Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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彼は秘密の女ともだち

最愛の妻ラウラの死後、女装癖が顕在化したダヴィッド。ラウラの親友クレールはそんな彼をヴィルジニアと名付け、秘密を共有するとともに唯一の理解者となります。ダヴィッドはやがてヴィルジニアとして生きることを決意。クレールは自分の気持ちに正直に生きようとする彼/彼女を応援するうち、女としてのヴィルジニアに惹かれてしまい…

いつものように独特なあくがあるものの、人生を肯定しようという、オゾン監督らしい明るくハッピーな映画でした。

クレール役アナイス・ドゥムースティエの自然体が良かったなあ。あまりに普通なので、なんだか知り合いのような気がしてきます。そんな彼女が自分の中に同姓への嗜好があると気づき、女と認めたヴィルジニアに身を任せようとする場面が個人的ハイライト。私って、そいいう人なの? と戸惑う表情が良かった。そして、いくら女を宣言してもヴィルジニアの肉体は男。いざとなったら逃げ出してしまう(やだ、この人、女じゃない!)あたりが笑えました。

お二人さん、よき女友達として末永く付き合い続けてくださいね。

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高瀬舟

京都を南北に流れる高瀬川。同心の羽田庄兵衛は弟殺しで遠島に処された喜助を舟で護送しますが、罪人らしからぬ素直な心根を不思議に思い、罪を犯した理由を尋ねてみることに。

幼くして両親と死に別れ、その後も不運に見舞われ続けた喜助兄弟。やがて弟は病を得てしまい、兄に迷惑を掛けたくないと自害を企てますが、カミソリでのど笛を切っても死にきれず、帰宅した兄にひと思いに逝かせてくれと幇助を願います。

医者を呼んでも間に合うはずもなく、苦しみから解放してやろうとした喜助の行為は殺人なのか? 庄兵衛は言葉を失い、二人を乗せた高瀬舟は夜の川を下り続けるのでした。

映画は基本的に小説を忠実に再現していますが、奉行が裁きを下すシーンを加えています。
この奉行、裁かれる人物が置かれた状況を全く斟酌しない杓子定規で情のない役人として表現されています。「だから役人は嫌いだ」と毒づいた私でしたが、しかし、遠島とはいえ、居場所を与えてもらって感謝するという喜助の言葉に、待てよ、と思ったのでした。

仮に無罪を言い渡されたとしても、喜助はこの世に身よりも居場所もありません。仕事を得られるかどうかも定かではない自由な暮らしより、罪人として住む場所を与えてもらった方がまし。もしかしたら、あの奉行はそこまで察して有罪を言い渡したのではなかろうか。でなければ、わざわざ付け加えた意味もないような。

共に小品ながら余韻の残る映画と小説でした。

 

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パターソン

朝6時15分前後に起床、妻に「まだ寝ていていいよ」と声を掛けたのち一人で朝食。通勤途中で詩作にふけり、発車前のバス運転席でノートに書き留める。つつがなく仕事を終えて帰宅すると、エキセントリックな妻の行動にちょっぴり驚き、ユニークな夕食の後は愛犬を連れて夜の散歩。馴染みのバーに立ち寄り、ジョッキ一杯のビールを楽しんで帰宅、そして就寝。

これが、ニュージャージー州パターソンに暮らすバス運転手パターソンの日常です。
特にドラマチックな出来事も起きず、判で押したような毎日。
世界中の普通の人は、程度の差こそあれ、パターソン君と同じように変わりばえのしない毎日を送っているはずです。

なんて退屈な私の人生、と感じている人に薦めたい映画ですね。一見金太郎飴を切ったような人生でも、毎日小さな出会いがあったり、おやっと感じる出来事が起きたりするものです。それをどう受け止めるか。

世界に心を開いてさえいれば、ありふれた人生も詩のように美しく感じられる。「ナイト・オン・ザ・プラネット」や監督が出演した「ブルー・イン・ザ・フェイス」を思い出させる映画でした。Aha

 

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残像

カンディンスキーやシャガールとも親交のあったポーランドの前衛画家ストゥシェミンスキ。第二次世界大戦後のポーランドでは共産党による統制が進み、芸術も社会主義実現に寄与する表現に制限される。
美術大学で教鞭を執るストゥシェミンスキは「芸術は新たな表現を求めるもの」として、党の方針に反発。そんな彼を英雄視する学生たちには慕われ続けるものの、職場を追われ、画家組合から除名され、生活の糧を失っていく。

予告編を見た限りでは、信念を貫き通して体制に抵抗し続けた芸術家の生き様を描いた作品だろうと予想していました。
実際、その通りだったのですが、「信念を貫き通す=美しい」という単純な価値観ではなかった。

確かにストゥシェミンスキは己の芸術を追究しようとしますが、食べていけない現実は厳しかった。困窮し、ついに意に沿わぬ仕事さえ引き受けたとしても(スターリンの肖像を描くなんて…)、幼い娘を抱える身であれば仕方ありません。親であれば己の主義より、子どもの安全を優先するのは当然です。

しかし、党は容赦しなかった。ストゥシェミンスキは信念を曲げて獲得した小さな仕事までも次々と奪われ(社会主義国家で仕事を与えられないってどういうこと?)、失意の内に最期を迎えてしまうのです。

個人の抵抗など国家という巨大な組織には痛くもかゆくもない、ということなのでしょうか? このやりきれない気持は初期の「世代」や「地下水道」を観た後と同じです。いつの日かワイダ監督の意図を理解できると良いのだけれど。

 

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そして、デブノーの森へ

デビュー作「冬の旅」で文壇の寵児となったセルジュ・ノヴァクことダニエル。義理の息子の結婚式に向かう船中で魅力的な女性ミラと知り合い一夜を過ごしたが、なんと彼女は息子の花嫁だった。
そして、ミラの登場は偶然ではなく、「冬の旅」盗作を巡る大がかりな復讐劇の始まりに過ぎなかった。

緊迫感漂う展開に引き込まれるうち、ついつい事の真相を解明したくなってしまい、あれこれと頭を悩ませてしまいました。
そもそもダニエルが下した決断の理由が腑に落ちないし、最後にはダニエルと自殺した友人ポールが入れ替わっていると示唆するかのようなシーンが用意されています(そうなると、いろいろと辻褄が合わなくなりますが…)。

いったい、どうなっていたんだ? と映画を振り返ると「人は単純ではない」と言ったダニエルの言葉が思い出されました。
そう、人間の思考や感情は複雑なものだし、本人だって完全に理解しているとは言いがたい。
そう思えば、この映画の見どころは謎解きではなく、本人の意思に反して移ろいゆく人の気持ちの不思議さ、抑えきれずに噴出する感情の高まりにあるのだと感じられてきます。

謎は謎のままに残しておけばいいのでしょう。複雑なものごとを分かりやすくまとめて解決したつもりになっていては、人生の機微を味わうことができない、そう教えられたような気がします。

 

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赤いアモーレ

クルマが故障した外科医ティモーテオは通りかかった掃除夫イタリアに電話を借り、一目で彼女を気に入ってしまう。
妻と不足のない暮らしを送るティモーテオだったが、イタリアへの思いは狂おしいほど。やがてイタリアは子を身ごもり、ティモーテオは人生の判断を迫られる。

情欲におぼれた身勝手な男の独りよがりな愛の行方を描いたお話、と言ってしまっては身も蓋もないけれど、役者の演技力によって人の世の辛さを感じさせる印象的な映画に仕上がっていました。

ティモーテオは妻との暮らしを守るべきかイタリアと新しい人生を始めるべきか大いに葛藤しています。一見感情に乏しい表情は、判断に苦しみ、あらゆる思考が停止してしまったが故なのかもしれません。
イタリアのゆがめた口元やがに股歩きは見ていて切ないなあ。身に降りかかる悪事をあきらめと共に受け入れる姿。ペネロペ・クルスは幸薄い人生を体当たりで演じていました。
そして、夫の心をつかめない不安に怯える妻エルサ。不幸を予感しているかのような表情に私の心も揺れました。
これが俳優の演技というものでしょう。

ティモーテオは多くの人から勝手な男とそしられるだろうし、私もそう思います。
一方で、制御できない感情に突き動かされて逸脱しても構わないと思う気持ちも理解できる。社会規範からはみ出さず、良識ある人として暮らすことは難しいものです。

ところで、邦題ひどすぎませんか?
ソープオペラみたいだな。

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おやすみなさいを言いたくて

世界の紛争地区で報道写真を撮り続けるレベッカ。誰かが真実を伝えなければならないという強い衝動を家族が理解していると思っていたが、夫も2人の娘も彼女が死亡する可能性に怯え続けていた。
 

報道写真家であるより家族を選ぼうと一度は決意するものの、彼女の中にある「怒り」が収まることはなく、再び紛争地へ向かうことに。しかし、長女との関係修復を果たしたレベッカは、これまでどおり冷静な目で取材対象を見ることができるのだろうか。
 

正義感と家族への愛の間で揺れ続けるレベッカ。報道写真家としての資質を失うかのようなエンディングでしたが、私は彼女が立ち直り、最終的には仕事を選ぶような気がします。
 

人の仕事観は大別して2つ。仕事のために生きるか、それとも、生きるために仕事をするか。どちらが正解ということはありませんが、仕事観の違う2人が家庭を持てば、そこが紛争地帯になることは避けようがありません。
 

レベッカの正義感は間違っていない。そして、妻であり母親である彼女の身を案じる家族の気持ちもまっとうなものです。ただ、それは共存できない。相容れない理性と感情が切ない人の世です。

 

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危険なプロット

生徒の稚拙な作文にうんざりしていた高校教師のジェルマンは新学期を迎え、クロードが提出した課題に惹きつけられる。友人の家庭をのぞき見的に描写した文章に才能を感じたジェルマンは熱心な指導を行いながらその虜となり、ミイラ取りがミイラになってしまうことに…

人の心の奥にあるものを見透かし、手玉に取ってしまうティーンエイジャー。こんなやつがいたら嫌だなあ。私は歳は食っているけれど、絶対に操られてしまう。

オゾン監督の映画には独特なアクがあるけれど、私の好みには良く合いまして、既に何作も楽しませてもらいました。
キャスティングも好みです(過去はランプリングとドヌーヴが良かった)。学校では尊大な態度を取りながら、家庭では従順な夫を演じるファブリス・ルキーニ。見る者に嗜虐心を芽生えさせるようなとぼけた味わいがナイスでした。

 

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僕とカミンスキーの旅

カンディンスキーと混同しそうな名前、そして各界著名人(ピカソ、ダリ、ビートルズ等々)と共に収まった写真の数々。予告編を見た後で「カミンスキー」と検索した私は、既に欺されていたのでした。ははは、こういうの大歓迎です。

そんなウソの匂いが紛々、さらに登場人物たちは鼻持ちならない癖のある人物ばかり。なんだか、現代アートシーンを揶揄しているみたいだな。

キャリアはないけれど、名を上げたくて仕方ない自称ジャーナリストのツェルナー君。図々しいくせに妙にナイーブな性格が人をイライラさせます。けれど、妙なことにカミンスキーは彼を「唯一の友だち」と感じてしまうからあら不思議。

実はこの二人、年の差と立場の違いこそあれ、成功したいという強烈な欲望や愛する女性に逃げられるという境遇が瓜二つ。カミンスキーはツェルナーに若い頃の自分を見ていたのかもしれません。

初めて海を訪れたカミンスキーが暮れゆく浜辺に座り込んで動こうとしないシーン。成功した後、世間に忘れられゆく境遇を示しているようで、もしかすると似たもの同士のツェルナーも同じ運命を辿るのかも。ばかばかしい映画の最後はほろ苦く締められているのでした。

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学生たちの道

1943年、ドイツ軍占領下のパリ。17歳の高校生バリー君は品行方正を装いながら、親の目を盗んで親友ポールとやんちゃのやり放題。年上の女といちゃつくわ、闇商売で大儲けするわと、一人前を気取っているのですが、やがて家族に嘘がばれ、親子関係がこじれることに…

若きアラン・ドロンの瑞々しさが眩しいコメディタッチの成長物語でした。親子関係を巡る葛藤もありますが、そのテーマを掘り下げているわけではなく、あくまでドロン(そして相方フランソワーズ・アルヌールなど)の存在そのものがこの映画の見どころだと思います。

それにしても、ナチス占領下だというのにパリジャンは楽しそうに日々の生活を送っています。物資は不足気味ですが、それでもカップルがドイツ兵の前でいちゃついてみせたり、レストランで敵将と共に酒を酌み交わしたりするんですよ。実際にそんなことが可能な雰囲気だったのかな?

 

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