お前たちこそ白いリボンを巻けと警告したように思えるのです。牧師の長女の意思を込めた視線が示唆的です。

 

モノクロ画面は非常に印象的。晴れた屋外の目が痛くなるような明るさは宗教が押しつける正しさ、手探りしなければ歩けないような夜の暗さは人々が抱える心の闇を表しているかのようで、その極端なまでのコントラストが映画を見る私の心を不穏に揺さぶるのでした。

 

小さなコミュニティに渦巻く嫉妬や憎しみなどを描いた「誰もがそれを知っている」同様、犯人捜しが主題ではなく、残虐性、権力欲など、人間の持つ業をそのまま生の形で観客に提示することがこの映画の目的なのだと感じました。先に見た同監督の「ハッピーエンド」と同じく苦さが残る映画です。再び見たいとは思わないけれど、おそらくいつまでも印象に残り続けるでしょう。

 

なぜ会話がフランス語だったのかは不明。

 

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危険な関係   ロジェ・ヴァディム

退屈した上流階級夫婦の楽しみは恋愛遊戯なのでした。

 

まあ、当の本人達はそれでいいけれど、他人を巻き込まないでほしいものです。ゲーム相手に選ばれた若者達は人生をむちゃくちゃにされてしまい、気の毒なことこの上なし。信じがたいほど無分別な人災夫婦は報いを受けて当然でしょう。

 

ジェラール・フィリップはこの映画でも底の浅い二枚目男役にすぎませんでした。ああ、残念。もしや名作ではの望みは叶わなかった。

 

ジャンヌ・モローはこの映画で能動的に男達を操っていました。2年後の「夜」でも同じように退屈した夫婦の妻役を演じますが、そちらでは完全な無表情、そして受け身な態度。恋愛遊戯にすっかり飽きてしまったかのようです。モローファンは2作続けて見るのも一興かと。

 

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パリ大混戦   ジャック・ベスナール

パリの高級レストラン支配人セプティムはサービス向上が至上命題。でも、強い者には及び腰、弱い者には高圧的で従業員の受けは今ひとつ。

 

ある日のこと、とある国の大統領が訪れるという栄誉に浴したものの、巨大なデザートが爆発するというハプニング中にその姿が消えてしまい、責任を押しつけられることに。パリ市警、テロリストグループの思惑がもつれ合う中、支配人は大統領を見つけることができるのか?

 

60年代後半のパリを舞台にしたドタバタコメディ。クレージーキャッツやドリフに通じるギャグの連続でした。アルプス山中のカーチェイスは昭和世代の心をくすぐりますよ。今どきの若い人は苦笑するだろうけれど、アラ還にはもはやこれくらいの暢気さがちょうど良い。

 

66年制作にもかかわらずカラーは鮮やかです。当時のパリの街並や風俗も楽しめるし。シャンゼリゼは基本的に変わっていないようですね。支配人の乗るシトロエンDSは今でも現役を張れそうなくらいスタイリッシュ。クルマのデザインもそろそろ回帰してくれないかな。

 

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母の残像   ヨアキム・トリアー

世界の紛争地帯で報道カメラマンとして活躍していたイザベルは、家族の願いを受けて帰国、活動を縮小しましたが、皮肉にも交通事故で死亡。その死を乗り越えられなかった元俳優の夫、二人の息子は回顧展準備中にイザベルの隠された一面に困惑しながらも、改めて彼女の存在を受け入れ直すのでした。

 

ドラマチックなストーリー展開も目を惹くような派手なシーンもなく、映画は残された家族の生活を淡々と描き続けます。家族や親しい知人が亡くなっても世界は変わらずに動き続け、残された人もすぐに自分の日常に戻ることは誰もが経験していることで、非ドラマチックな展開はノンフィクションを見ているようにも感じます。

 

ただ、一見何も変わらぬ生活に見えても、残された人たちがなんらかの影響を受けていることもまた事実。映画では、明らかにされてしまったイザベルの秘め事が夫や子供たちの心に爆弾級の衝撃を与え(Louder Than Bombs=原題)、彼らは故人との関係を見つめ直すことなります。

 

裏切られたという思いはあるけれど、温かな思い出もある。イザベルの人生全てを受け入れていつまでも心に留めておこうとする親子の姿が静かに心にしみました。

 

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悪魔の美しさ   ルネ・クレール

ファウスト博士はしたたかでした。まんまと若さを取り戻した挙げ句に悪魔を出し抜いての食い逃げ成功。好い男は運まで良いというお話。ジェラール・フィリップ、キュートです。

 

好い男が良い映画に当たるかといえば、必ずしもそうとは言えないようで、この人も他の多くの二枚目俳優同様、娯楽色の強い作品ばかりに出演しているような気がします。

 

それでも、ジェラール・フィリップの明るい存在感はやはり希有なものだと感じるので、彼の主演による心に残る映画を見てみたいものです。先日見逃した「危険な関係」はなかなか良さそうな雰囲気があったけれど、どうなのだろう?

 

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ブーベの恋人  ルイジ・コメンチーニ

連合軍の上陸が始まった第二次世界大戦中のイタリア。マーラはパルチザンとして闘いながらも殺人容疑で国外逃亡するブーベと婚約しますが、知人に紹介されたステファノに求婚され、心乱れることに。

 

「シェルブールの雨傘」で同じような状況に置かれたジュヌヴィエーヴは傍にある確実な愛を選びましたが、マーラは苦境にある婚約者を見捨てられませんでした。どちらを選んでも心に傷は残るし、でも、それも時と共に癒えていきます。

 

人生とは実に選択の連続。さだまさしが「吸い殻の風景」で歌ったように「雨の日には誰だって傘をさす」し、「風の日には誰だって目をつむる」ものです。

 

主題歌が世界的にヒットし、日本でもザ・ピーナッツ、いしだあゆみ、奥村チヨが歌っていたとのこと。

 

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薔薇は死んだ   アッティラ・スアース

第一次世界大戦前夜のブダペスト。高級娼婦エルザの遺体が納められたバスケットがドナウ河畔に流れ着くところから映画は始まります。

 

エルザが新しい使用人カトゥを雇い入れたことが事の発端。彼女の屋敷では同じく元娼婦であり友人・愛人同士でもあったロージが家事を取り仕切っていました。そして豪奢な生活を支えているのは建築家のマックス。

 

4人がそれぞれに対して抱く気持は複雑で矛盾を抱えています。それは当事者同士の過去の人間関係に起因する感情の発露によってめまぐるしく変化し、マックスを頂点とする序列上位者が下を従属させているという構図も状況によって容易に逆転したりするのです。3人の女と1人の男の抜き差しならぬ愛憎劇は泥沼化、若きカトゥの将来にも暗雲が漂うのでした。

 

ブダペストの街並みは美しく、そして女性3人の演技も素晴らしかった。中でもエルザ役パトリシア・コヴァーチの妖しさには魂ごと吸い寄せられてしまいそうでした。うかつに知り合いになったら間違いなく骨抜きにされてしまい、自分も又バスケットに入れられて岸辺に流れ着いてしまうかもしれない。おお、こわ。

 

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