Un gato lo vio −猫は見た

映画やらスポーツやら小説やら、あれやこれや。
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学生たちの道

1943年、ドイツ軍占領下のパリ。17歳の高校生バリー君は品行方正を装いながら、親の目を盗んで親友ポールとやんちゃのやり放題。年上の女といちゃつくわ、闇商売で大儲けするわと、一人前を気取っているのですが、やがて家族に嘘がばれ、親子関係がこじれることに…

若きアラン・ドロンの瑞々しさが眩しいコメディタッチの成長物語でした。親子関係を巡る葛藤もありますが、そのテーマを掘り下げているわけではなく、あくまでドロン(そして相方フランソワーズ・アルヌールなど)の存在そのものがこの映画の見どころだと思います。

それにしても、ナチス占領下だというのにパリジャンは楽しそうに日々の生活を送っています。物資は不足気味ですが、それでもカップルがドイツ兵の前でいちゃついてみせたり、レストランで敵将と共に酒を酌み交わしたりするんですよ。実際にそんなことが可能な雰囲気だったのかな?

 

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ドン・キホーテ  セルバンテス

遍歴の騎士が活躍する小説を読みすぎて、現実と虚構の区別がつかなくなったドン・キホーテ。自分も悪を正す正義の騎士になろうと、やせ馬ロシナンテ、従士サンチョ・パンサを伴にドタバタ劇を繰り広げるのですが…

物語に深みがあるわけではなく、滑稽な登場人物が次から次へと事件を巻き起こす娯楽長編。様々なエピソードをある一定量にまとめた連作短編集のような体裁でしたので、気楽に読み進めることができました。

そもそも、「遍歴の騎士」とは、正義を求め、乙女の純潔を守る者だそうで、闘いにおいては想い姫の加護を求める慣わしなんだそうです。

しかし、いつもは良識あるキホーテさん、こと騎士道となると完全に常軌を逸してしまい、誰を見ても騎士か悪人にしか見えない。正義を遂行するどころか、人の持ち物を奪ったり、葬列に襲いかかったりと、やりたい放題。しかも、ことごとく打ちのめされ(歯は全て折れ、肋骨も骨折…)てしまうのですが、自業自得だよなあ、と全く同情できないのでした。

有名な風車のエピソードは最初に登場。しかも実ににあっけない内容で、その後に巻き起こる珍事件に比べれば印象が薄いですね。後半はとある宿屋に集まった人たちの冒険譚が中心で、キホーテの影は薄くなります。

娯楽の少なかった昔(発表は1605年)を想像すれば、冗長な説明さえ歓迎されたのでしょう。一日の終わりにみんなが集まり、文字を読める人が一章ずつ読み進めて楽しんだのではないか、そんな気がする迷作(?)でした。

 

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戦争と平和

原作はもちろんトルストイ。分厚さに怯えて未読だったため、映画で済ませてしまおうと目論んだものの、こちらも4時間弱の作品。いやあ、腰が痛くなってしまいました。

トルストイが小説で何を描こうとしたのか未読の今は分かりませんが、映画の方はラブストーリーに重きが置かれていたように感じます。オードリー・ヘプバーン、ヘンリー・フォンダ2人の共演を堪能できればそれで良し、かな。

美しく生まれるということは不幸なことなのかもしれません。ヘプバーン演じるナターシャは吸い寄せられるように近づく数多の男に次々になびいてしまい、結果として相手も自分も破滅の道へと導いてしまう。しかも、ちょいと人をイライラさせる性格でした(さすがに10代には見えないし…)。

一方、従姉妹のソーニャは健気だった。許嫁(夫?)の心変わりを許し、暴走するナターシャを諫める。叔父宅の再建には文句も言わずに従うなど、パートナーにするならソーニャだと思いました。

ハリウッド映画とはいえ、全員英語でしゃべるのは興ざめですね。戦争を扱っているけれど、基本的には娯楽作品のトーン。やはり原作を読もうと思わせてくれた点でマルとするかなあ。

 

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吉田博展 上田市立美術館

ここ半年ほど雑誌やテレビなどで目にする機会が多く、どうにも気になって仕方なかった吉田博の展覧会へ出かけました。

日曜美術館は版画を中心にした紹介でしたが、実際には「日本人にしか描けない洋画」を目指し、幅広い制作活動を行っていたとのこと。
独特な技法と色使いの木版画はもとより、初期の水彩画にも強い印象を覚えました。その場の空気や湿度を感じさせる表現が見事です。

デッサンも素晴らしい。常に持ち歩いていたというスケッチブックにあふれる自然描写は素早い筆の動きにもかかわらず、非常に克明です。画家がその場で感じた感動が伝わってきますねえ。

国内で作品が評価されず、それならばと海を渡ってアメリカの美術館に自らを売り込んだのだとか。叙情的な作品とは対照的な情熱的・行動的な性格だったということがなお、この画家に対する興味をかき立てます。

 

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瘋癲老人日記

恐ろしい、いや、たいしたジジイだ。息子の嫁に脚を舐めさせてもらって大興奮だもんなあ。血圧が上がってこのままでは死ぬと危ぶみながらも、いやそれでも構わないとむしゃぶりつくんです。

このジジイは77才の卯木督助老。左手先は神経痛で動かず、脳溢血の影響で歩行に支障を来し、性的には完全に不能。それゆえ、異常性欲が昂進し、若い肉体に一層執着するんですね。
もはや、家族全員の知るところとなってもいっこうにお構いなし。谷崎の他の主人公同様、マゾヒスティックな喜びにひたすらおぼれ続けるのでした。

死してなお、嫁の颯子(さっこ)の足蹴にされたいと願い、彼女の足形を仏足石にした墓石を作ろうと目論むくだりはすごいのひと言。
死後、颯子の仏足石に踏まれながら「痛い痛いと叫び、痛いけれど楽しい、この上なく楽しい、生きていたときより遙かに楽しいと叫び、もっと踏んでくれ、もっと踏んでくれと叫ぶ」のだとか。

谷崎小説にだいぶ洗脳されてきたのか、このジジイに嫌悪感を感じないどころか、最も親しみを感じますね。
異常に見えるけれど、みんな人に言えない闇を持っている。この老人の場合はそれがひときわ強烈な性欲だったということ。
それを、恥も捨て去り、開き直ってとことん追求するという姿が、疎ましくも好ましいのでした。

 

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魅惑の小径 角田山小浜コース

シーサイドライン小浜の対面に車を乗り入れると、山に向かう人影発見。ここが登り口だと教えてもらい、長らく謎だった小浜コースにようやくとりつくことができました。

写真上の稜線は灯台コース、そして、中央下から右上に伸びる枯草の陰が小浜コースの登り口なんですね。何も知らずにやってきても絶対に分からないな、ここ。

連休初日ということで、角田山全体は大賑わいでしたが、このコースでは先の登山者と私の2人きり。聞こえてくるのは背後の波音、風に揺れる若葉のさざめき、そしてメジロ、ホオジロ、ウグイスの元気な鳴き声だけ。秘密の小径を独り占めしているような気分になって、わけもなくニヤニヤしてしまうのでした。

登りはじめの20分くらいは急登ですが、ゆっくり登ればきつくありません。全体には南隣の浦浜コースをさらにひなびさせた感じですね。
桜の巨木が道沿いに数本そびえ、葉桜を楽しませてくれましたし、ずいぶん久しぶりにニホンタンポポの姿も見ることができました。

角田山の10コースを登り、それぞれに楽しさがあると感じましたが、個人的には五ヶ峠とこの小浜が気に入りました。春の桜尾根も捨てがたいな。

そうそう、10コースと書きましたが、小浜ルートから左右の谷に向かって登山道とおぼしき3本の踏み跡がついていましたし、桜尾根コースも途中で分岐があります。三望平からは福井コースへ向かっているのかと思われるしっかりした道が伸びているし、観音堂から五倫石コースへ合流できるという噂も聞きました。いったい、どれほど登山道があるのやら。低山ながら、懐の深い山のようです。

 

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A Quiet Life  ナターシャ・ウォルター

第二次世界大戦が現実味を帯びる頃、アメリカの田舎町で暮らすローラは思わぬ遺産を相続し、イギリスの叔母家族を訪ねることに。旅の途中で共産主義者の女性と知り合い、その理想に共感を覚える一方、ロンドンで知った上流階級の雰囲気にも憧れを感じます。

そして、戦争が勃発。イギリスに留まったローラは社交界で交友関係を広げ、外務省に勤めるエリートながら、平等な世の中の実現にも関心を寄せるエドワードと知り合います。
互いに理想の相手だと感じた二人は結婚。ところが、夫はローラの想像が及ばない秘密を抱えており、やがて失踪。生まれたばかりの子どもを抱えたローラは苦境に立たされることになるのですが…

1つ屋根の下に暮らしながら、職業上の理由から本音を語り合うことができない生活。そんな状況で配偶者を持つなど、自分には無理、と思いましたね。
でも、実際、世の中には知り得た情報の守秘義務に縛られた人は多く存在するはずで、そのような配偶者を持つ夫婦も多いはず。ローラとエドワードのように家庭が破綻することはないのだろうかと、にわかに気になるのでした。
当たり障りのない、平凡な人生こそ得がたいものなのだと、改めて思う次第。

そんな私には、最後にローラが示した決断が信じられません。
彼女は良き妻のマスクをかぶり続ける静かな暮らしを捨て、自分のありのままで生きることが可能な道を探ろうとします。その道の先には、大きな困難が待ち構えていることは必至。母や親戚、そして友人を過去のものとして捨て去らねばならないのです。
偽りの生活を良しとしないローラの未来が少しでも明るいものでありますように。

この実在のスパイ夫婦に着想を得た完全なフィクションが著者の小説デビュー作。先が気になるストーリー展開、語りすぎることなく主人公の内面をうかがわせる描写も既に大家の雰囲気があり、この先が楽しみです。

 

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黒いチューリップ

フランス革命前夜、難を避けて逃げまどう貴族たちを襲う義賊がいた。その正体は「黒いチューリップ」こと貴族のギヨーム。だが、捕縛に躍起となる憲兵隊長に追い詰められて頬に傷を負った彼は、貴族としての生活を偽装するため、瓜二つの弟ジュリアンを呼び寄せることに。共和主義の弟は喜んでその代理を務めるものの、剣の腕前はさっぱり。さて、兄弟の運命やいかに。

アラン・ドロンの一人二役を堪能する活劇コメディでした。天真爛漫で平等な世の中を希望する素直な青年と、自己中心的でふてぶてしい盗賊を演じわけています。引き締まった肉体美もファンにはたまらないところでしょう。

封切りは1964年。この映画の明るさは、おおらかで、未来に希望を抱いていた当時の世相を反映しているのだろうと感じます。主役のギヨームに非業の運命を用意しておきながら、あっけらかんとハッピーエンドに持ち込むんだもんなあ。いつまでも死者を悼んでいても仕方ない、という悟りの境地さえ感じられます(うそ)。

私のお気に入りはギヨームの愛馬「ヴォルテール」号。とても賢く、茶目っ気のある馬なんです。笑うことだってできるんです。主人に忠誠を尽くすラストシーンはお見逃しなく!

 

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イル・ポスティーノ

あこがれの作家専任の郵便配達人(あるいは、料理人、ハウスキーパー、医師等々)という立場を手に入れたらどうするだろう?
自分の仕事に徹して無駄な口を利かないのが理想だけれど、きっと作品の感想を述べたり、質問したりで煩がられ、そのうち首になってしまうだろうな、などという妄想をかきたてられる映画でした。

ナポリ湾の小さな島で暮らすマリオ・ルオッポロ君は漁師の生業を嫌い、たまたま募集中だった郵便配達の仕事を引き受けることに。届け先は、共産思想故にチリを追われてこの島に仮住まいすることになった世界的詩人ネルーダの住まいただ1軒。

毎日どっさり届く郵便の差出人は女性ばかり。さては、詩人はもてると勘違いしたルオッポロ君。その秘訣を手に入れようとネルーダに近づくうち、やがて人の心を揺さぶる詩の美しさに魅了され、自ら言葉を紡ぎ始めるのでした。

偉大な詩人と一介の郵便配達人(ポスティーノ)のすてきな交流でした、世界を見る新しい目を獲得したルオッポロ君良かったね、で終わらせても良かったのだろうけれど、この映画はもう一ひねりありました。そう、やっぱり良いことばかりは続かない。

数年後に島を再訪したネルーダは、ルオッポロ君との再会がかなわず、途方に暮れてしまうのです。自分の手ほどきが彼の心を豊かにしたことは間違いありません。でも、それと引き替えに、あるいはそのせいで人生そのものは豊かになり得なかった。
出会いの不思議さ、人の世の残酷さをかみしめるようなネルーダの姿が心に残ります。

 

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冬の日誌

1947年生まれのポール・オースターが65歳を目前にした冬に自分の人生を振り返った履歴書のような日誌。
そこに記されているのは自ら「呼吸の現象学」と名付けた肉体の記憶。頬や額に負ったけが、交通事故、性欲、死を覚悟した病、肉親の死、その他、人が日常生活で体験するあらゆる出来事に関する記憶を呼び覚ますことで、一個の人間が生きた証しを示しています。

創作にまつわる苦悩や作品の源である世界観などは直接示されていません。オースターが呼び覚ましたのは、あくまで肉体が感じるさまざまな感覚とそれに伴う感情。それは、あらゆる人間が等しく所有するものであり、だから、オースターの人生を振り返りつつ、同時に自分の肉体・感情の歴史も振り返ってみることになるのでした。

私もずいぶん痛い思いをしたし、死がすぐ傍に忍び寄っていたことも一度や二度であはありませんでした。よくぞここまでもったものだ、これからも頼むよ、と己の肉体を労る読後でした。

と、ここまで書いていたら、ドイツ在住の友人から、なんとオースターの新刊「4321」が届きました(ありがとう!!)。なんという偶然! そして、なんという分厚さ! 最近のオースターには珍しいボリュームで800ページを超えています。ああ、読み始めるのが楽しみだ。

 

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