Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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父ありき

とある事故をきっかけに、離れて暮らすことになった父と子。その情愛を静かな明るさで描いた戦時中の作品です。

笠智衆演じる堀川は、臨終のラストシーンで辞世の句のようにこう言います。(この映画を見ていない人、ごめんなさい)。「できるだけのことはやった。わしは幸せだ。ああ、いい気持ちだ」
そして往生。

この世に思い残すことはない、晴れ晴れとした死に様はうらやましいばかり。縁談がまとまったばかりの息子とその嫁、長年の友人、そして教え子らに看取られて逝くなんて。しかも、患い付いてすぐですからね。

教え子が修学旅行中に事故で亡くなり、責任を取って辞めた後は、離れて暮らす息子に会うことが唯一の楽しみ。若い人は穏やかに続く淡々とした日々に物足りなさを感じるかもしれません。でも歳を重ねてくるとそのありがたさをしみじみ感じるようになるし、堀川のような最期が本当にうらやましく感じるものなのです。

いい気持ちだ、と言って最期を迎えたいものです。

 

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マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ

きらびやかすぎる名声故に短いキャリアで生涯を終えた、あのマリア・カラスのパリ、オペラ座デビューライブ。

フランス国営放送による1958年の収録をデジタルリマスター化した完全版ということですが、残念ながら音声は期待したほど美しいものではありませんでした。ただ、自ずと限界があることは分かっていますし、ノイズがないだけでも良しとしたいところ。

一方で、カメラが捉えた映像は強く印象に残るものでした。女王然とした雰囲気や立ち居振る舞いは想像していた以上(オペラ歌手とは思えぬスリムな体型!)。本人を目の前にしたらひれ伏しちゃいますね。

第2部で上演した「トスカ」第2幕は特に強烈でした。バリトンとテノールも見事な歌唱を披露していますが、マリア・カラスの存在感にはたじたじ。苦境の恋人を思う苦悩、殺人という手段を選ぶ瞬時の判断、そして憎い相手に向ける憎悪の表情はもはや俳優の域。
テレビカメラによるアップは大正解だと思います。

 

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サンバ

 

「最強のふたり」ではオマール・シーが見せたひまわりのような笑顔にひきつけられましたが、同じ監督と主役の組み合わせという二番煎じはいかがなものだろうと、若干危ぶんでいたところ、相手役をシャルロット・ゲンズブールが演じていたことで興味が持ち直しました。どうも彼女は気になるのです。

というのも、どんなに明るい映画に出演していても、幸薄そうな雰囲気を感じてしまうのですね。この映画では、燃え尽き症候群の女性キャリアという役どころで、プライドと自信のなさが心の内でせめぎ合う結果、他者と積極的な関係が持てず、ましてや心を許した友人などつくれるわけもないという状況です。そのくせ、突如として大胆な行動に走ってみたりと、心の不安定さが見る者の肝を寒からしめてしまうのです。

もちろん、優れた俳優として見事に演じているからこそ、こちらがあれこれ気をもんでしまうと分かってはいるけれど、もしかすると、仕事を離れた私生活でも寂しげな表情を浮かべているのではなかろうかと勘ぐってしまうんだなあ。とても演技だけとは思えない。大丈夫かい?

 

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明治神宮外苑創建90年記念奉納試合

穏やかに晴れ上がった秋の午後。ただただ純粋に野球の試合を楽しむことができました。明治神宮外苑創建90年記念の奉納試合です。
1塁・ライト側のスタンドを埋め尽くすのはスワローズファン、3塁・レフト側スタンドで伝統の応援を繰り広げるのは東京六大学ファン。

プロ・アマ交流試合ということで、そもそも勝負が目的ではありません。楽しみはアマチュアがプロ相手にどれほどの善戦を尽くすかという点のみ。とはいうものの、来季からプロ入りする選手も多く、プロ側もおちおちしていられません。

ひいきの選手を応援しながらも、互いの応援チームをたたえ合うスタンドの雰囲気は非常に和やか。勝負が目的ではない分だけ、出場した全選手のプレーひとつひとつが素直に目に映り、その技術力の高さ、全力を尽くそうとする姿勢に歓声をあげることになりました。

ああ、野球って美しいスポーツだな、野球場って楽しい空間だなとしみじみ感じる午後でした。
今回はテレビ観戦。100周年記念の奉納試合が行われるのであれば、今度は是非とも足を運ぼうと思うのでした。

 

 

それにしても、スワローズの大引選手はすごかった。10年前の奉納試合では六大学選抜の1番手として登場、先制を許した直後の1回裏にいきなり同点ホームラン。ああ、この選手がほしいと思ったものですが、今回はなんと、スワローズの選手として登場。4回裏に学生側を突き放す3ランホームランを打ってしまいました。狙っていたというのですから、脱帽するばかり。

大引選手、来季はこの調子でお願いしますぜ。

 

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悪徳の栄え

ドイツ軍占領下のパリで対照的な生き方を選んだ2人の姉妹。姉、ジュリエットはナチス高官らの愛人としてしたたかに戦時を生き抜こうとし、妹、ジュスティーヌはレジスタンスの道を選びながらも連行され、ドイツ高官の「館」で娼婦として仕えることに。連合軍による解放を迎えたそのとき、姉妹の運命は。

権力を手にしようとする人間の浅はかさ、手にした力を行使せずにはいられな愚かさが見る者の神経を刺激します。欧州戦線の実写フィルムを挿入したモノクロ画面は、コントラストの美しさと共に、一種異様な迫力を備えていました。

撮影時19才だったドヌーブの瑞々しい美しさには思わず息をのんでしまいますが、汚れ役を演じたアニー・ジラルドの演技にも引き込まれました。

彼女の顔には、目をつぶりたくなるような環境下で、誇りを捨ててしぶとく生き抜く覚悟が見て取れます。同時に、意地悪い運命の前に屈してしまう予感におびえる気持ちもにじんでいます。
アラン・ドロンと共演した「若者のすべて」でも同じような役どころを演じていましたが、この映画では絶望感がいっそう深く表れていました。

そして、ラストシーン。悲惨ながら、美しく印象的だった。

 

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長屋紳士録

戦後間もない東京のとある長屋。そこで暮らす人々の日常を取り上げた小津監督お得意のホームドラマです。

笠智衆演じる田代が迷子の幸平を連れ帰ったものの、自分で面倒を見る気などこれっぽちもなし。たらい回しにしたあげく、後家のタネに貧乏くじを引かせることになりますが、彼女もその日暮らしで精一杯。

厄介払いしたいタネでしたが、引取先を探したりしながら面倒を見ているうちに情が移り、養子にもらう決心。なけなしのお金で服を揃え、写真館で記念撮影。さあ、これから一緒に暮らそうと決心したところで、まさかの父親登場。さて、幸平君は父とタネのどちらを選ぶのか。

つかの間の喜びと落胆。タネさんは可哀想ですが、映画そのものは楽しい仕上がりになっています。
中でも、田代のお気楽ぶりがすごかった。宴会芸を請われ、箸で茶碗を叩きながら「のぞきからくりの唄」をうなる場面は、歌詞が聞き取れなくても笑いが込み上げてくるのでした。
(そういえば、子どもの頃、お祭りの出し物として「のぞきからくり」を見たことがあったなあ)。

 

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ドラゴンタトゥーの女

ハリウッド版はオリジナル版の忠実なリメイクでした。ストーリー展開も人物造形も変わらず。
ただ、オリジナル版に登場する風景、家屋、インテリアなどが暖かみを感じさせるものなのに、ハリウッド版は、いかにも他国人が北欧を想像したときのような、薄暗い照明と超ミニマルなデザインを多用していました。役者も、いかにもクールそうです。

ドラゴンタトゥーの女ことリスベットについては、ハリウッド版の方が雰囲気出ていましたね。世間に受け入れられない彼女の痛々しさが良く伝わってきます。オリジナルは健康的すぎた。ただ、オリジナル版にはない最後のエピソードは甘ったるすぎましたね。オリジナルの方が毅然としていて良かった。

原作はハリエット失踪の謎解きとヴェンネストロム追求を通してスウェーデン社会が抱える闇を描き出そうとしていましたが、映画の主題はどちらのバージョンも共に謎解き。娯楽作品であればそれで正解だと思いますが、原作を知るものにはちと物足りないのであります。

 

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陰翳礼讃

江戸期までに作られた美術品・工芸品をろうそくの灯りだけで鑑賞する、という企画を、以前、日曜美術館で見たことがありました。
ほのかな光に浮かび上がる金銀の装飾は、隅々まで照らす明るい照明の下とは全く異なる姿を見せ、幽玄な印象を抱いたことを覚えています。

その効果を谷崎潤一郎は昭和初期に示していました。さすがですねえ。
手に取った文庫には、他に「恋愛及び色情」「懶惰の説」「旅のいろいろ」などの随筆も収録され、うん、うんと頷きながら楽しむことができました。

というのも、これ、基本的には「今の文明は味気なさすぎる!」と嘆く老人(とはいえ、この時40代後半)の繰り言だからなんですね。もちろん、目の付け所と文章の操り方はさすが文豪ですから、さまざまに唸らされることになりますが、基本的な心情は年配者に共通のもの。そうだよねえ、と共感するんだなあ。

きっと、落語の「小言幸兵衛」のように、目につくものを片っ端から文句をつけて歩いたんだろうなあ。歴代奥様やその姉妹たちは作家に心酔していただろうけれど、女中さんたちは「また始まった! 本当にうるさいんだから」と陰口をたたいていたに違いない。そんな妄想に耽りながら読んでいると、なおのこと楽しいです。

 

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ブルックリン

アイルランドの田舎町に暮らすエイリッシュは、姉と神父の勧めで職を求めてアメリカへ移住。ホームシックの苦しみもやがて恋人の出現で和らぎ、新天地での暮らしに自信を深めていきます。

そんな矢先に飛び込んできたのが、姉の訃報。帰国前に恋人の希望を入れて入籍したエイリッシュでしたが、故郷で一夏を過ごすうち、昔なじみの男友達に惹かれてしまい、心は乱れるばかり。彼女は故郷を選ぶのか、それとも新天地を選ぶのか。

エイリッシュは、特別な才能や美貌に恵まれたわけでもない(もちろん、現実の世界にいたら充分に魅力的な人ですが)普通の人として描かれています。だから、そんな彼女を待ち受ける試練や喜びに対して、観客も素直に共感できるように思います。

映画を見ていて改めて感じたのは、人生が選択の連続であるということ。その結果が積み重なって今この場所にいるんだなあ。振り返ってみれば、悩み抜いて慎重に選んだことが裏目に出てみたり、何気なく決めたことがその後の道を大きく広げてくれたりと、自分の意志通りにはいかないところが面白くも悩ましいです。

そうだ、今、私は大きな岐路に立っているのだ、とエイリッシュに自覚させたのは、生まれ故郷の町で商店を営む意地悪なご婦人でした。
この俳優さんのことは知らないけれど、詮索好きで、独り善がりで、そのくせ見栄っ張りな役どころがナイスでした。この映画の助演女優賞を差し上げたいと思います。

公式Webサイトはこちら。

 

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21世紀の名作映画100選 BBC

先日、BBCが「21世紀の名作映画100選」を発表しました(実際には2000年の作品から)。自分で観た映画は10作ほど。さまざまな思いを胸に残した「別離」がトップ10入りしていたのは嬉しかった。

宮崎駿の「千と千尋の神隠し」が4位にランクされるなど、かなり幅広いラインナップで、あれも観たい、これも観たいとリストをさかのぼっていったのですが、1位には意表を突かれた。なんと、なんと、デビッド・リンチの「マルホランド・ドライブ」が最上位に輝いているのでした(そもそも20世紀の映画だと思ってた)。

うーん、あのわけのわかんない妖しすぎる映画が(2016年までの)21世紀の名作第1位。リンチファンとしては嬉しいけれど、世の映画ファンは納得するのだろうか?
その理由を記した記事も紹介されていますが、わかんない映画を解説されたところで一層混乱するだけ。

以前、訳わかんなくてOKと書いた私ですが、BBCが示した視点からもう一度見てみようかな… いや、やっぱり?マークが頭の中に点滅し続けるだけだろうな。

 

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